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色の白い少女だった。
とても顔の整った少女だった。
遮断器の降りる音がした。
耳に残るうるさい音だ。
真夏に起きた悲劇。
僕は今でも忘れない。
二度とは帰らぬ君のことを。。
レイ
憂
真夏に比例しない色の白い腕で 僕にある物を向けた君は
満足そうに微笑んでいた。
憂
レイ
レイ
マグネットがついているのか その2つのキーホルダーは、 くっつけて1つにすることができた。
彼女は言った。 僕達のきれない友情にそっくりだと…
僕は不満だった。
友情より僕の中では『レイ』への 愛情の方が勝っていたからだ。
だけど…………
レイ
レイ
レイ
そう…僕の腰から下に 垂れ下がっているのは他ならない。
市立中の単なる制服のスカートなのだから…
レイ
憂
憂
僕はレイが好きだった。
世間ではこれを同性愛… というのだろう
彼女がこれを知ったときどんな反応をするだろうか……
僕の前から姿を消してしまうだろうか…
ただそれだけが怖かった。
憂
僕は透明なアクリルのキーホルダーを 真夏の空を透かしてみせた。
ある暑い日だった。
夏休みに入って少しした日に 僕達は海の近くまで来ていた。
憂
憂
彼女を愛していた。
だからずっと一緒にいたかった。
なのに彼女は少し複雑な表情をみせていた。
そしてふいに…彼女は言った。
レイ
レイ
レイ
憂
憂
僕の胸を何かが貫いていった。
置き去りにされた気分だった。
彼女の瞳は輝いていた。
太陽の光を吸収していた。
憂
醜い僕は声を震わせた。
憂
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
脳が真夏の暑さに焼けるようだった。
レイ
レイ
憂
レイ
レイ
憂
レイ
レイ
気づけば僕は 彼女の両肩を強く握っていた。
レイ
そんな彼女の小さな声も セミの声にかき消されていく…
憂
レイ
レイ
憂
憂
憂
レイ
怯える目で彼女が後ろに退いていく…
レイ
憂
憂
レイ
レイ
憂
憂
レイ
憂
あ、割れた。
何かが音を立てて割れた。
そう思ったときにはもう遅かった。
レイを抱き寄せキスをする……。
レイ
さらに彼女は身を退けた。
それが真夏を恐怖へ誘った。
遮断器の音がした。
耳に残る嫌な音だった。
カンカンカンと響いていく。
彼女がいつの間にか線路に吸い込まれていく……
恐怖の瞳のまま、僕を見つめていた。
そんな彼女が… 鈍い音をたてて消えていく。
赤い火花が散った。
君の匂いがした。
大好きな匂いだった。
色の白い腕が空を舞った。
憂
電車は止まることなく彼女をさらっていった。
僕の前から…… 腕だけを残して…………。
線路の端にはキーホルダーが落ちていた
血まみれの千切れたキーホルダー。
僕のと合わせても… もうマグネットでくっつくことはなかった。
レイが死んだ。
死んでしまった。
憂
何で何で何で何で何で何で
僕から逃げるから…… 僕を置いていくから…………
また…置いていった? なんで……?
僕はレイの腕を拾い上げた。
優しく抱きしめた。
憂
僕の悲鳴が 真夏の田舎をこだました。
僕はレイを愛していた。
あの日のレイを今でも愛している。
腕だけのレイを今でも愛している。