TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)

16時28分…

目的の人物は必ずここに現れる…

今日が決着をつける日だ…待ってろよ……

相原 澪

いや待ってんのは こっちやけど

山川 のぞみ

どうしたの急に

相原 澪

頭ん中で刑事ドラマごっこやってたらテンション上がって

山川 のぞみ

刑事ドラマごっこやる時点で充分テンションあげあげだよ

土曜日。晴天。 絶好の待ち伏せ間違えた行楽日和。

____孝太君が修学旅行で京都まで行くと知った私は、無意識にスイーツ巡りの計画を立て無意識にバイトのシフトを増やし

無意識に修学旅行と同じコースを選び無意識に中学生の集団が通る場所で待ち伏……休憩することになった。

無意識ってすごい。 私は手鏡を取り出して身だしなみを整えた。もちろん無意識で。

腕時計の針が4時半を回った頃___京都の街に学生服の集団が現れた。 私は無意識に前のめりになる。

目的の人物を視界に捉えた!K君と行動を共にしている模様! 私は のぞみの背中をバシバシ叩いた。

相原 澪

のぞみ。あれ。あれ見て。柚月君と孝太君やんか。偶然やな めっちゃたまたまやん こんなことあんねんな(棒読み)

中学生集団はこの辺りでお土産を買っていいと言う規定らしい。それぞれ財布を片手にグループを編成し散らばっていく。

__どのお店に入ろうかと辺りを見渡していた孝太君と目があった。 決っっして私に下心があってずっとそっちを見ていたとかそんなんじゃない。

孝太君は隣でパンフレットを眺めている柚月君の肩を叩くと私たちの方を指さした。

相原 澪

ちゃんといつもの感じで笑って手とか振っとき。そんでその後ラインしたら大丈夫やから

山川 のぞみ

う、うん…

さすがに緊張してきたらしいのぞみに私は早口で言い添えた。

__パンフレットから顔を上げた柚月君は孝太君の視線をたどり___顔を強張らせた。

私の隣でぎこちない笑みを浮かべた のぞみが手を振るより先に___ 柚月君が顔を背けた。

再びパンフレットに視線を落とした柚月君は もう顔を上げようとはしなかった。 のぞみも俯いてしまう。

あー…… あー…これは思ってた以上に……

これまで成り行きを見ていた孝太君が目で「どういうことだ」と訊いてくる。

中学生が大勢いる中で声を大にして説明するわけにもいかないので………頑張ってジェスチャーで説明した。伝われ。

私の精一杯のジェスチャーを見た孝太君は、顎に手をあてて めっちゃ真剣な顔で考え込み始めた。 あー絶対伝わってへんわ。

孝太君には全部解決してから説明するとして、とりあえず「偶然を装おって待ち伏せ作戦・応用編」が失敗したので次の手を考えないといけない。

どうしたものか……と辺りを見渡した私は 100メートルほど離れた場所に立つ ある人物を見つけた。

のぞみと同じ学部の柴本とか言う人だ。仲違いの原因になった人。

そもそも初めて見た時から のぞみに接する態度に引っかかる物があった。

のぞみは優しいから元カレの時みたいに勘違いしているのかもしれない。

件(くだん)の柴本君は のぞみ……ではなく中学生集団を凝視している。__と、思ったら踵を返して視界から消えた。

