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複雑な関係【9bic】

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複雑な関係【9bic】

20 - 少し強引なハグ【椚三波斗】

♥

35

2022年04月16日

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椚三波斗

終わったあぁ!

市川慶一郎

おつかれ

市川君に誘われたインライを終えた。

市川君に誘われるのは珍しいから少し驚いたけど、結構楽しかったなあ。

椚三波斗

おつかれ〜

椚三波斗

楽しかったね

市川慶一郎

え?

俺がそう言った途端、市川君は驚いた表情をした。

椚三波斗

ん?

市川慶一郎

あ、うん

市川慶一郎

楽しかったね笑

なんでそんなに動揺してるの…?

まあ、いっか。

椚三波斗

あ、そういえば

それより、さっきインライに涼雅とさつきが一瞬来てたよな…

椚三波斗

インライに涼雅とさつき見に来てたよね?

市川慶一郎

え?そうだっけ?

椚三波斗

うん

椚三波斗

なんか最初の方に見て抜けてった!

椚三波斗

もう寝たのかな?

市川慶一郎

そうだったの?

市川慶一郎

気づかなかった笑

涼雅に会いたいな…

1人で部屋でゲームでもしてるだろうし、遊びに行こっ

椚三波斗

ちょっと見に行って来るっ

部屋を出た。

市川慶一郎

え、急に?!笑

後ろから市川君のそんな声が聞こえてきた。

市川慶一郎

三波斗

振り向くと、後ろから着いてくる市川君の姿が見えた。

椚三波斗

ん?

椚三波斗

別に着いてこなくたって良いのに笑

市川慶一郎

え?まあ…

俺は涼雅の部屋のドアノブを捻った。

部屋の中を覗いた。

俺はその様子を受け入れることが出来なかった。

何度瞬きしても同じだ。

周りの音が、何も聞こえなくなった。

ベッドに、涼雅とさつきの2人が眠っている。

椚三波斗

……

俺は耐えられなくなって、そのままドアを閉めた。

市川慶一郎

三波斗?

その時、ようやく周りの音が耳に戻ってきた。

市川君は少し心配そうな声でそう言った。

なんだか申し訳ない気持ちになった。

俺、情けないや。

椚三波斗

市川君

市川慶一郎

…なに?

椚三波斗

俺、風呂入って寝る

椚三波斗

おやすみ

これ以上の言葉が出てこなかった。

これ以上喋ったら、泣いてしまいそうな気がしたから。

市川君に背を向け、階段を降りた。

椚三波斗

……

洗面所のドアを閉め、鏡を見た。

鏡に映ったのは、魂の抜けたような、情けない顔をした俺だった。

洗面台の縁に手を置き、目を閉じた。

涙が出そうだったけど

悲しみや苦しみよりも驚きや衝撃な気持ちの方が大きくて

涙は一滴も出てこなかった。

椚三波斗

……

1人静かに、湯船に浸かった。

今は何も考えないでいたいけど、

やっぱり思い出してしまう。

涼雅とさつきが…

別に、何もしていないと思うけど…

多分。

でも…

なんで涼雅、一緒に寝ちゃったの?

なんでOKしちゃったの?

俺が“一緒に寝よ?”って誘っても、きっとOKしてくれないよね。

俺だって涼雅と寝たことないのに…

なんでさつきを選んだの…?

俺じゃ、だめだったの…?

いろんなことを考えていたら、いつの間にか風呂から出ていた。

椚三波斗

はあぁぁぁ…

大きなため息をしながら、部屋のベッドに飛び込んだ。

ため息をしたら幸せが逃げるって言うけど俺は逆に不幸が逃げると思うな。

ため息をしたら、心做しか楽になる気がするし。

椚三波斗

……

モゾモゾ

布団に潜り、うつむせ状態になった。

やっぱりこの場所と、この体勢が1番落ち着く…

自然とTwitterを開いた。

1番上に出てきたのは涼雅の投稿だった。

その投稿の内容を見てしまった。

大きなため息をしながら、部屋のベッドに飛び込んだ。

ため息をしたら幸せが逃げるって言うけど俺は逆に不幸が逃げると思うな。

ため息をしたら、心做しか楽になる気がするし。

モゾモゾ

布団に潜り、うつむせ状態になった。

やっぱりこの場所と、この体勢が1番落ち着く…

自然とTwitterを開いた。

1番上に出てきたのは涼雅の投稿だった。

なんでよりによって涼雅の投稿なんだよ…

今は、涼雅を見たくないよ。

俺はホーム画面に戻り、今度はインスタを開いた。

椚三波斗

……

良かった…1番上に出てきたのはきよの投稿だ。

こたとの写真だ。

2人ほんとカップルかってぐらい仲良いよなあ笑

コメントにも“きよこたカップル”なんて書いてあるし笑

あぁ…

いいな。

しばらくスマホを触っていたら

市川慶一郎

みーなーと!

