コメント
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いふ
この人間は時々やってくる 俺のおもちゃだ。
悠佑
いふ
悠佑
いふ
俺たちのいう"たかいたかい"は 俺の妖力でその人間を浮かせ、 そこらへんでぐるぐるする遊びのこと
悠佑
俺の手にふわふわと緑の粒が集まり その上に呪文の書かれた札を乗せる
悠佑
そう言うといふの身体を緑の光が 覆った。
いふ
悠佑
だんだんといふの身体が持ち上がる 少し不安定ではあるが、まあセーフだ
いふ
いふ
悠佑
いふはもう木の幹まで飛んでっている
悠佑
いつ見ても、シャボン玉のようで 俺はあまり好きではない
悠佑
いふ
悠佑
いふ
子供とは素直な生き物なようで、 先ほどよりも低空飛行で楽しんでいる
悠佑
悠佑
悠佑
こわれてきえた
悠佑
神社の屋根の上、あくびをひとつ
悠佑
悠佑
気の向くまま過ごしている俺は 先ほどまでのんびり過ごしていた なんか怠いのはそのせいだろう
悠佑
数年経ったのか、はたまた数日か… なんにせよ、あのガキと顔を 合わせたのは最近のことではない
悠佑
人の住める環境と俺の住める環境じゃ 違いがありすぎる。 だから次第に合わなくなっていくのだ
悠佑
思い出にふけいろうとして、 大きな音が思考を遮った
悠佑
夜空に何本もの色とりどりの花が どでかい音を立てて舞っていた。
いふ
ぼーっと神社の屋根の上から 花火を眺めていると 人間が声をかけてきた
悠佑
俺はその子供を見下ろし、 一言つぶやいた
いふ
悠佑
少し距離があり暗がりでもあるため 姿がよく見えない
いふ
悠佑
サラサラの青い髪が印象的で、 声変わりをしたであろう声は低く 男性的である。
いふ
いふ
悠佑
思い出の中に登場していた シャボン玉みたいな綺麗な少年と 目の前に立つ青年と姿を重ねて見る
悠佑
ピースがハマったように頭の中の モヤが晴れていくのを感じた
いふ
悠佑
屋根の上からそのガキの目の前まで 飛び立つ。
いふ
悠佑
俺はゆらりと九つの尻尾を揺らした
いふ
小さく笑うガキは、少しだけ 昔の面影が残っていた
いふ
悠佑
いふ
なんともまあ、大人とは到底 思えない、子供じみたセリフだ
悠佑
悠佑
俺はガキに近づきデコピンをひとつ かましてやった。
いふ
いふ
痛みを堪えた後、額に手を当て、 若干の怒りを含んだ声で叫ばれる
悠佑
いふ
うゔ〜、と呻きながらガキは そっぽを向いて拗ねている。
悠佑
悠佑
そんな純粋な反応をするのが 面白く、拗ねたガキを笑ってやった
いふ
イーッと歯を見せて怒るガキンチョは 子供特有の可愛さがある。
悠佑
悠佑
久しぶりな気がする。
いふ
悠佑
こんなに、笑えたのも、 気分が良いのも、全部
いふ
悠佑
君のおかげやなんて、 絶対言ったらんけど。
いふ
悠佑
いふ
悠佑
あの日、ガキが去っていった日
悠佑
あんまり泣くもんだから、 約束してしまったのだ。
いふ
いふ
俺の膝の上で泣きじゃくっている 困ったもんだと苦笑いをひとつ。
悠佑
諭すように、納得してくれるように 子供が"仕方ない"と思えるように
いふ
小さな弱い音を拾う。 本当はわかってるんだろう
悠佑
理由がわかるほど馬鹿じゃない君。 わかっても一緒がいいとほざくほど 馬鹿なガキ。
悠佑
一つ、提案する 思いつきのものだから、今後のこと なんて何一つ考えちゃいない
悠佑
いふ
自身の唇まで人差し指を持っていき、 唇の端に弧を描くように微笑む
悠佑
悠佑
いふ
食い気味に答えられる 引いてしまいそうになるが、 提案したのは確かに俺だ
いふ
いふ
昔、そう別れる日の前日、 地震があった。
悠佑
いふ
いふ
ガキの家は壊れたが、神の悪戯か 俺の神社は無事だった。 規模は町一つ分の小さいとも 大きいとも言いづらいものであった
悠佑
もともとあまり栄えていなかったのを ここまで人が来るようにしたのだ それなりに思い入れがあったのだろう
いふ
悠佑
そこに俺が絡んでくるとは 思いもしなかった。
いふ
いふ
その先の言葉は、ある程度予想できた
悠佑
だから俺は馬鹿だと笑った
いふ
いふ
心外だと言わんばかりの声量に やっぱり馬鹿だと、 笑うことしかできない
いふ
本気でなんで馬鹿なのか わかっていないんだろうか そこまでこいつは馬鹿だっただろうか
悠佑
俺はにぃっと、悪い笑みを浮かべる
悠佑
いふ
このガキは"キス"という、人生で 何度もするであろう体験(人による)の ためだけにやってきたのだ。それを
悠佑
いふ
生意気な口は キツく結ばれてしまっているようだ
いふ
声量が先ほどと比べ物にならない ほどに小さくなっているが、 俺の耳はしっかり捉えていた。
悠佑
だから意地悪するのだ 可愛いガキを弄ぶために。
いふ
いふ
悠佑
悠佑
開き直って馬鹿正直に話すガキを 見るのは楽しいものがあった。
いふ
いふ
膝を抱えてうずくまってしまった 流石に揶揄いすぎたか?と思い、 いふの方へと近づく
悠佑
瞬間、ガキの瞳が光って 顔を寄せてきて、なにか、 柔らかいものが当たった感触があった
悠佑
初めてにしては慣れている口使いと 見たコトのない獣のような瞳に 圧倒されて突き放すことを忘れた
いふ
いふ
悪戯が成功した子供のように笑う いふは心底嬉しそうで、 なんでか絆されそうになってしまった
悠佑
きっと顔は真っ赤で それが怒ってるからではないのは 俺が一番わかってて。
いふ
小憎たらしいガキは大人になったと 実感してしまったのが何故か、 悔しくって。
悠佑
そんな捨て台詞を吐いた 初夏の話である。