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それはいつもと変わらない仕事のはずだった
紡
夜の観測施設には他にも出勤者がいた。計器の前に立つ者、屋外を巡回する者。空はいつも通り暗く、異常を示す警報も鳴っていない。
紡
それでも、紡は見た。
💫キラッ
視界の端で、ひとつ。 大きくはっきりとした光。
紡
周囲を見回しても、誰ひとり反応していない。
紡
紡
紡
タカ
紡
自分にしか見えていない。 その事実のほうが、光そのものより奇妙だった。
紡
紡は恐怖より好奇心が勝り無線も取らず、代わりに足を動かした。
紡
紡
立ち入り禁止区域の丘の上に、人影があった。
紡
夜なのに影を持たない形で、紡の目には男のようなシルエットに見えた。彼は、光る何かを手にして、それを取り入れている。
紡
辺りは昼のように明るく池の水面が白く照り返し、光が収束していく。その瞬間。
カイ
紡
目が合った
紡
男が紡を見る目は、人間を初めて見る目じゃなかった。
カイ
光が完全に消えて、夜が遅れて戻ってくる。
カイ
紡
反射的に周囲を見る。風の音。遠くの車。夜の匂い。だが男の唇は、動いていない。
紡
紡
その時、光が揺れた。
紡
丘の下、池の縁をなぞるように白い円が行ったり来たりしている。
紡
紡
紡
紡
距離を詰めて掴んだ手は明らかに人間の体温ではなかった。
カイ
タカ
紡
紡
紡
タカ
紡
タカの足音が遠くなっていく。つい気になって隣にいる男を見てみる。
紡
カイ
紡
カイ
紡
やがて目が合う。夜の月に照らされて男の目がキラリと光ったように見えた。
紡
紡
紡は手を引き駐車場に停まる自分の車に乗せる。
紡
紡
紡
カイ
紡は後ろ髪を引かれる思いで1度施設へ戻った。
紡
3:03am
勤務時間が終わり紡は足速に車に乗り込む。
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
紡
カイ
エンジンをかける。 夜の音が戻ってくる。
紡
車を出しながら、横目で見る。 男は静かに窓の外を見ていた。
紡
ネオン、信号、看板.. 全てを、記録するみたいに。
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
紡
紡は帰り道の見える看板や店舗の名前を見て走る。
紡
紡
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
ガチャっ
紡
紡がそう言って、靴を脱ぐ。 振り返るとカイは一歩手前で止まっていた。
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイは自分の足元と紡の足元を見比べてから靴を脱ぎ、上がった所のマットに足を置いて靴を揃えた。
紡
カイ
紡
ガチャっ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
ぴた..🦶
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
リビングにあるソファを指差し座らせる。
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
🚿シャーーー
紡
紡
紡
紡
紡
他にも目を閉じて考えれば考えるほど、落ち着かなくなる。 湯気の向こうで、胸の奥がざわつく。 その時。
カイ
紡
振り向くと、バスルームの中にカイが立っていた。 ドアは閉まっている。 足音も、気配もなかった。
紡
慌てて身体を隠すと、カイはすぐに視線を逸らす。
カイ
紡
カイの表情が、少し困ったように歪んでいた。
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイが振り向きかけて、すぐにやめる。
紡
カイ
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
シャワーが終わり部屋で待ってるようにと紡が言うと、素直に脱衣所からいなくなっていた。
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイは立っていたが紡はベッドに横になる。
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
カイ
紡
カイ
理屈は相変わらずずれているのに、声は穏やかだった。
紡
カイ
数分後
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
すると、カイはそれ以上何も言わなかった。
紡
カイ
いつの間にか、紡の意識は沈んでいく。
〈記録:休止行動の観測〉
カイ
カイ
カイ
カイ
<安全だと判断してる>
カイ
カイ
カイ
<結論>
カイ
カイ
カイ
<補足>
カイ
カイ
<記録、終了>
10:33am
近すぎる距離。 触れそうで、触れていない肩。
紡
カイ
目があったままお互い動かない。
紡
朝と昼の間の光が、カーテン越しに滲んでいる。 さっきまで夜だった部屋が、何事もなかった顔をしているのが余計に気まずい。
紡
カイ
紡はゆっくり体を起こし、無意識に掛け布団を引き寄せる。 距離ができる。 それを見て、カイも同じタイミングで少し身を引いた。
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
一瞬、言葉が詰まる。 それをごまかすみたいに紡は立ち上がった。
紡
カイ
紡が顔を洗ってる間にカイはソファに座った。
紡
紡はキッチンに向かい、コップに水を注ぐ。 その背中に声が飛んできた。
カイ
紡
カイ
ゴクッゴクッ..
