琴音
私が学生の頃の話です。
琴音
私には美術教師として働いている姉がいます。
琴音
姉は寝室、キッチン、リビングルームのある古風なアパートを美術室として借りていました。
琴音
しかし、暮らすためではなく、絵を描くためだけのものです。
琴音
折角借りているのに住まないなんてもったいない!
琴音
そこで「妹の私に部屋を貸して一人暮らしさせてよ」と頼みました。
琴音
一人暮らしの初日。
琴音
わくわくしてアトリエに戻りました。
琴音
姉から「戸締りに気を付けてね」と言われ、帰ってくるとすぐにチェーンで玄関の鍵を閉めました。
琴音
それから夕食を作り、本を読み、初めての一人暮らしを満喫しました。
琴音
気が付くともう真夜中でした。 戸締りやガスの元栓などを再確認し、それから寝ました。
琴音
しばらくして、午前2時から3時頃、玄関のドアが開く音が聞こえました。
琴音
姉が絵を描きに来たかなと思いました。
琴音
こんな時間、まさにワーカホリックだな。
琴音
ウトウトしながらと思うと私が寝ている部屋の隣の部屋に入りました。
琴音
隣の部屋は画材やキャンバスなどを保管する部屋です。
琴音
姉が一人でつぶやいたり笑ったりしていました。
琴音
「やっぱり芸術家と怪しい人って紙一重だよな」
琴音
と思いながらいつのまにか寝ていました。
琴音
朝、目が覚めると姉がいなかった。
琴音
帰ってしまったのではないかと思います。
琴音
私は姉の絵を描く情熱を尊敬するようになりました。
琴音
そしてアパートを出る準備をしました。
琴音
玄関を開けようとしたときに、突然恐怖に襲われました。
琴音
それ以来、私は二度とその美術室に足を踏み入れることはありませんでした…。