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志賀先生

いや、素晴らしい。

志賀先生

誰か1人に負担が生じた時、それをみんなで分け合えば、誰も犠牲にならずに済む。

志賀先生

……どうして、お前達はもっと早くそれをしなかったんだ?

ぼそりと呟かれた担任の一言に、セイヤは妙な違和感を抱いた。

セイヤ

とにかく、これで今回の犠牲者はなしだ。

ハカセ

先生、そろそろ教えてもらえないだろうか?

ハカセ

どうして、こんなことをする?

志賀先生

それは俺が言っても意味ないんだよ。

志賀先生

お前達が自発的に気づかなきゃ。

ふと、教壇のほうに視線を移す担任。つられて教壇のほうに視線をやったセイヤは、背筋が冷たくなるのを感じた。

志賀先生

おや?
こんなところに1本瓶が残っているな。

志賀先生

どさくさに紛れて、誰か解毒薬を飲んでいないのか?

志賀先生

それとも、なにか事情があって飲んでいないのか……。

教壇の上に残っていた1本の瓶。

これは由々しき事態だった。

すでに自分も解毒薬を飲んだが、忘れていたふりをして飲んでしまうか。

そうでなければ、全員が解毒薬を飲むというルールが守られないことになる。

セイヤ

え、あれ?

そこでセイヤはある疑問を抱く。

それは小さく、しかしセイヤの胸の奥底に芽生えた疑念だった。

志賀先生

まぁ、誰が解毒薬を飲んで、誰が飲んでいないかを、今さら確かめる術もないからな。

志賀先生

仕方ない、このことはお咎めなしということにしようか。

志賀先生

いちいち連帯責任で殺してたら、誰もいなくなるし。

セイヤは大きく胸をなでおろす。

担任はというと、腕時計に視線を落とした。

志賀先生

あぁ、そうだ。

志賀先生

セイヤ、さっきお前言ったよな?

志賀先生

解毒薬の量を100㎖に設定したのは、解毒薬で毒を希釈するためだって。

志賀先生

それ、半分は正解。

志賀先生

でも、半分は不正解。

志賀先生

つまり……遅効性の毒を100㎖飲ませることで、効果が比較的早く出るようにした。

志賀先生

俺の計算だと、そろそろ効果が出るはず……。

担任の言葉を遮るようにして、誰かが咳き込んだ。

そちらのほうに視線をやると、口に手を当てたミナミの姿があった。

ミナミ

ごふっ……。

みんなの視線が集まるのを待っていたかように、口をおさえたミナミの指の隙間から、真っ赤な血が溢れ出た。

ミナミ

志賀……。お前、騙し……たな。

志賀先生

ん?
どうしたんだミナミ。

志賀先生

具合が悪いのか?

ミナミ

ふざけんなよ……。

時間は少しばかりさかのぼる。

――昼食のパンとお茶が配られた時分。

パンの包装紙に包まるようにして、折り畳まれたメモをミナミは見つけた。

恐る恐るとメモを開くと、そこには信じられないような文言が書いてあったのだった。

これを読んだ者へ 次の課題では、人数分ある瓶の中に1本だけ毒薬が混じっていて、それを1人ずつ飲んでもらうことになる。 しかし、誰かが先陣をきって飲まなければ、状況が停滞してしまう恐れがある。 そこで、これを読んだ者にお願いだ。 きっかけとして、誰よりも先にそれを飲んで欲しい。 もちろん、無償でやってくれというわけじゃない。 代わりに毒が確実に入っていない瓶がどれなのかを教えよう。 瓶は2列に並べられるから、向かって左側、手前の瓶を飲んで欲しい。 それは毒の入っていない瓶だ。 協力するのか、しないのか。 その判断は君にゆだねよう。 では、よろしく頼む。 担任 志賀

ミナミは誰にも見られぬように、メモを制服のポケットへと忍ばせた。

ミナミ

あ……あ。死に……たくない。
私……まだ死に……。

うわごとのように繰り返すと、その場に崩れ落ち、もう一度耳障りの悪い咳をしたミナミ。

口から大量の血を吐き出すと、その場に倒れてしまった。

ツヨシ

大丈夫かっ!

ヨウタ

くそっ!
こんなことってあるのかよ!

ツヨシとヨウタが駆け寄るが、しかしミナミは最後の悪あがきとばかりに激しく痙攣したのち、今度はぴくりとも動かなくなってしまった。

志賀先生

いやー、こんな運が悪い人間がいるものだろうか。

志賀先生

少し待っていれば、セイヤの考えた案で助かることができた。

志賀先生

先走ったとはいえ、あれだけあった瓶の中から、ピンポイントで毒を選んで飲むなんて!

志賀先生

セイヤ、今どんな気持ち?
ねぇ、偉そうに答えを見せてくれたけど、クラスメイトがまた死んで、どんな気持ち?

ツヨシ

うるせぇな!
セイヤの策は間違ってねぇ!
現にミナミ以外は無事だった。

ツヨシ

たまたまミナミの運が悪かったんだよ。セイヤは悪くねぇ!

セイヤ

本当に……運が悪かっただけなのかな?

せっかくツヨシが庇ってくれたというのに、セイヤはそんなことをぽつりと漏らした。

セイヤ

先生、もしかしてミナミとなにか取り引きしたんじゃないか?

ミナミの最後の言葉を聞く限りでは、ミナミが担任に騙されたような印象が強い。

志賀先生

取り引きなんてしてないさ。
証拠もないのに言いがかりはよしてくれないか?

セイヤ

しらばっくれるのもいい加減に……。

ハカセ

セイヤ、落ち着け。
今は我慢するんだ。

ハカセがセイヤのことを諭そうとした時のこと。

廊下からいつくかの足音が聞こえてきた。

しばらくすると、教室の扉が開かれ、スーツ姿の男が顔を覗かせた。

スーツ姿の男は両手を挙げ、その後ろには猟銃をスーツの男に突きつけるフルフェイス達の姿が。

フルフェイスA

校内に紛れ込んだネズミを連れてきた。

フルフェイスB

こいつ、どうします?

ハカセ

……父さん。
どうして?

セイヤ

えっ?
ハカセそれって。

志賀先生

これはこれは、どなたかと思ったら意外なお客さんだ。

志賀先生

ようこそ、ハカセのお父さん。お会いするのは、これが初めてになりますか。
いや、思っていた以上にハカセにそっくりだ。
違うか。ハカセがお父さんに似たのか。

ハカセ

あの男の人……僕の父さんだよ。

フルフェイス達に連行されて現れたスーツの男。

それは、ハカセの父親であった。

3年D組のクーデター

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