相原 澪

___のぞみ。まだ泣いたらあかんで

相原 澪

柚月君はのぞみを嫌いになったわけじゃない。どんな顔したらいいか分からへんだけや。中学ん時の私みたいに

相原 澪

だけど柚月君は悪くないしのぞみも悪くない。元カレの時と一緒や

相原 澪

____だからちょっとだけそこで待ってて

のぞみの中の「一番」に勝てる男の人なんていない。 私はそれをよく分かってるから教えてあげないといけない。

私は柴本君が消えた方向に走り出した。

泣くな泣くな。

澪だって言ってた。 柚月君は私に合わせる顔が無いだけ。嫌いになったわけじゃない……はず。

それでも鼻の奥がツンとするし吐き出す息も震えているのが分かる。 _____誰かが私の肩を叩いた。

山川 なごみ

フラれちゃったねのぞみん

澪が帰って来たのかと顔を上げたけどすぐに元に戻した。 お姉ちゃんはそんな私にお構い無しに楽しそうに話続ける。

山川 なごみ

やっぱり私の睨んだ通り彼氏君とトラブったんだ

山川 なごみ

なんてったって6歳も離れてるからね~。友達付き合いとかだったら まだ分かるけど交際ってなるとやっぱりね~…

山川 なごみ

でも柴本君はその点大丈夫だとお姉さんは思うよ。
優しいお姉さんからのアドバイス☆

山川 のぞみ

……なんで柴本君のこと知ってるの

肩に置かれたままのお姉ちゃんの手を払うと下を向いたまま尋ねた。 涙はもう出て来なかった。

山川 なごみ

え~だって私が教えてあげたんだもん。のぞみんは週末京都に行くよって

山川 なごみ

のぞみんが彼氏君とトラブってるってことも教えてあげた☆
柴本君も今京都に来てるから、もしかしたら告白とかされるんじゃない?

山川 なごみ

そしたらまた実家に帰ろうね☆今度は柴本君を連れて☆

山川 のぞみ

…………っ

山川 のぞみ

……なんでそんなことするの…出来の悪い妹をいじめるのが そんなに楽しい……?

山川 なごみ

いじめるなんて人聞きが悪いな。お姉さんは のぞみんの為を思ってやってるんだよ?

ぱちん と音がした。 私の中で泡が弾けた。

目の前で無数の泡が弾けていく。視界が霞んだ。

山川 のぞみ

いつもいつも土足で踏み込んで引っかき回すのが「私の為」なの?「優しい」お姉さんがすることなの?

山川 のぞみ

私は柚月君と一緒にいたいの…。お姉ちゃんには もう素敵な旦那さんがいるでしょ

山川 のぞみ

勉強も運動も料理も出来て、顔が広くて、英語も話せて、超が付く一流企業勤めで、お洒落なマンションで暮らしてて

山川 のぞみ

私なんかとは比べ物にならないほど恵まれてるじゃない……!
もう ほっといてよ……少しは下に立つ人のことも考えてよ

山川 なごみ

__________恵まれてる……?

お姉ちゃんにしては長い沈黙の後の返答だった。 お姉ちゃんにしては投げやりな口調で

お姉ちゃんにしては冷たい声だった。

十数年お姉ちゃんの妹をしてるけど、初めて聞く声で、思わず顔を上げてしまった。 いつも笑顔を絶やさないお姉ちゃんだけど、全く笑っていなかった。

山川 なごみ

私が?本気で言ってるの?

