私の片思いは、届かない。
志帆
裕太ー、おっはよー
裕太
はよ
志帆
ねぇ、昨日の新曲聴いた?
裕太
良かったな、あれ
私は、見てるだけで。
届かない。
なんで好きになったんだろう。
それは、二年生の文化祭。
学級委員長
では、実行委員は
相田さんと島谷君で
お願いします
相田さんと島谷君で
お願いします
香織
(できるかな…)
裕太
相田
裕太
よろしくな
香織
うん
抽選で文化祭の実行委員が決められ、 私は運悪く当たってしまった。
人と話すのが苦手。
そのせいで、 一年の時は友達がいなかった。
二年になってもそれは同じ。
教室の隅っこでいつも 本を読んでいるような私でも、 裕太君は笑顔で話しかけてくれた。
裕太
じゃー、クラスの劇は
シンデレラな
シンデレラな
裕太
役はまた今度決める
ー放課後ー
裕太
案外すんなり決まったな
香織
そうだね
裕太
あ、そうだ
裕太
予算案の事なんだけど…
裕太
ここの計算だけお願いしてもいいか?
香織
もちろん
裕太君は、 私が苦手な事を押し付けなかった。
話し合いの司会は、 全部彼がやってくれて。
だけど、 ちゃんと私の事も頼ってくれた。
そんな裕太君が、 気付けば好きになっていた。
でもー
志帆
それでさ、ポチがさー
裕太
なんだそれ(笑)
"見てる"だけ。
文化祭が終わってからは、 一言も話していない。
それに、志帆ちゃんと裕太君は 幼なじみだから、仲がいい。
恋なんか、しなければ良かったのに。
香織
(どうしよう)
香織
(今日の授業ノート提出するの忘れてた)
香織
(先生、まだいるかな)
裕太
志帆
香織
(裕太君の声!?)
咄嗟に花壇に隠れてしまった。
そこで聞いたのはー
志帆
私、裕太の事が好き
志帆
もし良かったら、
付き合ってくれないかな?
付き合ってくれないかな?
裕太
いいよ
ドクッ、ドクッ、ドクッ。
心臓の音が響いてうるさい。
二人は笑顔で、 校舎を出て行った。
香織
(終わったんだ)
香織
(これで)
香織
(辛かった)
香織
(片思いが)
ーポタッー
香織
(あれ、なんでたろ)
香織
(終わったのに)
香織
(なんで、泣いてるんだろ)
こんなにも、好きだったんだ。
裕太君の事。
でも、後悔しても、もう遅い。
サヨナラ、私の片思い。
ノートが、 涙でぐしゃぐしゃになっていた。