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アミキティア魔法学校の寄宿舎は男女で分かれ、ひと部屋4人ずつで割り当てられる。

新入生全員に部屋割りのプリントが配られたあとで、ストリクト先生に呼び止められた。

ストリクト先生

神酒杜《みきもり》獅子郎《ししろう》。

ストリクト先生

佐伯《さえき》佑伍《ゆうご》、
瀬古《せこ》浪助《なみすけ》、
品森《しなもり》晶刕《しょうり》の3人は、君と同室にします

シシロウ

ぼくが、あの3人の面倒を見ろと?

ストリクト先生

神酒杜《みきもり》様のご子息なら、問題児3人の監視くらいはお手の物でしょう

ストリクト先生が反論するシシロウを制する。

ユウゴ

え、でも……

プリントに書かれている部屋割り表には、同室に別の人の名前が書かれていたはず。

と思ってプリントを見直したら、ぼくの名前が動いて、別の枠の中に収まった。

シシロウ、ナミスケ、ショウリの名前も、同じ枠に並んでいる。

ストリクト先生

そこが君達4人の部屋です。
騒がしくしなように

地図と部屋番号を見比べると、教職員の宿直部屋のすぐとなりだ。

ナミスケ

何だよ、これ。
こいつらと同室の上に、先公のとなりかよ

ナミスケが遠慮なしに不満の声を上げる。

ショウリ

でも、玄関や食堂なんかの共同スペースとも近いから、生活するには便利そうだよ

一方のショウリは、この部屋割りにも、それなりに納得しているみたいだ。

ぼくとしては、シシロウやナミスケと同じ部屋なのは不安が残るけど、ショウリは頼れそうだから少し心強い。

ストリクト先生

自分の部屋がわかったなら、すぐに移動してください。
今日中に寄宿舎の各施設の場所を覚えて、明日からは授業も始まりますからね

そうストリクト先生に言われて、ぼく達は4人で講堂をあとにした。

講堂から出ると、あらためてアミキティア魔法学校の建物や景色に圧倒された。

中世ヨーロッパ風の石造りの建物が並び、空の色は少し紫がかっている。

異世界ファンタジーのアニメやゲームのような街並みが、そのまま目の前に広がっていた。

実際のところ、自分達は今どこにいるんだろう。

ショウリ

まるでアニメの異世界みたいだね

ショウリがぼくが思っていたままのことを口にした。

ナミスケ

ああ、おれ達って今どこにいるんだ?

ナミスケも同じ疑問を口にする。

シシロウ

シシロウ

アミキティア魔法学校だろう。
そんな事もわからずに、ここに来たのか?

シシロウがあきれたようにこたえる。

ナミスケ

そうじゃなくって、アミキティア魔法学校がどこにあるのかなって思ったんだけど。

ナミスケ

日本じゃないよな?

シシロウ

そういうことか。

シシロウ

正確な位置は秘匿されているから、ぼくもはっきりとは知らないが、太平洋上に作った人工島だと聞いたことがある

ナミスケ

人工島……埋立地ってことかい?

シシロウ

浮島といったほうが近いか。
海の上に浮いているんだ

ナミスケ

でかい船ってことか?
豪華客船とか空母みたいな

シシロウ

そのイメージでおおむねあっているだろう。
都市ひとつ分の広さがあるから、規模は桁違いだけどね

ユウゴ

シシロウは結構知っているんだね。

ユウゴ

同じ部屋になれて、逆に助かったかも

シシロウの家、神酒杜《みきもり》家は、魔法使いの中でも名門だとアルクも言っていた。

アルク達とは部屋割りのドサクサで、ろくにあいさつも出来ずに離れてしまった。

同じ学校に通うんだし、すぐに会えると思うけど。

ナミスケ

お前、シシロウって言ったか?
結構な有名人みたいじゃないか。

ナミスケ

入学試験でも目立っていたし、入学式でも代表でスピーチしていたし、さっきも先公に一目置かれているみたいだし

ナミスケがシシロウに突っかかる。

この2人、性格的に水と油のような気がする。

属性は、水《アクア》と火《イグニス》だけど。

ショウリ

君達、入学試験にいたっけ?

ショウリが首を傾げる。

言われてみれば、ショウリやメイカやホマレには見覚えはなかった。

会えば絶対に忘れないインパクトのある人達なのに。

シシロウ

入学試験は無数の場所(夢)で行われる。

シシロウ

ぼく達とショウリくんでは、会場が違っていたんだろう

ナミスケ

お前だけ、いろいろ知りすぎじゃないか?

ユウゴ

シシロウの家は魔法使いの有名な家系、なんだよね?

