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もらったアイスを食べ切った後も暫く縁側から立ち上がる事なく話は続いた。

文月

へー、弥生ちゃん2年だったんだ。

弥生

そうなんですよ!

文月

あ、別に敬語使わなくて大丈夫だよ。

文月

歳も2つぐらいしか変わらないんだから。

弥生

んー、そうですか…。
何とか止めるようにします。

文月

やめれてないけどね。

弥生

あはは、そうです…
そうだね!

会話の内容は本当にどうでもいい事ばかりだった。 お互いの年齢、バスケ以外の趣味、好きな食べ物の話等々大した話はしていないのに何だかすごく楽しく心地よく感じた。

弥生

あの、文月さんもうバスケはやらないの?

文月

…。

文月

できる事ならやりたいよ。
けど、さっきの1on1でよく分かった。

文月

もう俺には無理なんだなって。

弥生

ごめんなさい…。

文月

いやいや、弥生ちゃんが謝る事じゃないよ。

文月

でもやっぱすっごく楽しかった!

ほんの数分だけだったが弥生との1on1は紛れもなく楽しかった。

弥生

ほんとにバスケお好きなんですね。

文月

うん、大好きだね!

文月

だからさ、弥生ちゃんさえよかったら。
練習相手続けさせてもらえないかな?

弥生

はい!もちろんです!

文月

ははは、即答だね。

弥生

私ももっと上手くなりたいから、上手い人に教えてもらえるのはすごく嬉しいです!

文月

うん、ありがとう。

弥生

こちらこそ!

お互い少し照れ臭そうにこれからお互いの都合さえ合えば毎日練習をすることを約束した。

文月

さて、今日はそろそろ帰ろうかな。

弥生

あ、ごめんなさい!

文月

え?

弥生

伝えるのすっかり忘れてて…。
如月おばあちゃん今日帰るの遅くなるみたいで晩御飯うちでお願いされていたの。

文月

あ、そうなの?
でも、なんか悪いよ。

弥生

大丈夫!
お母さんが今日カレー作ってるので大丈夫って言ってるから!

文月

そっか、それじゃあお言葉に甘えて。

皐月

おーい、お前ら飯できたぞ。
俺は如月おばあちゃん迎えに行ってくるから先に食ってろ。

文月

噂をすればだね。

弥生

あはは、そうですね。

その後、弥生の家で夏野菜をふんだんに使ったカレーをご馳走になり皐月さんと一緒に帰ってきたおばあちゃんと家に戻った。

それからの日々は充実していた。

朝から弥生と皐月さんと畑に行って作業して家に帰り弥生が学校から帰ってくるまで勉強、弥生が帰って来たらバスケの練習をして晩御飯を食べて寝る。 寝るまでも間もお互いの連絡先を交換していたのでメッセージのやり取りや電話等を繰り返していた。

時折、弥生が早く帰ってきた時は弥生の案内で村の中を一緒に歩いて回ったりしていた。

弥生は話好きで学校での事や友達の事、家族の話なんかをいっぱい話してくれ2人でいる時の会話が尽きることはなく心から楽しい時間だと思えた。

弥生は学校まで片道1時間弱電車で通っていて最寄りの友達も二駅先で遊び相手が少なく、弥生も俺と一緒にいるのが楽しいと言ってくれていた。

8月も中盤に差し掛かりお盆直前のある日、いつもの様に弥生の家で練習している俺達に皐月さんが声をかけてきた。

皐月

おい、文月ちょっといいか?

文月

はい、何でしょうか?

皐月

お前明後日何か予定あるか?

文月

いや、特には…。
って、俺に予定がある様に思えますか…?

皐月

ははは、そりゃそうだな。

皐月

まぁ無理にとは言わんがちょっとアルバイト頼まれてくれんか?

文月

アルバイト?

皐月

明後日二駅隣の町で夏祭りがあるのは知ってるか?

文月

あー、はい。
村の掲示板の貼り紙や弥生ちゃんから聞いていました。

皐月

そこでうちの店も屋台をやることにしててな。
盆休みに被ってて人手が少なくてちょっと手伝って欲しいんだ。

文月

へー、俺でよければ全然構いませんよ。

皐月

すまんな。

文月

そういえば皐月さんってなんのお店をやられているんですか?

皐月

あ?弥生から聞いてないのか?

弥生

あれ?言ってなかった?

文月

うん、聞いたことなかったね。

弥生

お父さん美容室のオーナー兼美容師やってるの。

文月

ふーん、美容し…。

弥生の家はある程度裕福そうであると思っていたが皐月さんがどんな仕事をしているかは聞いたことがなく、初めて知った皐月さんの職業に俺は動揺が隠せないでいた…。

なぜなら…。 皐月さんの見た目からして美容師なんて職業は想像もつかなかったから…。

文月

え?

皐月

何だ?何か言いたげだな?

