元詐欺師が見抜きます。―嘘つきと新米刑事の捜査録―
「人は見たいものしか見ない」
警視庁捜査一課に配属されたばかりの新人刑事・南 葵。正義感に燃える彼女の前に現れたのは、グレーのコートを纏い、退屈そうに現場を眺める男――柊渡だった。
彼はかつて、数多の人間を心理の迷宮に嵌めてきた伝説の詐欺師。現在はある「条件」と引き換えに、警察の特別捜査協力者として飼われている。
押し込み強盗の凶行と目された凄惨な現場で、柊は証拠品ではなく、犯人の演技の綻びを指摘する。
冷徹なまでの観察眼と、詐欺師ゆえに知る「人間の欲望の正体」。
葵は彼の不謹慎でアナーキーな手法に猛反発しながらも、自分たち警察には決して見抜けない「真実の裏側」を突きつける彼に、抗いようもなく惹かれていく。
しかし、柊が警察に協力する真の目的は、正義のためではなかった。
数年前、自宅で何者かに刺殺された婚約者の復讐。捜査資料や証拠を集めるために詐欺師を辞め警察に協力している。
事件を解決するたびに縮まる、二人の距離。
だが、葵もまた、誰にも言えない「過去の傷」を抱えていた。彼女が刑事を志すきっかけとなった、とある未解決事件。その断片が、柊が追う婚約者殺害の謎と重なり始めたとき、二人の運命は加速していく。
嘘を武器に戦う男と、真実を信じて疑わない女。
対極にいるはずの二人が、欺瞞に満ちた事件の先に辿り着くのは、救済か、それとも破滅か。
「君は嘘がつけない人間だ。だからこそ、僕の隣にいてはいけない」
静かな夜の底で、重なり合う二つの過去。