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
カイが立ち上がる。 一歩、近づいて。 半歩、戻る。
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
📱Prrrrr..
カイ
紡
カイ
紡は咄嗟にカイの唇に人差し指をくっつけて黙らせた。
紡
タカ
紡
カイ
タカ
紡
タカ
紡
タカ
紡
紡
プツッ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
観測施設の屋上は、風が低く唸っていた。 紡はいつもの手順で望遠鏡の角度を微調整する。 無駄のない動き。何百回も繰り返してきた所作。
カイ
紡
カイ
カイは星を見ていなかった。 正確には、星も視界には入っている。 でも焦点はそこじゃなかった。
カイ
紡の横顔。 暗闇に沈みきらない輪郭。 星明かりが、まつ毛の影を落としている。
カイ
小さく呼ぶ。 仕事中だと分かっているから声量を抑えた。
紡
カイ
紡
セッティングが終わり星を見るのと話す余裕が生まれた。
紡
カイ
カイは言われても星を見なかった。 彼にとって星は情報の集合体だった。 光度、距離、寿命、質量。 どれも容易く解析できるものだったからだ。
カイ
なぜ、寒いのに外に立つのか。 なぜ、眠いはずなのに目を輝かせるのか。 なぜ、こんなにも無防備に夜に身を預けるのか。
カイ
言いかけて、止める。 仕事中に遮るのは非効率だと学習した。
紡
紡が望遠鏡を覗くときの呼吸。 メモを取る指の速さ。 寒さに耐えるために無意識に肩をすくめる癖。
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡は笑ってそう言って、 望遠鏡から目を離さなかった。
カイ
声は平常。 でもほんの少しだけ早い。
カイ
紡
カイ
紡
紡はメモを取りながら、ペン先に意識を集中させる。 星の位置。 時間。 数値。 なのに、頭の片隅でさっきの言葉が反芻される。
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡は今度こそ、はっきり顔を赤くした。
紡
カイ
紡
夜空は静かだった。 星は何も知らない顔で瞬いている。 でも、紡は思った。
紡
紡
カイ
1度、2人は中に戻って紡が温かいコーヒーを淹れたりパンを食べたり過ごした後、少ししてカイは再び口を開いた。
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡は思わずカイを見てしまう。
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイの表情にわずかな遅れが生じた。 処理落ちみたいな、沈黙。
カイ
カイ
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイ
カイ
紡
紡
その夜、カイは1つ宇宙にはなかった概念を手に入れた。
"照れる"は、相手がいることで得る感情
紡
紡は星図を閉じて、少しだけ首を傾けた。
紡
カイは一瞬、瞬きをする。 考えるというより記録棚を探るような沈黙だった。
紡
カイはその指先を目で追って空を見る。 少し困ったような、でも隠す気もない顔で。
カイ
紡
カイ
紡は小さく吹き出した。 "静かに到達" 結果は、紡の部屋で同居してるわけだけど。
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡が照れ隠しに視線を逸らすと、カイはまた1つ学習した顔をする。
カイ
紡
そう言いながら、紡はもう1度空を見る。 あの場所から降りてきた存在が今は隣に立っている。
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
紡
数時間後
紡
業務端末を閉じ、夜の星観測は終わりに残るのは淡々とした報告書だけ。
カタカタ.. カタカタ..