弥生

スキンヘッドだもんねお父さん。
美容師さんなんて思わないよね普通。

大きな体と大きな手、日に焼けて健康的な肌と嫌でも目立つスキンヘッド…。 そんな外見の人に美容師要素を見つけるのは至難の業だろう…。

文月

あ、いや…。

皐月

まぁいい、それじゃ明後日頼んだぞ。

文月

あ、はい。

ある意味でこの夏1番の衝撃だった…。

そして夏祭り当日。

俺はきっとこの祭りに来ている人達の中で1番汗をかいているに違いないと思っていた。 なぜなら、目の前には熱せられた大きな鉄板に背後からこれでもかと照らされる投光器の熱。

文月

暑い…。

あの、まだかかりますか?

文月

あ、すいません!
もうすぐ焼き上がりますので!

皐月さんの店の屋台とはお好み焼きとたこ焼き両方を取り扱うお店だった。 たこ焼きに関しては皐月さんのお店の人が担当しお好み焼きは俺と皐月さんで回していたが、皐月さんが仕事関係で席を外しており接客と調理の両方を今任されている。

文月

お待たせしました!
2つで1000円です!

昼前からずっとお好み焼きを焼いているせいかかなり慣れた手つきでひっくり返したりできる様になっているが、夕飯時と打ち上げ花火前と相まってお客が耐えない…。

ある程度ストックを焼いてはいたがそれもすでに出し尽くしてしまっており俺は絶えず焼き続けないといけない状態になっていた。

文月

さ、皐月さん…。
早く帰って来てくれ…。

そんな時次のお客が注文を入れてきた。

弥生

一つください!

文月

はい!少々お待ちくださいね!
って、あれ?

注文の声に鉄板に向けていた視線を上げるとそこには浴衣姿の弥生がいた。 後ろには友達だろうか同年代ぐらいの女の子が2人ほどいた。

文月

来てくれたんだ。

弥生

うん、大盛況だね。

文月

本当にね、体が後一つか二つ欲しいぐらいだよ…。

弥生

お父さんは?

文月

今仕事のことで席を外してるよ。

浴衣姿の弥生はいつも見ている姿と違いどこか大人っぽくつい見惚れてしまうほどだった。

弥生

ちょ、文月さん!
それ焼けすぎじゃ!

文月

え?おわ!?

弥生の姿に見惚れ少し話をしている間に鉄板の上のお好み焼きが少し焦げてしまった。

弥生

あはは、私それでいいよ!

文月

ごめんね…。
お代はいらないから持っていって…。

弥生

うん!ありがと!
またね!

後ろがつかえていたこともあって弥生は受け取るとすぐにその場を離れでしまった、少し寂しい気もしたがすぐに次の客の注文があったためそんな事を考えてる暇などなくなってしまう。

そして、まだまだ途切れそうにない注文をこなしている時、轟音と共に空に大きな花が咲いた。

花火も終わり祭り自体が終わり後片付けを始めようとしている頃にようやく皐月さんが帰ってきた。

皐月

すまん、色々と重なってしまって今になってしまった…。

文月

お帰りなさい…。
何とか無事に終われました…。

皐月

お、おう…。
ほんとにすまんかった…。

皐月

後はやっておくから、疲れただろうし帰っていいぞ。

文月

助かります…。
あ、バイト代弾んでくださいね…。

皐月

おう、任せとけ。

そうして、後を皐月さんに任せて俺はヘトヘトの状態で家路に着こうと駅に向かって歩き出した。

弥生

あ!文月さん!

駅までもう少しの場所にある公園で俺の背後から呼びかける声が聞こえる。

文月

あ、弥生ちゃん。

弥生

お疲れ様!
お父さんに聞いたらさっき帰ったところだって聞いて。

よく見ると少し小走りで探しに来てくれのか弥生は少し息を切らせている。

文月

あ、探しに来てくれたの?
友達は?

弥生

2人もとこの辺に住んでるので先に帰って行ったの。

文月

あー、そうなんだ。

弥生

はい!これ!

そう言って弥生が差し出したのはナイロン袋に入ったイカ焼きとラムネだった。

文月

あ、いいの?

弥生

うん!文月さんずっとお店だったからお祭り気分味わってないかなって!

文月

ありがとう!
めっちゃ嬉しいよ。

そして、祭りが終わった後まだ騒がしい公園のベンチに座って弥生が持って来てくれた差し入れを食べることにした。

ポン!という音とともにビー玉が落ち乾いた喉にラムネの炭酸が痛いぐらいに染み渡る。

文月

あー、生き返る!

弥生

それはよかった!

隣でニコニコと微笑む弥生の顔を見ると少し照れ臭く感じ目線を逸らしてしまう。 周りはまだまだ騒がしいが2人きりのこの時間がとても幸せに感じた。

そして、俺はこの時に気付いてしまった。 俺の中に弥生に対する特別な感情が芽生えていたことに…。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

16

ユーザー

the 青・春だね✨ そして皐月さんが美容師だったとは…!((そこ?

ユーザー

ラムネってThe夏!!って感じがするよね……! 投稿頻度高いですけど、無理はしないで下さいね?!( ˘͈ ᵕ ˘͈ )

ユーザー

どす恋さん来た!←皐月さんな 結末が楽しみ...←そこを楽しみにするんかい バイト代弾んでって...ちゃっかりしてるな文月さんよ...()

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