椚三波斗

…っ!!!

後ろから誰かがのしかかってきた。

この声もしかして…市川君?!

椚三波斗

…っくりしたあ…

椚三波斗

市川君?

市川慶一郎

…ん?

市川君は俺の首元に顔を埋めてきた。

椚三波斗

なに?なにしてるん?笑

お酒飲んだ?

いやでも、さっきまで一緒にいたし…

飲んだとしてもこんな感じにはならないか…

え、急にどうしたの…?市川君?

市川慶一郎

なにって?

俺の動揺した様子とは裏腹に、市川君はなんだか余裕そうだ。

そして、自然と首周りに腕を回してきた。

え?なになに?!

椚三波斗

え、なに?!

椚三波斗

やめてよ!

俺はあまりに焦ってしまい、市川君をベッドから落としてしまった。

市川慶一郎

……

市川君はフローリングに座って、ベッドの上に座る俺を見つめてきた。

椚三波斗

…ごめん

市川慶一郎

三波斗、傷ついてたんでしょ?

市川慶一郎

だから俺

市川慶一郎

ハグして、忘れさせようとしただけだよ…

市川君は寂しそうな顔でそう言った。

ハグして忘れることができたら、どんなに楽だろう。

そんなに簡単じゃないんだよ。

椚三波斗

1人にして

市川慶一郎

わかった

市川慶一郎

…ごめん

市川君は泣きそうな顔で、俺に背を向けた。

なんでこんなこと言っちゃったんだろ。

市川君なりの励ましだったのに。

椚三波斗

あ、待って!

ドアを開けようとしたその瞬間、俺は市川君を引き止めた。

市川慶一郎

…?

椚三波斗

やっぱ…

椚三波斗

いて欲しいかも

市川慶一郎

え?

市川君にあんなことを言って申し訳ないという気持ちももちろんあったけど

市川君といたら、少しは楽になるかなと思った。

涼雅のことを少しは、忘れられると思った。

少しは…

市川慶一郎

…いいの?

椚三波斗

うん

それと、少しだけ、市川君のことを可愛いと思ってしまう自分がいた。

椚三波斗

さっきはごめん

椚三波斗

俺、まだやっぱ涼雅のこと好き

椚三波斗

だから

椚三波斗

辛くて…

椚三波斗

市川君なりの励ましだったのに

椚三波斗

ごめんね

日本語可笑しいって分かってる。

だけど、この気持ちを言葉で表すことは、難しい。

市川慶一郎

そうだよね

市川慶一郎

好きだよね

市川君がそう言った。

その横顔が少し悲しそうに見えたのは気のせいかな。

しばらくすると、市川君は急に静かになった。

市川慶一郎

……

かと思ったら、俺の方に倒れてきた。

椚三波斗

…え?

椚三波斗

市川君?

流れる前髪の間から見える顔をそーっと覗いた。

寝てる?

こんな急に寝ちゃうんだ!

椚三波斗

笑笑

なんだか可笑しくなって、くすくすと笑ってしまった。

こんなとこで寝たら風邪ひくよ。

俺は市川君を手で支えたまま、体勢を変えて、ベッドに寝かせた。

そして掛け布団を掛けた。

この間のお返し…みたいな感じかな。

おやすみ。

どこで寝ようかと少し悩んだ結果、きよからヨギボーを借りることにした。

理由も聞かずに快く渡してくれた。

ヨギボーで寝るのも悪くないかもな。

俺はそのまま寝転び、目を閉じた。

椚三波斗

ん…

アラームをセットしている訳じゃないのに、自然と目が覚めた。

目を開け、1番最初に飛び込んできたのは…

椚三波斗

市川君?!?!

市川君が俺の目の前で眠っていた。

本当に近い距離だ…

市川慶一郎

ん…

俺の大声が聞こえたのか、市川君は眉を顰めた。

もしかして、眠ってる間にここまで転がってきたのかな?

だとしたら相当寝相悪い…

けど、市川君なら有り得るか。

椚三波斗

…あれ?

これ…

俺が市川君に掛けた掛け布団だ。

昨日は何も羽織らずに寝たのに、なんであるんだ?

知らないうちに、掛け布団がかけられていた。

もしかして市川君が…?

市川君の方を向いた。

あ、とりあえず起こそう!

椚三波斗

市川君

椚三波斗

市川君!

椚三波斗

おーい!

市川慶一郎

んん…

あ、起きた!

