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羽海汐遠
16,054
57
みみ
27
???
訓練場前。 そこには、地面に額を擦り付けんばかりの勢いで頭を下げている、一人の下級悪魔の少女が居た。
その姿に、三人は思わず顔を見合わせる。 管理者に元管理者、それから庭師を見た瞬間に痴態を晒す悪魔など、かつてあっただろうか。いや、ない。
──悪魔の名を、リリンと言う。
ヤーシャ・リアット
ヤーシャ・リアット
リンナ・フィン
そして、真っ先にベネリM3を取り出したサザンカが訓練場へと入り、リリンの居る中央へと歩み寄る。
彼女は、銃口を向けながらリリンに問いかけた。
サザンカ
サザンカ
頭上から降ってきたサザンカの声に、リリンは顔を上げる。 しかし、サザンカが銃口をこちらへと向けてきていること、いつでも自身を撃ち抜けることに気付いたのか、リリンは「ひいっ!」と頼りない声を上げた。
また地面に頭を擦り付けながら命乞いをする。 随分情けない悪魔だ。これならまだサザンカの方が逞しく生きている。
リリン
リリン
リリン
サザンカ
ヤーシャ・リアット
リンナ・フィン
リリンの必死の命乞いに、三人はまた顔を見合せた。 この下級悪魔をどうするか。盗んでいないとはいえ、ただ見逃すだけではまた悪事を働く可能性が高い。
では犯罪者達と同じように地下牢に入れるのが良いだろう。 この庭園の地下にはそのような設備があるし、過去にも盗みに入ってきた盗賊を捕まえて檻の中に放り込んだことがある。
……ほぼサザンカが。
分かりました、とサザンカが呟くと、リリンはぱっと顔を上げた。そこには隠しきれない安堵が滲んでいる。
サザンカ
サザンカ
ヤーシャ・リアット
サザンカ
リンナ・フィン
サザンカ
そして、リリンは窃盗未遂で逮捕され、リンナに連れられて地下牢へと送られていった。
……さて。問題は離れてしまった戦士や客人達の転移先だ。 サザンカらは運良く庭園の敷地内に飛ばされたが、もしかすると危険な場所に転送された者が居るかもしれない。
彼らとの合流、そして庭園内の害虫の対処が最優先だ。
サザンカ
サザンカ
ヤーシャ・リアット
ヤーシャ・リアット
先程まで居た庭園の正面の方向から、害虫達が羽をはためかせ耳障りな羽音を響かせながらもこちらへと向かってきていた。
その姿を認識した瞬間、サザンカとヤーシャはそれぞれ武器を握る。
遠くから花の香がしたような気がした。 リリンを地下牢へと送ったリンナが、害虫達に気付いて能力で処理をしているのかもしれない。
ヤーシャ・リアット
ヤーシャが刀を地面に突き刺す。すると、それを中心に半径20m以内にドーム状の結界が構築された。ヤーシャの能力のひとつ、【刀詠結界】である。 彼女の分身が現れ、分身は害虫に対して駆けていく。そのまま跳躍し、飛んでいる害虫を突き刺して地面へ墜落させた。
結界の恩恵は味方であるサザンカにもある。 集中力が上昇し、目の前の害虫の動きが遅くなったような気がした。そのまま、サザンカは害虫のの脳天を狙って引き金を引く。
引き金を引く度に害虫が倒れる。普段の射撃精度にも目を見張るものがあるが、結界のバフによって上昇したそれは驚異的なものだった。
ふと、サザンカの視線の少し先で薔薇が散った。 リンナの能力【ブルームブレード】だ。リリンの護送から戻ってきたのだ。
リンナ・フィン
サザンカ
サザンカ
ヤーシャ・リアット
庭園の元管理人、庭師、そして現管理人が並ぶ。 目の前に居る無数の害虫すら、彼女らの敵ではない。どれ程早く全てを片付けられるか、それだけが問題だった。
歴戦の上級戦士達のように戦場で経験を積んでいるわけではない。しかし、彼女らが武器を持つ手、その背中には頼もしさがあった。
害虫の中には、先程見たような植物と融合した見た目の個体も居た。が、その大きさは通常の個体ほどだ。 茨が三人に伸び、それをヤーシャの生成した分身が斬った。
サザンカ
ヤーシャ・リアット
リンナ・フィン
ベネリM3で害虫の頭部を撃ち抜いたサザンカが言う。 害虫の核が露出すると、伸ばしていた茨の勢いが目に見えて衰える。その隙を見てリンナが剣で切り込んだ。
茨を斬りながら害虫に急接近したリンナ。 その剣が花を纏った。比喩などではない。リンナの持つ能力【フローラル・ヴァインソード】の効果だ。
【フローラル・ヴァインソード】が発動した瞬間、剣は見惚れるほどの綺麗な花を纏い、その香が周囲へと漂う。
美しい花の剣が、穢れた害虫の核を斬った。
リンナ・フィン
ヤーシャ・リアット
サザンカ
ヤーシャ・リアット
三人が戦っていたその一方。
