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時刻は11時。
清春が大学に行って、小太郎が編集しに行った後、俺は自分の部屋でしばらく過ごしていた。
ずっとゲームばっかしてるのも良くないし、リビング行こうかなあ…
リビングに行くと、パジャマ姿のさつきがソファに座っていた。
しばらくの間2人でスマホを見たりして過ごした。
ガチャッ
しばらくすると、リビングのドアが開いた。
椚三波斗
市川慶一郎
仮屋瀬さつき
三波斗だ。
仮屋瀬さつき
俺と三波斗の姿を見て、さつきがそう言った。
椚三波斗
三波斗はさつきのパジャマ姿を見て、笑いながらソファに座った。
仮屋瀬さつき
椚三波斗
仮屋瀬さつき
さつきは俺と三波斗の2人を残し、自分の部屋へ向かった。
さつきが行ったあと、少しの間沈黙が流れた。
椚三波斗
市川慶一郎
三波斗に話し掛けられた俺はスマホを置き、三波斗を見つめた。
椚三波斗
市川慶一郎
昨日は確か…
【回想】
個人撮影を終えた俺は、部屋を出た。
三波斗の部屋でも行こうかな…
市川慶一郎
三波斗の部屋の前で立ち止まる涼雅とさつきの2人が目に入った。
仮屋瀬さつき
仮屋瀬さつき
さつきは少し困った顔をした。
三波斗に何かあったのかな…
市川慶一郎
四季涼雅
市川慶一郎
市川慶一郎
仮屋瀬さつき
きょとんとするさつきと涼雅の間を通り、三波斗の部屋のドアを開けた。
ドアを閉めたことを確認する。
部屋には、ベッドのすぐ下に3角座りに座る三波斗がいた。
市川慶一郎
不思議に思い、そっと近づき、三波斗の隣にしゃがんだ。
市川慶一郎
寝ている…
前髪の隙間から、瞑る目が見える。
よく見ると、3、4粒程の涙が光っている。
三波斗…何で泣いてるの?
誰かに泣かされたの…?
心の中で問い掛けた。
三波斗の笑顔が好きなのに…
しゃがんだ状態で三波斗の顔を覗き込んだ。
寒そうだな…
俺はパーカーを脱ぎ、三波斗の背中に掛けた。
風邪引かないでね。
最後に三波斗の頭を撫で部屋を出た。
【回想終了】
市川慶一郎
椚三波斗
市川慶一郎
椚三波斗
市川慶一郎
椚三波斗
三波斗は俺の回答にポカーンとした。
椚三波斗
椚三波斗
俺を可笑しそうに笑った。
笑って、目が細くなった。
俺はこの笑顔が大好きだ。
市川慶一郎
椚三波斗
俺の発言が予想外だったのか、驚いた顔を見せた。
市川慶一郎
椚三波斗
言葉を遮るように、三波斗に顔を近づけ、こう聞いた。
市川慶一郎
顔と顔の距離は大体5センチくらい。
勢いで近づいてみたが、こんなに近づく気はなかった。
近過ぎてどんな反応をしているか分からないけどきっと驚いているだろう。
椚三波斗
市川慶一郎
少し強引かもしれない。
だけど、俺は三波斗が好き。
だから、全部話して欲しい。
三波斗が嬉しかったことや
三波斗が傷ついたことも全て。
椚三波斗
小さい声でそう答えた。
市川慶一郎
体勢を戻しソファにもたれ掛かった。
市川慶一郎
市川慶一郎
椚三波斗
その言葉を聞いた途端、三波斗が“嘘!”といった顔をした。
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
“好きだから”
その言葉はまだ言わないでおこう。
椚三波斗
椚三波斗
三波斗が少し戸惑った顔をした後、無理やり作った笑顔を見せた。
俺にはバレバレだよ。
撮影前、編集中の小太郎に声を掛けに行った。
市川慶一郎
双葉小太郎
部屋に入ると、小太郎がベッドの隅っこでパソコンを触っている。
市川慶一郎
双葉小太郎
双葉小太郎
ドアを閉め、ある質問をした。
市川慶一郎
双葉小太郎
双葉小太郎
小太郎がパソコンをいじる手を止め、俺の方を見た。
市川慶一郎
市川慶一郎
双葉小太郎
“何も出来てない”
そう言おうとしたが、小太郎の声に遮られた。
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
そんなこと言ったって…
市川慶一郎
俺は情けない声を出した。
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
市川慶一郎
前言ってくれたことと同じだ。
その“同じこと”が俺が悩んでいることがどんなに情けないことかを教えてくれた。
市川慶一郎
双葉小太郎
双葉小太郎
小太郎の心配するような表情で自分が泣いていることに気づいた。
悩んでいることがこんなにも情けないことだったとは気づけなかった。
そんな自分に腹が立った。
市川慶一郎
俺は小太郎の部屋を出て、自分の部屋へ走った。
市川慶一郎
双葉小太郎
薄暗い部屋の中、小太郎が入ってこないようにドアノブを抑えた。
自分勝手って分かってるけど、どうしても泣き顔を見せたくなかった。
情けないって思ったから。
コンコン
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
小太郎の優しい声に、手に入れた力がゆるんだ。
その途端
ガチャッ
双葉小太郎
何が起きたかわからなかった。
目をゆっくり開けると、小太郎の顔が物凄い近い距離にあった。
もしかして俺、押し倒されてる…?
