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文月

疲れた…。

考えが甘かった…。 部活を辞めて体力が落ちたとはいえまだまだ自信があったが疲れた。

小一時間の畑仕事から帰って風呂で汗を流し、全身を包む疲労感に打ち勝てずに居間で横になる。

文月

腰は大丈夫そうだな…。

腰に負担のかかる作業もあったが調子がいいみたいであまり痛みを感じないのが幸いだった。

文月

弥生ちゃんこの後部活だって言ってたけど体力すごいな…。

昔から皐月さんの手伝いをしていたのか弥生はテキパキと作業をこなし、それでも元気が有り余っているようだった。

如月

ふみちゃん、ばあちゃんちょっと夕方まで出掛けてくるけどお昼どうするね?

文月

今ちょっと動きたくないから、後で昨日の晩御飯の残り食べておくよ。

如月

そうね、じゃあ留守番よろしくね。

おばあちゃんが出掛けて行くのを玄関のガラス戸の音で確認した俺はまだ暫く横になっている事にした。

窓の外に目をやれば太陽の光にこれでもかというぐらい景色が明るく光っているように見える。

しかし、家の中はそんな景色をよそに意外と暑くなく、ゴオォォォと少しうるさい音を立てながら首を振る扇風機の風でむしろ涼しいぐらいだった。

その何とも言えない涼しさと畳の感触の気持ちよさに俺は静かに目を閉じて眠りに落ちてしまう…。

弥生

…き…さ…。

なんだろう…。

弥生

ふみ…さ…。

体をゆさゆさと揺らされている…。 それに誰が俺を呼んでいる…。

弥生

文月さん、起きてください。

文月

んあ?

文月

…。
おわ!?

目を開けた俺は自分の体を揺らし呼びかけていた人物を見て少し間の抜けた声を出して驚いた。

弥生

おはようございます!

文月

え?あぁ…、おはよう。

目の前にいる弥生は学校から帰ってきたところなのか制服姿のまま俺を見下ろしていた。

弥生

もう夕方ですよ。

文月

え?うそ…。
大爆睡してたのか俺…。

弥生

もしかして帰ってからずっと寝ていたんですか?

文月

そうみたい…。

弥生

大丈夫ですか?
すごく汗もかいているみたいですけど…。

起き抜けには気付いてなかったが寝ている間に西日に晒されかなり暑かったのか着ている服が汗でびっしょりとしている。

文月

うわ…。
暑かったのなら起きろよ俺…。

弥生

よっぽど疲れていたんですね。
はい!よかったらこれ飲んでください!

そう言って弥生は自分のスクールバックの中からペットボトルに入ったスポーツドリンクを差し出してきた。

文月

ありがとう…。
もらっていいの?

受け取る瞬間「これはまさか間接キスになるのでは!?」などと頭によぎったが、動揺せずボトルの蓋に手を触れた瞬間それは無いと確信する…。

弥生

はい、学校で顧問の先生にもらった物なので?

文月

そっか?

もらったペットボトルの蓋を回す、パキッと音立てて開いた蓋を片手に持ったままペットボトルを口に運ぶ。

口に入ったスポーツドリンクは時間が冷蔵庫から出して経っていたせいか少し冷えている程度だったが、起きてすぐに飲むにはちょうど良かった。

文月

…ふぅ、うまい。

弥生

それは良かった!

文月

でも何で弥生ちゃんがここに?

弥生

如月おばあちゃんからウチに電話があって家に電話したけど誰も出ないからちょっと様子を見てきて欲しいと頼まれまして、ちょうど帰ってきた私に見て来いってお母さんに言われて。

文月

あー、寝てて気づかなかったか…。

文月

ありがとう疲れてるのにわざわざ。

弥生

いえいえ!
私もお願い事があったのでちょうど良かったので!

文月

お願い事?

弥生

昨日お願いした、練習付き合ってください!

文月

あー…。

そう言えば昨日そんな約束をしてしまってたな…。

弥生

ダメですか?

今の今まで寝てた人間に断る理由なんてあるわけが無い…。

文月

分かった、いいよ。

弥生

それじゃ家に帰って着替えますので少ししたらウチに来てくださいね!