数値、軌道、異常なし。 感情の入り込む余地はないはずなのに、指先は少し遅れる。
紡
送信完了。 紡は背伸びをして、椅子から立ち上がった。
紡
カイ
紡
カイ
夜勤専用の寮の敷地内は、街灯の数も最低限で静かすぎるほど静かだった。 1人1人が独立した小さな建物で、間隔も広い。 騒音も干渉もない代わりに孤独には慣れる必要がある。 ガレージ付き、というのはその中でも少し贅沢な仕様だった。
紡
カイ
紡
カイは一瞬、瞬きをする。
カイ
紡
紡は言いながら自然と夜空を指差す。 正確には、そこから少しズレた位置。
紡
カイ
拒否か、条件提示か、どちらかが来ると思った。 でもカイは、静かに首を傾けただけだった。
カイ
紡
カイ
そう言った直後、空気が変わった。 音はない。 光も派手じゃない。 ただ、ガレージの奥の“何もないはずの空間”がわずかに歪む。
紡
水面に指を落としたみたいに、輪郭が揺れて、 そこに“形”が生まれた。 金属なのに、有機的。 宇宙船なはずなのに、どこか生き物みたいで、 色は夜空を切り取ってそのまま固めたようだった。
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
紡はスマホでバイクを検索して、その画面をカイに見せる。
カイ
紡
カイは目の前の移動体の形をいとも簡単に2人乗りの大型バイクに変えた。
紡
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
カイ
紡
カイは一瞬だけ高揚する紡を見る。 視線が、脚、距離、重心を測るみたいに。
カイ
紡
言いながらも、紡は覚悟を決める。 浮いているそれに足をかけた瞬間、ぞくりとした。
紡
紡
シート部分は硬いはずなのに、体重を預けると微妙に形を変えて馴染んでくる。
紡
その背後に、気配が近付いた。 次の瞬間カイが当たり前みたいに後ろにまたがった。
紡
紡が振り向くより先に、腰の横に腕が通る。 その手は紡の前方グリップを握った。
紡
ぎゅっと抱きしめるわけでもなく、 でも逃げ道を塞ぐように、自然に。
カイ
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
腕の位置。背中に伝わる体温。 密着しているのに、不思議と嫌じゃない。
カイ
紡
紡
ガレージの外。 ど深夜とはいえ、人の気配はゼロじゃない。
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
ハンドルというハンドルではないものの、手の置けるところはそこしかなかった。
きゅ..
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
次の瞬間。 浮いていた移動体が滑るように前へ出た。
紡
反射的に身を固くする紡を、カイの片腕が即座に引き寄せる。
カイ
紡
カイ
ガレージの出口の境界線を越えたはずなのに、夜景が“流れる”感覚すらない。 次の瞬間には、もうそこにはなかった。
紡
カイ
紡
カイ
紡
カイ
紡
その瞬間、移動体が応えるように角度を変えた。 カイの腕が無言でそれを支える。
カイ
紡
紡
紡
カイ
紡
紡
カイ
海の上で、移動体は静かに浮いていた。 進んでいるはずなのに、波も、月も、同じ距離に留まっている。
紡
カイはすぐには答えない。 代わりに、ハンドルに重ねた手の力をほんのわずかに抜いた。
カイ
紡
紡の背中が、ほんの数センチ後ろへ傾いた。
カイ
紡
カイ
その言い切りに、紡は小さく息を吐いた。 そして今度は意識して、もう少しだけ体を預ける。
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
カイ
カイ
紡
カイ
紡
紡
カイ
進みたい方向。 月じゃなく、その手前の海のひらけた暗さへ。 考えた瞬間。 移動体が、すっと応えた。
紡
カイ
紡
慣れてきてから人というのは何かしらのミスが起きる。紡も例外でなかった。
紡
紡
カイ
高さが出たところから海に落ちていく軌道だった。
紡
カイは静かに紡の手の上に重ね、思念を上書きするように軌道修正をする。 移動体は簡単に落ち着きを取り戻し平常に戻る。
ドッ ドッ ドッ
紡
紡
カイ
紡は、カイの胸元に背中を預けたまま目を擦り細めた。
紡
カイ
紡
紡
紡の頭が、わずかに横へ傾く。 カイの胸に完全に重心がかけられた。
紡
瞼が、ゆっくり閉じていく。
カイ
カイは眠りかけの体温を感じながら、速度をさらに一定に保つ。 起こさないように。 離さないように。
夜は、いつの間にか終わっていた。 移動体は紡の家の前で音もなく消える。
カイ
カイ
抱き上げると、思ったより軽い。
カイ
部屋に入れて靴を脱がせ、着ていた物を脱がす。 起こさないように。 呼吸の邪魔をしないように。
キュッ、スー..
カイ
カイ
ベッドに横たえた後、毛布をかける。 紡の呼吸が一度だけ乱れてすぐに戻った。
カイ
カイは、少し距離を取って横になった。
カイ
それを確認してからカイは動かなくなる。 無に近い状態。 思考は、必要最低限しか稼働していない。
......はずだった。
視界の端で、紡の胸が上下するたび内部で、わずかなノイズが生じる。
カイ
紡は寝返りも打たず、静かなまま。 起きない。
それなのにカイの内部では、何かが“終了しない”
カイ
カイは視線を外さずそのまま横になっている。
カイ
この状態を、終わらせたくないという判断が内部に生成されていた事。