山川 なごみ

...
のぞみ は

山川 なごみ

何にも分かってないね

お姉ちゃんの綺麗にセットされた長い髪が風に吹かれて顔にかかった。 お姉ちゃんは乱暴に髪を払うと大きく息を吐いた。

山川 なごみ

得してるのは のぞみの方だよ。私は小さい頃からいろんな物を犠牲にして来た

山川 なごみ

見たかったテレビ番組もラスト1個になったプリンも
全部「お姉ちゃんだから」を理由に のぞみの物になった

山川 なごみ

両親も近所に住む人も学校の先生も、私が我慢して頑張ることが当然だと思ってる

山川 なごみ

「お姉ちゃんだから当然だね」「この調子で頑張ってね。お姉ちゃんだから」

山川 なごみ

私が結婚した時もそう。周りは「あの人は駄目だこの人にしなさい」とか散々口出しして来たくせに

山川 なごみ

のぞみには二つ返事でで中学生との交際を認める。私は「お姉ちゃんだから協力しろ」って言われる

山川 なごみ

「のぞみが失恋した。お姉ちゃんだから慰めてあげて」「料理出来ないのぞみの代わりにお弁当作ってあげて。お姉ちゃんだから」

山川 なごみ

お姉ちゃんだからお姉ちゃんだからお姉ちゃんだから!
___これのどこが恵まれてるの

そう吐き捨てるように言ったお姉ちゃんの声が震えた気がした。 空気を抜いた風船のように私の感情も声も萎んでいく。

山川 のぞみ

……分かってる。お姉ちゃんが知らない所ですごく努力してて周りの期待に応え続けてるって

山川 のぞみ

親が柚月君との交際を認めてくれたのも今まで積み重ねて来たお姉ちゃんの頑張りがあったから

山川 のぞみ

私はお姉ちゃんって言う存在の上で胡座(あぐら)をかいてるだけってこともちゃんと分かってる

お姉ちゃんの声音が優しい物に変わった。 幼い子供を諭すような声で「でもね、」と続ける。

山川 なごみ

___私はのぞみを大切な妹だと思ってる。幸せになって欲しいって思ってる

山川 なごみ

彼氏とは別に仲の良い男友達がいるなんて珍しいことじゃない。その程度で拗(こじ)れるんなら長続きしない

山川 なごみ

どうせ口で言っても聞かないんだろうから回りくどいけど効果的なやり方で教えてあげたの

山川 なごみ

私はのぞみんのお姉ちゃんだから

山川 のぞみ

………っ

山川 のぞみ

でも…でも私は………っ

お姉ちゃんから受けて来た恩恵はたくさんある。 __でも それとこれとは話が別だ。

私にも譲れないものがある。

頭の悪い私は感情だけが先走りしてしまう。すぐに言葉に出来なくて黙り込むと___

ねぇお姉ぇさんたちぃ~~

粘着質な声が割り込んで来た。チャラチャラじゃらじゃらした男2人がニヤニヤ笑いながら立っている。

どしたん?なんかシンミョーな雰囲気だけどぉ~ケンカちゅ~~?

だったらさぁオレたちと遊ぼーよ。オレたちここらへんめっちゃ詳しいからぁ超エンジョイ出来ちゃうよ?

お姉ちゃんが小さく舌打ちした。私もようやく面倒臭いことになったのだと自覚する。

山川 なごみ

__ごめんなさい。そういうの結構だから

あれぇっ!よく見たらお姉ぇさん指輪してんじゃん!もしかして既婚者?

マジかよ。あと1年出会うのが早かったらなぁ!___そっちのお姉ぇさんは?

山川 のぞみ

……え。あ…

ここで私も「結構です」と言うべきだった。咄嗟のことで反応出来ずにいた私に男2人は狙いを定めたようだ。

指輪してない!独り身っしょ~?

てか歳オレらと変わらなくね?大学生くらい?とりまカラオケ行こうよ

山川 のぞみ

いや、あの

いーからいーから。絶対楽しいから

手ぇ出したりしないからさ~

と、言いながらも男は私の手首を掴んで来た。本格的にヤバいと感じた。

山川 のぞみ

ちょっと……

思いっきり叫んでやろうと息を吸い込みかけた____

鳴沢 柚月

やめてください

鳴沢 柚月

僕の彼女です。手を放してください

女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

534

コメント

7

ユーザー

きたきた柚月くんー!😭✨ ギクシャク中だろうが、ピンチのときにはちゃんと救ってくれるところが最高にかっこいいし可愛いですね☺️   なごみさんはやっぱり、のぞみさんのことをちゃんと好きだったんですね お互いに相手のことが羨ましいのって、兄弟あるあるですよね…

ユーザー

お姉ちゃんだからって色々なことを我慢しなければいけなかったなごみさんの気持ちもわかります...が!しかし!柴本君を京都に連れてくるっていう理由にはならないぞ!(たぶん)(おそらく)(きっと) そしてラストの柚月君にズキュンってされました。 きっと柚月君もずっとモヤモヤしていて、のぞみさんが男性に絡まれてるのを見て自分のホントの気持ちに気付いたんだと...うわ、尊いですね

ユーザー

Q「サブタイトルの横の数字ってなんですか?」 A「漢数字は【第〇章】、丸で囲った数字はその章の話数を表しています。【第○章第□話】と そういう感じです。深い意味はありません。格好よさげだからです」 次回も1週間後に更新予定です!読んでくださりありがとうございました❗

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store