ローゼの【瞬間跳躍】によって飛ばされなかったヴィアは、その場でローゼと対峙していた。短剣を手にローゼを警戒するヴィアとは対照的に、ローゼは微笑を浮かべたまま佇んでいる。
ローゼ
ローゼ
ヴィア・クォーツ
ローゼ
くすりと笑うローゼ。それを見て、ヴィアはさっきから頭の中に浮かんでいた疑問を口にした。
ヴィア・クォーツ
ローゼ
ローゼ
……そういうことではない。ヴィアは眉を顰めた。 そもそも、彼女の目的が読めない。「話したい」とは言っていたが、ただの話し合いに弓矢は必要ないのだ。
それでも、彼女は弓矢を構えたまま居る。
ヴィア・クォーツ
ローゼ
ローゼ
ヴィア・クォーツ
ヴィアがローゼの言葉を繰り返すと、ローゼは満足気に頷いた。 そして、彼女は宙に向かって矢を五本放つ。それを、【瞬間跳躍】で移動させた。
ローゼ
ローゼ
ローゼは相も変わらず笑みを浮かべている。 ヴィアは周囲を見回した。風が起こり、一本の矢がこちらへと向かってきていることを視認する。それを短剣で斬った。
また矢が向かってくる。二、三、四。 それから数秒が経っても、五本目はすぐに飛んでこなかった。
その時──
ヴィア・クォーツ
ヴィア・クォーツ
ローゼ
時間を置いて、ヴィアの背後から襲いかかってきていた五本目。それすらも見切り、ヴィアは全ての矢を斬った。
ローゼ
ローゼ
ヴィア・クォーツ
ローゼ
矢を完全に斬ったヴィアを見て、ローゼはわざとらしく拍手をする。ヴィアが本題に入ることを促すと、ローゼはコホンと咳払いをして続けた。
ローゼ
ローゼ
ローゼ
ローゼ
ヴィア・クォーツ
ローゼ
ローゼ
その言葉を残し、謎の淑女・ローゼは消えていった。 【瞬間跳躍】を使用したのだろう。なんの痕跡も残っていない。
庭園の中央には、静寂だけが残った。
ヴィア・クォーツ
地下のような場所に飛ばされたサウカとアスターは、そのまま地下の探索をしていた。通路を奥へ奥へと歩いていたアスターが、ふと立ち止まる。
アスター
サウカ
サウカ
二人の目の前に巨大な鉄扉が現れた。 それには幾重も鎖が巻かれ、厳重に管理されている。ただの庭園に存在している扉としては異常すぎた。
地下の冷えた空気が体を冷やしていく。 冷たくなってきた指先で、アスターが鉄扉に触れた。扉の状態を、鎖の状態を確認する。
アスター
アスター
サウカ
サウカ
開けようにも鉄扉は扉に施された施錠と鎖でびくともしない。 この地下にはその扉しか無く、その扉も開かないためこれ以上の探索はできそうになかった。
サウカ
アスター
庭園の外では、フォーリーフが加わった三人で害虫との長期戦を強いられていた。その数は庭園内に居た数の比ではなく、長い時間戦っていれば、いくら能力を持つ戦士であろうと疲れが見え始める。
残りの害虫の数を数え、気が遠くなるような思いをしながらも武器を構える。それを何度か繰り返していた時。
ふと、害虫が全て消えた。 倒れて灰になったのではない。消滅反応を起こさず、そのまま丸ごと消えた。
フォーリーフ
テリオス
テリオス
レイン・アミュレット
害虫達がやって来た方を視線で辿っていたフォーリーフには見えた。その視線の奥に、輝きを放つ何かがあることが。
フォーリーフ
フォーリーフ
レイン・アミュレット
テリオス
レイン・アミュレット
三人がその場所へと向かう。 そこにあったのは確かに魔石だった。が、ただの魔石ではない。人間の腰ほどのサイズで、普通の魔石とは比にならない輝きを放っている。
フォーリーフが結界の近くから見ても視認できるほどのサイズと光だったため、説得力はあるが。 不思議なのはこの場所にある理由だ。
フォーリーフ
レイン・アミュレット
レイン・アミュレット
テリオス
レイン・アミュレット
フォーリーフ
フォーリーフ
テリオス
レイン・アミュレット
コメント
2件
今回もめちゃくちゃ良かったです!!!! 鍵と鎖が付いている扉がある地下は… 一度リリンを地下牢へ送って 戻って来たリンナちゃんの様子的に 恐らく同じ庭園の地下にはありますが 別の場所なのでしょうね… 明らかに怪しい魔石がありましたし… 研究所からの伝言的にも、 もしかすると記録などがあった 謎の計画は完成され、 実行が近いのでしょうか… 次回も楽しみに待ってます!!!!
うわっ、今回ヤバかったな!リリンの土下座から始まって、一気に戦闘→ローゼの不気味な忠告→地下の鍵付き扉→超巨大魔石って、情報量エグすぎる。特にヴィアが五本目の矢を背後から来るのに気づいて全部斬ったシーン、めっちゃかっこよかった…!でもローゼの「文明の崩壊は近い」って伝言、研究所って何だよ、気になりすぎる。次回が待ちきれんわ🔥