新入生のみんなも緊張の糸が完全に切れて、だらけた空気が広がり始めている。
ストリクト先生
待たされてすぎてイライラし始めたストリクト先生によって、仕切り直された。
ホマレ
ホマレが一歩引いて、あらためてシシロウから名乗りをあげる。
シシロウ
ホマレ
ガイド妖精
ガイド妖精が光を放ったかと思うと、シシロウとホマレのそれぞれの目の前に、大きな氷の塊があらわれた。
一辺3メートルの氷の立方体。
ステージからかなり離れているけど、冷気がこっちまでただよってきた。
ガイド妖精
シシロウ
ガイド妖精
【アイスキューブ早溶かし】 ・一辺3メートルの氷の立方体を用意。 氷は魔法によって製氷された特別性で、通常の外気では溶けない。 ・氷は、ひとりにつき1個。 ・自分に割り当てられた氷を完全に溶かしきったらクリア。
ガイド妖精によりルールが説明された。
氷というのは大きくなると、自信の冷気で周りの空気や水分を冷やしてしまい、溶けにくくなる。
さらに、下手に触ると皮膚の表面が凍りついて、離れなくなってしまうこともある。
魔法で作った特別性なら、その特性もより強くなるだろう。
ユトリ
アルク
ナミスケ
メイカ
ショウリ
それぞれが自分の魔法での攻略法を考えながら、アミ戦を見守っている。
ぼくは自分の意志で魔法を使えないから、何か工夫が必要だけど思いつかない。
シシロウとホマレの2人は、どうやって氷を溶かすつもりだろう。
ステージの上で先に動いたのは、シシロウだった。
右手に魔法具《マギアツール》のサーベルを出して構えると、呪文を唱えた。
シシロウ
サーベルの刃が燃え盛る炎に包まれた。
燃えるサーベルを横薙ぎに払って、氷の塊を斬りつける。
ジュジューっと氷が溶けて蒸発する音がして、氷の表面に大きな横一文字の切り痕ができた。
ユウゴ
アルク
興奮するぼくのとなりで、アルクが氷を指差す。
氷に出来た切り痕に溶けた水が流れ込み、ふたたび凍り始めている。魔法で製氷されただけに、通常の氷よりも凍りやすい性質を持っているようだ。
ホマレ
ホマレがシシロウをあおる。
シシロウ
ホマレ
ホマレ
ホマレが左手を右手で撫でると、左手の薬指に銀色の指輪があらわれた。
ホマレ
ホマレが左手を握ると、薬指の指輪から炎が出て、左手全体を包み込んだ。
ホマレ
腰のひねりの効いた左ストレートパンチを氷の塊に向かって放った。
当たった瞬間にドォンと大きな爆発音がして、氷の表面をえぐり、浅いくぼみが出来上がった。
ホマレ
シシロウ
ホマレ
燃えるサーベルで氷を切り続けるシシロウと、 燃えるパンチで氷を殴り続けるホマレ。
ハイソな感じの会話とは裏腹に、ものすごく泥臭い脳筋バトルに突入していた。
2つの氷は少しずつ小さくなってきてはいるが、あくまで少しずつだ。
見ているこっちとしては、段々と退屈を感じるようになってきた。
それに、なんだか熱くなってきた。
アルク
アルクが指摘したとおり、講堂の中の湿度が上がってきていた。
シャツが肌に張り付いて気持ち悪い。
シャツをはだけて中に空気を送ったりしてみるけど、焼け石に水で、あまり効果は感じられない。
ホマレ
シシロウ
ステージ上の2人の会話が聞こえた。
多分、ぼくのことを話している。
ホマレ
ステージ上で、ため息をつくホマレと目があった。
多分ではなく、ぼくのことだ。
ホマレ
ホマレが視線を講堂の後ろのステンドグラスに向けたので、ぼくもつられてそっちを振り返った。
ぼく達が飛び込んだステンドグラスは、すでにガイド妖精の魔法で修復されていた。
ホマレが飛び上がって、自分の氷の上に乗った。
横からでは効果が弱いから、上から攻める作戦に切り替えたのか。
氷の上からさらに飛び上がる。
ホマレ
天井に向けて放った燃えるパンチが、天井に大きな穴をあけた。
瓦礫と一緒に、ホマレがステージに落ちてきた。
シシロウ
ホマレ
天井にあけた穴から太陽光が差し込んできて、まっすぐにホマレの氷に降りそそぐ。
ホマレ
シシロウ
ホマレ
ホマレ
氷は火の魔法にさらされていた時よりも、速い速度で一気に溶け出していた。
太陽光の熱なんて、火よりもずっと低いはずなのに。
これも魔法で作られた氷だからか。
ホマレ
ホマレ
シシロウ
ホマレ
ホマレが余裕たっぷりにこたえる。
シシロウの魔法でも天井を壊すことはできるだろうけど。
シシロウ
シシロウがサーベルを構え直して走り出した。
すでにホマレの氷のほうがひと回りは小さくなっているから、今から太陽光をあてても逆転は難しいはず。
シシロウ
シシロウが燃えるサーベルを大きく振るった。
ホマレの氷に向かって。
太陽光で溶かされていた氷の塊は、きれいに真っ二つに斬られた。
ホマレ
ホマレ
シシロウ
斬られて真っ平らになった氷の表面が、まぶしいくらいの光を放つ。
その光は、となりに置いてあるシシロウの氷に降りそそぐ。
シシロウの氷が、より激しく溶け始めた。
ホマレ
シシロウ
ホマレの氷は、燃えるパンチで殴り続けていたせいで、表面がボコボコになっていた。
それをシシロウはサーベルで斬ることで、表面を真っ平らにした。
その結果、天井の穴から降り注ぐ太陽光は、一度ホマレの氷に集められたあと、平らな面から放出されてシシロウの氷に照射され続けるようになった。
太陽光はレンズで集めると、より強く、より熱くなる。
直接太陽光を浴びるホマレの氷よりも、レンズで集めた光を浴びるシシロウの氷のほうが、より高い熱を受けることになる。
最終的に、シシロウの氷のほうが先に、全部溶けてなくなった。
ガイド妖精
ガイド妖精が勝ったシシロウの名を呼び、最初のアミ戦が終わった。
ホマレ
シシロウ
ガイド妖精
ガイド妖精に言われて、2人はごちゃごちゃと言い合いながら、ステージを降りていった。
司会
入れ替わるように、司会者が舞台袖からステージに戻ってきた。
司会
司会
司会
司会
あの2人の性格はともかく、戦い自体のレベルは高かった。
ぼくが同じ競技をすることになった場合、何も出来ずに負けるのを待つだけだろう。
司会
司会者が天井に視線を向ける。
ホマレがあけた穴がポッカリと空いている。
そこにガイド妖精が飛んでいき、光を放ったかと思うと、穴がふさがり元通りの天井に戻っていた。
司会
あっという間に直せるところを見たあとだと、説得力がないな。
司会
司会
少なくとも2年間は、アミキティア魔法学校の寄宿舎で生活することになる。
寄宿舎の部屋割りは、その2年間の命運を分けるものになるはずだ。
その予感は間違っていなかった。
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