それはまるで
静かな水面に 広がる波紋みたいに
ねえ
忘れられない傷跡って、ある?
うーん、傷っていうか
罪、みたいな?
もし、もしだよ
君が過去に犯した罪が
ひとつだけ 許されるとしたら
君は
何を選ぶの?
#0 放課後の侵入者
放課後、図書室
入口から一番遠いテーブルの 窓際の席
そこがわたしのお気に入りだった
私
窓から見える校庭
ユニフォーム姿の 生徒たちをぼんやり眺めていた
そういえば
もうすぐ大会って 誰かが言ってたっけ
頑張れ
…なんて、思っても 伝えられないなら意味ないか
そんなことを1人で考えていた
私
私
無表情のまま、淡々と返す 感情のつかめない男の子
当たり前のように 私の正面に着席。
私
私
私
そう言いながら 雑誌を広げる彼は確か、
私
その声に反応して 彼はぱっと顔を上げた
私
私
私
私
彼は1度上げた目線を再び 手元の雑誌に落としながら言った。
私
私
私
あ、つけてきたわけじゃないからね。たまたまだよ、たまたま。
と、彼はまたこちらを向いて 付け足した。
私
思ったけれど、 口に出すのはやめた
後が面倒くさそうだ。
そう言いながらも 目線はまた雑誌に向いている。
私に興味があるのかないのか、よく分からない。
私
私
そう言ってへらっと笑う彼
完全にペースを呑まれているこの状況になんとなく腹が立ったので
私
私
私
私も負けじと言い返してみた
そう言いながら彼は席を立って
雑誌を残したまま 立ち去ってしまった。
私
私
テーブルに置き去りにされたそれを無視する訳にもいかず
結局、私は過去に1度しか入ったことのない雑誌コーナーに立ち寄ってから帰る羽目になった
これが
私と彼の、初めての会話だった
コメント
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はじめまして。またいつか.といいます。 これは山野サンと篠宮くんが、放課後の図書室で取り留めのない会話を繰り広げる物語です。 しかし実は ふたりはとある秘密を隠しています。その秘密を知ってから読むと この1話目もまた違う見方で楽しめるようになっています。 あなたはふたりの秘密に気がつけるでしょうか。もしよければ、この物語の、彼らの行く末を見守っていただけたらうれしいです。