俺の返事にニッコリとした笑顔を見せて弥生は先に家に向かって帰って行った。

文月

…。

朝の畑仕事の時も大丈夫だったんだろうから全力でやらなければ大丈夫だろう…。 そう思ってはいたが若干不安に感じながら腰を撫でて俺も弥生の家に向かう事にした。

空は茜色に染まり日中の暑さよりマシだがまだまだ外は暑い。

弥生の家に着いた俺は出迎えてくれた皐月さんと弥生のお母さんに挨拶をして庭のバスケットゴールの前で弥生を待つ。

文月

触るのも久しぶりだな…。

ゴールの近くに置かれていたボールを持ち上げその感触を確かめる。

怪我をしてからも自分の部屋に置いてあったボールを触ってはその感触を味わっていたが、3年の時に見に行ったあの試合以降ボールに触れる事は無くなっていた…。

ダム…ダム…鞠突きの様に地面にボールを当て跳ね具合を確かめる。

文月

…。

ずっと忘れてしまいたかった感触に心が喜んでいる。 ダム、ダム、ダム、ただボールを地面に当てているだけだったはずが気が付けばボールと地面が接する感覚が狭く早くなっていた。

そして、ボールを突いたまま軽く小走りして助走をつけて左半身をゴール側右半身を反対側にして軽く跳び上がる。 そして最大限上に伸ばした右腕の先に持ったボールを右手のスナップだけでゴールに向かって放り投げる。

これはフックシュートと呼ばれる物で俺が現役の時に1番得意としていた技である。

投げ放たれたボールは大きく弧を描いてバックボードに一度当たってリングの中に入る。

弥生

ナイシュ!

昨日俺がかけたセリフと同じセリフを言いパチパチと拍手しながら着替の済んだ弥生がやってきた。

文月

ははは、久しぶりだから上手くいくか不安だったよ。

弥生

いやいや、すごく綺麗なフォームでしたよ!
それに身長もあってかすごく高いところからのシュートで、スカイフックって言うんでしたっけ?

文月

いやいや、ただのフックシュートだよ。
スカイフックなんてもっと高く飛ばないとダメだしもっと身長もいるかな。

弥生

あー、そうなんですか。
でも、今のも私じゃ止めれる気しませんよ。

文月

まぁ身長差がね。

こうして共通の趣味の話を人とするのはいつぶりだろうか…。 会話の内容も趣味の話しで楽しく弥生の雰囲気もあってか自然と笑顔になっていた。

弥生

じゃあ、よろしくお願いします!

文月

うん、よろしく。

そして俺達は簡単なパス練習をしてから1on1をする事にした。

弥生

はぁはぁ…!

俺のドリブルをするボールを目掛けて弥生が手を伸ばしてくる。 しかし、俺はそれをボール捌きだけで回避して弥生の体を避けてゴールに向かってレイアップを放つ。

文月

庶民シュート!

弥生

あはは、なんですかそれ!

文月

え?スラムダンク知らない…?

弥生

名前だけは聞いた事ありますが読んだ事は…。

文月

マジか…。
その漫画の主人公がレイアップの事庶民シュートって言うんだよ。

弥生

へー、そうなんですね。

文月

面白いから一回読んでみたら?
あ、なんならウチに全巻あるから帰ったら送ってあげるよ!

弥生

いやいや、そんな悪いですよ。

文月

ふふふ、いいものは布教しないと…。

突然腰に重い痛みが走る…。

文月

ちょっと休憩しようか…。

弥生

はい、大丈夫ですか?

文月

あー、うん大丈夫…。

久しぶりのバスケとつい笑ってしまうような楽しい会話に水を差す様に痛みが襲ってきた。

弥生

あ、ちょっと待っててくださいね!

文月

え?あ、うん。

パタパタと家の中に走っていった弥生を見送り縁側に腰を掛ける。

文月

いたた…。

少し良くなったからと言って調子に乗りすぎた…。 腰の具合は良くなったとは言え完治はしないと言われていたのを思い出す…。

文月

やっぱ、無理なんだな…。

腰をさすりながら空を見上げる、練習を始めた頃より暗くなってきたがまだまだ明るい。

弥生

お待たせしました!
はい、どっちがいいですか?

戻ってきた弥生の手にはソーダ味のアイスとコーラ味のアイスが握られていた。

文月

あ、ありがとう。
弥生ちゃんが先に選んでいいよ。

弥生

そうですか、ではこっちを!

そう言って弥生はコーラ味のアイスを俺に手渡してきた。

渡されたアイスをかじると運動で火照った体を急激に冷やす様に体に染み込んでいってとても美味しかった。

弥生

うーん、美味しい!

隣に座って同じ様にアイスを食べる弥生を見ると夕焼けに照らされ、その無邪気そうな笑顔がとても綺麗に見え少しドキッとしてしまった。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

10

ユーザー

青春ストーリーバンザイ!←最近それしか言ってないね? ドキッと下だってぇ…?(^ω^ ≡ ^ω^)おっおっおっ←こら マジで最高…()

ユーザー

スラムダンク面白いよね!! もう話ほとんど忘れたけど( ・∇・)

ユーザー

そういえば腰やったんだっけ...←忘れんな 今日はどす恋さん出なかったな〜w←その呼び方やめろ

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