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🌸番外編「蘭の視点 ― 君を描く理由 ―」
(静かな美術室。筆の音だけが響く)
——最初は、ただの課題だった。 “人物を描く”なんて、何度もやってきたのに。 でも、あの日向を見た瞬間、世界の色が変わった。
……冷静に、そこ塗りすぎだよ。 (そう言って笑った日向の横顔。 その声を思い出すだけで、胸があたたかくなる)
冷静に、なんて言葉。 本当は全然、冷静じゃないくせに。 誰よりも優しくて、誰よりも不器用だった。
(筆を止めて、窓の外を見る)
……ねぇ日向。 もし、私の絵の中で生きることが苦しくなったら—— その時は、無理に笑わなくていいから。 だって、あなたの笑顔はもう、私の中で消えないから。
(雨の音が止む。スケッチブックの中の“日向”が微かに微笑む)
やっぱり、私は描く。 何度だって。 あなたのことを。 私のすべてを、あなたの色で染めるために。
(筆を握る手が、震えながらも優しく動く)