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卒業式の朝はやけに音が澄んでいた
制服の布が擦れる音
階段を降りる足音
ドアの閉まる音
全部が「最後」だと知っているみたいだった
鏡の前でネクタイを締めながら俺は思う
今日言えなかったら
きっと一生この距離のままだ
守ってきたはずの距離
壊したくなかった距離
でも今はそれが檻に見える
校門前
なつはもう来ていた
春の風に前髪が揺れている
すち
暇72
いつも通り
それが逆に怖い
ネクタイが曲がっているのに気づいて 俺は無意識に手を伸ばす
すち
暇72
指先がほんの少しだけ震えている
こんな距離今まで何度もあったのに
暇72
なつが笑う
すち
暇72
図星だ
でもそれは卒業式のせいじゃない
体育館
名前を呼ばれ証書を受け取る
一歩、歩くたびに思う
この三年間のほとんどになつがいた
小学生の頃から数えたらほぼ全部だ
当たり前すぎて“特別”にするのが怖かった
席に戻る途中いるまと目が合った
小さく頷かれる
何も言われてないのに背中を押された気がした
みことは泣いていた
でも泣きながら笑っている
らんは天井を見上げて こさめはその袖を引いている
みんなちゃんと感情を外に出している
俺だけがずっと抑えてきた
教室
最後のHR
担任が言う
担任
通過点
その言葉が胸に刺さる
俺となつは通過点のまま終わるのか?
それとも
解散後
写真を撮る輪の中に俺たちもいた
いるま
らんが笑う
LAN
みことがなつを見る
みこと
暇72
なつはむくれる
自覚がない
自分がどれだけ周りに心配されているか
その無防備さがずっと好きだった
こさめが俺に小声で言う
雨乃こさめ
すち
図星すぎて何も言えない
雨乃こさめ
軽い口調なのに本気だと分かる
人が少なくなった頃俺はなつの腕を掴んだ
すち
なつは驚いた顔をしてでも素直に着いてくる
校舎裏
まだ満開じゃない桜
風が少し冷たい
暇72
その声がやけに近い
すち
言葉が喉で引っかかる
怖い
もし今までの関係が壊れたら
壊さないために黙るのはもう違う
すち
なつは黙っている
すち
それは本当だった
でも
すち
なつの目が揺れる
すち
声が震える
すち
沈黙
風が吹く
桜の枝が揺れる
すち
逃げない
ちゃんと見る
すち
はっきり言う
すち
すち
言った瞬間胸の奥が熱くなる
なつはすぐには答えなかった
ただじっと俺を見ている
その視線が逃げ場をなくす
暇72
なつがゆっくり言う
暇72
小さく笑う
暇72
胸が締まる
でも
なつは一歩近づいた
暇72
声が少しだけ震える
暇72
その言葉に全身が熱くなる
暇72
なつは視線を逸らさない
暇72
完璧な自覚じゃない
でも嘘じゃない
暇72
小さく息を吸う
暇72
暇72
それはなつなりの覚悟だった
俺は何も言わずに笑った
すち
春の風が吹く
桜の花びらが一枚落ちる
なつがそれを見上げて言う
暇72
すち
なつが少し考えて
暇72
すち
二人で笑う
怖いけど逃げない
幼馴染で終わらない
卒業は別れじゃなかった
選び直す日だった
主