コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
空は曇っていた。
廃墟と化した遊技場には、誰もいない。
折れた観覧車、壊れたガチャガチャ、色褪せたポップコーンの看板。
音楽も、笑い声も、すべて過去に置いてきた。
だけど、ここにはひとつだけ"生きている"ものがある。
選択肢ーーだ。
地面に、巨大なボタンが三つ並んでいた。
《A:忘れる》《B:許す》《C:終わらせる》
レイ
レイが現れる。
今日は制服姿の私とまったく同じ服を着ていた。
まるで鏡の中のもう一人の自分。
いやーーこの旅の"案内人"は、最初から私自身だったのかもしれない。
レイ
レイは笑いながら言う。
レイ
私はボタンの前に立つ。
それぞれが静かに光っている。
どれも魅力的で、どれも怖い。
レイ
レイが呟く。
私は考える。
忘れたかった、許したかった、終わらせたかった。
何度も何度も。
でも、ここまで来て思う。
私はーーこの感情を、ちゃんと抱えていたかった。
たとえ醜くても、壊れていても、それが「私」だと認めたかった。
だから私は、どのボタンも押さなかった。
ゆっくりと、ポケットからチョークを取り出す。
そして、ボタンの横に新しい文字を書く。
《D:生きる》
レイが驚いた顔をして、それからふっと笑った。
レイ
日向
私は「D」の前に立ち、深呼吸をして、静かに踏み込んだ。
すると、遊技場の空が割れる。
光が差し込み、風が吹き抜ける。
崩れていた世界が、音を立てて再構築されていく。
ここから、何かが始まる。
終わりではなくーー始まりとしての"選択"。