小太郎に…?
“なんで…?”と思いながら、顔を横に向け、涙を流した。
双葉小太郎
小太郎は飛び上がり身体を起こした。
市川慶一郎
俺は3角座りし、顔を伏せた。
双葉小太郎
小太郎が悪いみたいな感じになっているけど、俺にも原因がある。
市川慶一郎
双葉小太郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
市川慶一郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
確かに言ったけど、そんなこと思ってくれたなんて嬉しいな…
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
双葉小太郎
市川慶一郎
そんなこと言われたら、また涙が…
俺は溢れる涙を袖で拭い、小太郎に笑顔でこう言った。
市川慶一郎
双葉小太郎
市川慶一郎
双葉小太郎
小太郎も俺の笑顔に応えてくれた。
市川慶一郎
双葉小太郎
双葉小太郎
市川慶一郎
双葉小太郎
謎の感動的なムードで終わった。
廊下でまた涙を拭い、階段を降りた。
市川慶一郎
涙を完全に拭った後、リビングに戻った。
目が赤かったらどうしよう…
なんて不安を抱きながら3人に声を掛けた。
市川慶一郎
仮屋瀬さつき
椚三波斗
三波斗が突然立ち上がった。
市川慶一郎
椚三波斗
と言いながら部屋を出ようとした。
そんなこと言われたら気になっちゃうよ。
また悩んでたら…
市川慶一郎
市川慶一郎
椚三波斗
三波斗の元へ行くと、笑われてしまった。
市川慶一郎
椚三波斗
市川慶一郎
俺と三波斗はリビングを出て、三波斗の後ろについていった。
向かった所は三波斗の部屋だった。
市川慶一郎
椚三波斗
流石に可笑しかったかな…?
市川慶一郎
市川慶一郎
三波斗は相変わらず俺のことを疑うような目で見ていた。
椚三波斗
市川慶一郎
2人でベッドに横並びに座った。
椚三波斗
三波斗はベッドの隅に置いていた物を取り出した。
椚三波斗
市川慶一郎
取り出したのは昨日俺が三波斗の背中に掛けた俺のパーカー。
完全に忘れていた笑
市川慶一郎
椚三波斗
椚三波斗
丁寧に畳まれたパーカーを俺の膝に置いた。
こんな丁寧に畳まなくていいのに…
こういう人のものを大事にするところも好きだな。
椚三波斗
市川慶一郎
俺は身体の向きを三波斗に向けた。
市川慶一郎
椚三波斗
図星かな。
さっき、さつきと涼雅が一緒にリビングに来た時の三波斗の顔が忘れられなかった。
暗い、悲しそうな顔。
凄く辛そうだった。
まるで恋をしている男の子みたいだった。
市川慶一郎
椚三波斗
椚三波斗
椚三波斗
椚三波斗
市川慶一郎
市川慶一郎
椚三波斗
無言で三波斗が頷いた。
市川慶一郎
椚三波斗
辛い三波斗は見たくない。
俺が、幸せにしてあげたい。
市川慶一郎
俺は肩を軽く叩き、三波斗の部屋を出た。