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次の日
空は薄く曇っていて、風も少し冷たかった 家の中には朝から荒れた声が響いている
父親
乱暴に扉が開かれ、レウクラウドの小さな身体が外へ押し出された
レウクラウド
よろけながら地面に手をつく 後ろでは、すぐに鍵の閉まる音がした
母親
笑い混じりの声 それが扉越しに遠ざかっていく レウクラウドはしばらくその場で立ち尽くしていた
帰る場所がない でも、行く場所もない いつものことだった
それでも今日は、ほんの少しだけ違う感覚が胸の奥にあった
……もしかしたら
昨日会ったあの人に、また会えるかもしれない
その小さな希望だけを抱えて、レウクラウドはゆっくり歩き出した 靴底がアスファルトを擦る音 風に混じる潮の匂い
海が近づくにつれて、張り詰めていた呼吸が少しずつ緩んでいく やがて見えてきた波打ち際
レウクラウドは辺りを見回し、小さな声で呟く
レウクラウド
波に消えてしまいそうなほど弱い声 けれど、その声はちゃんと届いた
コンタミ
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
振り返った先にいたコンタミは、昨日と同じように穏やかに笑っていた その姿を見ただけで、胸の奥にあった不安が少しだけ軽くなる
コンタミ
レウクラウド
不安そうな問い “断られるかもしれない”という癖が染みついている声だった
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
コンタミ
二人でゆっくり波打ち際へ向かう 海は静かだった 白い泡が足元を撫でて、すぐに引いていく
コンタミが少し先に足を入れる レウクラウドも真似するように足を踏み込んだ
その瞬間
レウクラウド
小さな悲鳴 身体がびくりと震え、その場にしゃがみ込む
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
水に触れた部分を庇うように抱える コンタミはすぐに膝をつき、そっと足元を見る
コンタミ
服の隙間から見えた皮膚に、コンタミの表情が静かに変わった
赤黒い火傷の跡 青紫の痣 それも一つや二つではない
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
隠すように身体を縮める コンタミは少しだけ間を置いて、優しく尋ねた
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
きょとん、とした顔 その反応に、コンタミは目を細める 本当に知らないのだ 自分がされていることの名前を
コンタミ
レウクラウド
小さく頷く
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
コンタミ
レウクラウドは俯いたまま、小さな声を続ける
レウクラウド
レウクラウド
その言葉は、あまりにも痛々しかった
“暴力=愛”
そう信じ込まなければ、生きてこられなかったのだ コンタミの笑みが静かに消える
コンタミ
レウクラウドが顔を上げる
コンタミ
コンタミ
レウクラウド
否定しようとした瞬間 コンタミの手が、そっと頭へ伸びた その瞬間だった
レウクラウド
身体が大きく震える 反射的に頭を庇い、肩を縮こませる 呼吸が乱れ、瞳が恐怖で揺れる
レウクラウド
謝罪
触れられる前に謝る癖 そうすれば少しは痛みが減ると、身体が覚えてしまっている
コンタミ
その姿に、コンタミはほんの少しだけ目を伏せた そして
今度は本当に壊れ物を扱うように、ゆっくりとレウクラウドの頭を撫でる レウクラウドの身体がびくりと揺れる けれど、痛みは来なかった
怒鳴り声もない 代わりにあったのは、温かい手だった コンタミはそのまま、そっとレウクラウドを抱きしめる
コンタミ
コンタミ
コンタミ
優しい声 責めない声 そこには“恐怖”がなかった
コンタミ
まるで、“ここは安心していい場所だ”と教えるように 何度も何度も、甘く穏やかな声が降ってくる
レウクラウドの唇が震えた そして次の瞬間
レウクラウド
堰を切ったように泣き出した 今まで押し込めていたものが、全部溢れていく
コンタミ
コンタミは急かさなかった ただ背中を優しく撫で続ける 波の音だけが静かに二人を包んでいた
どれくらい泣いただろう やがてレウクラウドの呼吸が落ち着き始める
コンタミ
レウクラウド
離れたくない そんな感情が初めて胸に生まれていた
コンタミ
コンタミ
レウクラウドは小さく頷く そして、とてとてと歩き出した 帰る場所は怖いまま 何も解決していない
それでも 胸の奥に、ほんの少しだけ温かいものが残っていた
“痛くない手”を知ってしまったから 海風が背中を押す レウクラウドの足取りは、昨日より少しだけ軽かった
次回
600❤️