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スケッチブックに恋をした

第3話 - 第3話　君の描く世界

2025年10月19日

#恋愛

#恋愛物語

#GL

𝕣𝕚𝕟

第3話「君の描く世界」

翌日の放課後・美術室（空は薄い桃色。静かな教室の中で、筆の音だけが響く）

蘭

……今日は、いつもより光がやわらかいね。

日向

冷静に、光のやわらかさとか、よく気づくね。

蘭

だって、絵を描くには大事なことだから。

日向

……私には、全部同じに見える。

蘭

それは、日向が見えてないだけ。自分の“色”を。

（日向は少し視線を逸らす。胸の奥が少し痛む）

真白

（突然ドアを開けて）あ〜！やっぱりここいた！

蘭

真白、驚かせないで。

真白

ごめんごめん。でもさ、二人で放課後にこもってると噂になってるよ〜？

日向

冷静に、誰の噂。

真白

クラスの子たち。……でも、ちょっと羨ましそうだった。

蘭

（小さく笑う）いいじゃない。私、嬉しいかも。

（蘭の頬がほんのり赤く染まる）

結衣

（後ろからひょっこり登場）はいはい、青春はそこまで〜。

日向

結衣まで……。

結衣

ねぇ蘭、そのスケッチブック、昨日の日向の絵の続き？

蘭

（少し間をおいて）……うん。でも、昨日とは違う。

真白

違うって？

蘭

日向が、笑ってるの。

（日向が驚いて近づく）

日向

冷静に、私そんな顔してた？

蘭

してない。

日向

……え？

蘭

でも、してほしいなって思って。

蘭

だから、描いたの。笑ってる“日向”。

（蘭の瞳がまっすぐで、少し切ない）

日向

（心の声）冷静に……心臓、変な音してる。

結衣

（空気を察して）真白、帰ろっか。

真白

えっ、あ、うん！おじゃましました〜💦

（2人が去り、静かな美術室に二人きり）

日向

蘭……その絵、見せて。

蘭

まだ途中だよ。

日向

いいの。見たい。

（蘭がためらいながらスケッチブックを差し出す。そこには、笑っている日向と、隣に立つもう一人の“蘭”。けれど背景の教室は、少し歪んでいる）

日向

……なんか、変だね

蘭

この世界は、少しずつ壊れてるの。

日向

壊れてる？

蘭

（微笑んで）でも、大丈夫。

蘭

私が、日向を描き続けるから。

（沈黙。窓の外の夕陽が2人の影を溶かすように重ねていく）

日向

（心の声）冷静に……私はいま、何に惹かれてるんだろう。

日向

蘭の絵？　それとも、蘭そのものに——

次回予告：「笑う日向」蘭の描く“笑う日向”は、現実の彼女とは少し違っていた。その日、スケッチブックの中の絵が——ほんの一瞬、動いた気がした。

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