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曖昧独白パルラーレ

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曖昧独白パルラーレ

1 - #0 放課後の侵入者

♥

31

2025年01月05日

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それはまるで

静かな水面に 広がる波紋みたいに

ねえ

忘れられない傷跡って、ある?

うーん、傷っていうか

罪、みたいな?

もし、もしだよ

君が過去に犯した罪が

ひとつだけ 許されるとしたら

君は

何を選ぶの?

#0 放課後の侵入者

放課後、図書室

入口から一番遠いテーブルの 窓際の席

そこがわたしのお気に入りだった

(…サッカー部、頑張ってる)

窓から見える校庭

ユニフォーム姿の 生徒たちをぼんやり眺めていた

そういえば

もうすぐ大会って 誰かが言ってたっけ

頑張れ

…なんて、思っても 伝えられないなら意味ないか

そんなことを1人で考えていた

 

…楽しそーな顔

 

サッカー部?

 

誰か探してるの?

……いつからそこに?

 

んー?べつに

 

今来たとこだよ

無表情のまま、淡々と返す 感情のつかめない男の子

当たり前のように 私の正面に着席。

…なんで座るんですか

席なら他にもまだ、

 

えー

 

ここ、君の席なの?

 

図書室は共用スペースでしょ

 

本くらい好きなとこで読ませてよ

…………

そう言いながら 雑誌を広げる彼は確か、

………篠崎、くん

その声に反応して 彼はぱっと顔を上げた

 

なんだ、覚えてるの?

 

僕の名前

はい

ていうか、

同じクラスですよね

もう10月ですよ、クラスメイトの名前くらい覚えてます

 

 

………へえ

 

てっきりクラスには興味ないんだと思ってたよ、山野サン

彼は1度上げた目線を再び 手元の雑誌に落としながら言った。

わたしって

そんなふうに見えますか?

 

だって山野サン、

 

あんまり行事とか参加しないし

 

人と喋ってるの、ほとんど見たことないし

 

放課後も気付いたら消えてんだもん

 

だからびっくりしたよ

 

こんなとこにいたんだね

あ、つけてきたわけじゃないからね。たまたまだよ、たまたま。

と、彼はまたこちらを向いて 付け足した。

(よく喋る人だな…)

思ったけれど、 口に出すのはやめた

後が面倒くさそうだ。

 

で、毎日こんな図書室の奥に来てまで校庭見てんのって

 

やっぱ、サッカー部に好きなやつがいるとか?

そう言いながらも 目線はまた雑誌に向いている。

私に興味があるのかないのか、よく分からない。

……べつに

そういうのじゃ、ないですけど

 

ふーん…

 

 

ねえ、あのさ

 

明日も来ていい?

 

なんか僕も気に入っちゃった、ここ

そう言ってへらっと笑う彼

完全にペースを呑まれているこの状況になんとなく腹が立ったので

いいんじゃないですか?

ここは私の場所じゃないって

篠宮くんが言ったんですよ

私も負けじと言い返してみた

 

はは、そうだった

 

じゃ、またね。山野サン

そう言いながら彼は席を立って

雑誌を残したまま 立ち去ってしまった。

(なんだったんだ…)

(ていうかコレ、
私が片付けるの…?)

テーブルに置き去りにされたそれを無視する訳にもいかず

結局、私は過去に1度しか入ったことのない雑誌コーナーに立ち寄ってから帰る羽目になった

これが

私と彼の、初めての会話だった

曖昧独白パルラーレ

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コメント

1

ユーザー

はじめまして。またいつか.といいます。 これは山野サンと篠宮くんが、放課後の図書室で取り留めのない会話を繰り広げる物語です。 しかし実は ふたりはとある秘密を隠しています。その秘密を知ってから読むと この1話目もまた違う見方で楽しめるようになっています。 あなたはふたりの秘密に気がつけるでしょうか。もしよければ、この物語の、彼らの行く末を見守っていただけたらうれしいです。

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