ユウゴ
目覚めると、全身汗だくでベッドの上で横になっていた。
シャツやパンツどころか、パジャマまでが肌に張り付いていて、気持ち悪い。
時計を見ると朝6時のちょっと前。
普段起きる時間よりは早いけど、二度寝する気分にはなれない。
タンスから着替えを出すと、シャワーで汗を流すためにお風呂に向かった。
体を洗って着替えてからリビングに行くと、母さんがキッチンから顔を出して迎えてくれた。
母
ユウゴ
魔物犬に咬みつかれ戦闘不能になったぼくは、気がつくと自宅に帰っていた。
未クリアで退学になったからだ。
アルク達と別れのあいさつをすることもなく、アミキティア魔法学校を追い出された。
魔法使いの資質のない者は必要ないということだろう。
ぼくがアミキティア魔法学校で生活していた2ヶ月間は、海外留学していたことになっているらしい。
入学する時と同じく、ガイド妖精による洗脳か何かだろう。
シシロウが太平洋に浮かぶ人工島だと言っていたから、海外の学校であること自体はウソじゃないか。
家だけでなく、学校や習い事で行っている習字教室も同じだった。
おかげで何の不都合もなく、元の生活に戻ることが出来た。
今までと同じく学校に行き、
今までと同じ友達と遊び、
家に帰ればゲームをしたりアニメを見たり。
何もかもが元に戻った。
アミ戦で他の生徒と戦うこともないし、魔法訓練もないし、人工魔物《イミテーション》もいない。
もう怖い思いをしなくてもいいんだ。
そう自分に言い聞かせて、ぼくは日常に戻った。