ぼくもアルクから聞いただけで、くわしく知っているわけじゃないけど。

ナミスケ

はっ、有名人の子供だから、先公もヘコヘコしていたってわけか

そんなに腰を低くしていたようにも見えなかったけど。

シシロウ

ただ歴史が古いだけさ。
その分、面倒なこともある。

シシロウ

この部屋割りとかね

ナミスケ

それだって、お前に点数を稼がせるためだろ?

ナミスケ

問題児……この言われ方に納得してないけど……と同室で面倒を見ていれば、それだけで評価をあげられる

シシロウ

逆だよ。
何かトラブルが起こった時に、ぼくの責任にするための部屋割りさ。

シシロウ

宿直部屋のとなりなんて、わかりやすく逃げ場のない部屋に押し込んでくれたよ

ナミスケ

お前の責任に? なんでさ

シシロウ

ぼくは次男だからね。
何かで失脚すれば、家の権利は全部、兄……長男に継がせることができる。
歴史が古い家っていうのは、それだけしがらみが多いんだ

ショウリ

君も生まれがいいなりに苦労を抱えているんだね

シシロウ

そういうことさ

ショウリの理解に、シシロウが微笑んで返した。

まだナミスケは納得行かないような顔をしていたけど、寄宿舎に到着したので、話はここでおしまいになった。

寄宿舎に到着して最初に思ったのは『意外と普通』だった。

ここに来るまでに見た街並みや寄宿舎の外観は中世ヨーロッパっぽかったのに、中に入ると現代風の建物だった。

天井にはLEDのライトがあるし、水道も通っているからトイレも水洗。

部屋に行くまでの間に、ジュースの自動販売機までおいてあった。

割り当てられた部屋に入って、すぐに新たな問題が発生した。

ユウゴ

二段ベッドが2つか

1つの部屋を4人で使うなら、これが1番スペースをとらない。

ベッドの枕元には、小さいながら引き出し付きの戸棚があるので、実質的に個人のパーソナルスペースも兼ねている。

どこにする?

いや、どこがいい?

上だと圧迫感がなく空間を広く使えるけど、下に音や振動などで迷惑をかけるかもしれない。 はしごの上り下りも、体調がすぐれない日はつらいかもしれない。

下は天井(上段ベッド)までが低いから圧迫感があるし、上の音が気になる。 反面、相手に音などの迷惑をかける心配は無い。

どちらも一長一短。

相方が誰になるかも大きなポイントだ。

シシロウは結構神経質そうだし、 ナミスケだと何かいやがらせをされるかもしれない。

理想はショウリと同じベッドだけど、 それを言って険悪な雰囲気になるのも避けたい。

ナミスケ

めんどくせーな。
ジャンケンかなんかで決めるか?

ショウリ

そうだね。
勝った順に、自分が欲しい場所を選んでいけばいいか

ナミスケの提案に、ショウリも乗った。

悪くないとは思うけど、もし自分が1番で勝っちゃったら、自分が選んだあとで相方がシシロウやナミスケになる可能性も大いにある。

始める前から、自分が勝ったらどうしようなんて考えるのは、杞憂にもほどがあるんだけど。

シシロウ

ジャンケンか。
まあ、いいだろう

シシロウも賛成。

これはもうジャンケンをする流れだ。

ガイド妖精

トラブル確認。
トラブル確認

4人でジャンケンを始めようとした時に、突然ガイド妖精があらわれた。

トラブルと呼べるほどの大事は、起きていないと思うけど。

ガイド妖精

君達は優劣を決めるために戦いを始めようとしたな?

ユウゴ

ただのジャンケンだけど?

ガイド妖精

アミキティア魔法学校では、いかなる場合・場面においても、生徒のみでの戦いを禁じている。

ガイド妖精

戦うというのであれば、アミキティア・サバイバルを行う

ぼく達4人のジャンケンが、戦いのトラブルと判定されたらしい。

トラブル判定ガバガバすぎない?

ナミスケ

まあ、いいんじゃないか?
ただのジャンケンよりかは面白そうだ

シシロウ

ぼくが先のエキシビションで勝っているのを見ていただろう?

ナミスケ、シシロウは乗り気だ。

ショウリ

ぼくもいいよ。
どんな競技をするのか興味もあるし

ショウリも同意する。

ユウゴ

アミ戦をするっていうことは、ポイント変動もあるってことだよね?

ガイド妖精

そうだ

たしか3回負けたら退学になるんだっけ。

ナミスケ

怖いんなら、ユウゴは不参加でいいぜ。
その代わり、選ぶのは4番目だ

ナミスケはこう言うが、自分でベッドを選べないと、最悪の相手が相方になるかもしれない。

ユウゴ

ぼ、ぼくもやるよ

こうして、アミキティア魔法学校での生活が始まる前に、初めてのアミ戦をすることになった。

アミキティア魔法学校の闇

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