市川君はいつもの4分の1くらいの目の細さで俺の方を見た。

市川慶一郎

やばい寝てた…

椚三波斗

おはよ笑

市川慶一郎

おお、おはよ

市川君はものすんごい時差で驚いていた。

市川慶一郎

さっきまで起きてたのにいぃ

椚三波斗

…さっきって?

市川慶一郎

結構朝に起きた

椚三波斗

そうなの?

じゃあこの掛け布団、やっぱり市川君が…

椚三波斗

あ、ありがと

椚三波斗

掛け布団

市川慶一郎

へ?

市川慶一郎

とりあえず洗面所行こ?

椚三波斗

え?あ、うん

まだ寝ぼけてるのかな?

俺の質問も理解してないみたい。

市川君はあくびをしながら立ち上がりおじいちゃんみたいなゆっくりとしたスピードで部屋を出た。

椚三波斗

あ、待って〜

俺もその後ろからついて行った。

椚三波斗

…わっ!

寝起きの為、ぼーっとして階段を降りていたら、スリッパが引っかかって滑りそうになった。

市川慶一郎

…!!

その時、市川君がすぐに後ろを向いて、俺の腕を持って支えてくれた。

市川慶一郎

大丈夫?

椚三波斗

…う、うん!

椚三波斗

…っくりしたあ

市川慶一郎

気をつけなよ?

椚三波斗

うん

椚三波斗

ごめん

市川慶一郎

いいよ

市川君の支えが無かったら、このまま真っ逆さまに落ちていっただろう。

良かった…市川君が助けてくれて。

2人で洗面所に入った。

仮屋瀬さつき

ん?おはよう

仮屋瀬さつき

早いね

2人で少し話しながら顔を洗っていると、洗面所にさつきと涼雅が入ってきた。

市川慶一郎

おお、おはよう

四季涼雅

おはよう

椚三波斗

あ、おはよ

市川慶一郎

おはよう

タオルで顔を拭きながら挨拶を交わした。

ああ、昨日同じベッドで寝てた2人だ

2人で一緒に来ないでよ…

四季涼雅

どうしたんですか?2人で

市川慶一郎

え?ああ、一緒に寝たから

市川慶一郎

一緒に起きた

仮屋瀬さつき

え?

四季涼雅

一緒に寝た?

ちょ、市川君!!

椚三波斗

おい誤解生むだろその言い方!笑

市川慶一郎

え?ほんとのことじゃ…

椚三波斗

…あ、2人とも!

椚三波斗

確かに一緒の空間で寝たけど

椚三波斗

同じベッドで寝た訳じゃないからね!?

あれ…俺なんでこんな必死になって説明してるんだろ。

椚三波斗

市川君が勝手に…

市川慶一郎

…でも一緒に寝たことは変わらないから

椚三波斗

いやでも

市川君、なんでそんなに一緒に寝たことにこだわるの??

仮屋瀬さつき

えちょっと2人とも落ち着いて?

仮屋瀬さつき

一緒に寝たのはちょっと驚いたけど…

仮屋瀬さつき

…ね?

四季涼雅

あ、うん…

と言って、2人は目を合わせた。

別に2人みたいに同じベッドで寝たわけじゃないもん…

市川慶一郎

驚いたとか言ってるけどさ

市川慶一郎

2人は一緒に寝てたんでしょ?

え?

椚三波斗

市川君?!

俺は市川君の腕を引っ張って、涼雅とさつきに背を向けた。

そして2人に聞こえないくらいの声量でこう話した。

椚三波斗

なんで言っちゃうの?!

市川慶一郎

三波斗、辛いんでしょ?

椚三波斗

え?うん

その質問何回目だよ。

俺のこと幸せにしたいんだったらこれ以上傷つけないでよ。

市川慶一郎

じゃあハッキリさせようよ

市川慶一郎

2人がどういう関係なのか

椚三波斗

え?

市川慶一郎

ハッキリさせた方が良くない?

市川慶一郎

必ず幸せにするって約束するから

市川慶一郎

傷つけないから

椚三波斗

……

まるで、俺の心を読んでいるような目を向けた。

市川君、何考えてるの?

複雑な関係【9bic】

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コメント

4

ユーザー

了解です❗ 説明、ありがとうございます✨ 今回も、面白かったです

ユーザー

実は19話と20話の内容、私が書きたかった内容全てを書けた訳じゃないんです。(文字数の多すぎとかで書けませんでした。)なので、次の話21話は順番通りの“四季涼雅目線”ではなく、“市川慶一郎目線”で、22話は“仮屋瀬さつき目線”ではなく“椚三波斗目線”で書きます。それからはいつもの順番で書きます!少し順番がズレてしまうんですが、御理解お願いします、

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