コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
主
主
頃
奈々
李依
主
慈慧
爽斗
主
瑠羽
主
頃
爽斗
その瞬間、恋に落ちた 次の瞬間、恋が終わった
なんて綺麗に飛ぶんだろう 彼を見た時そう思った それはとてもよく晴れた日で、 私が見つめていた真っ青な大空に 彼はひらりと現れた
こんなに美しく 自由に 空を飛ぶことが出来る人間がいるなんて その瞬間、恋に落ちた
でも次の瞬間には、 その恋は
終わった
李依
僕の隣に立ち、彼の姿を 真っ直ぐに見つめながら 頬を赤らめて恥ずかしそうに笑う 彼の言葉を聞いてしまったから
僕の恋は、生まれたと同時に消えた しゃぼん玉のように弾けて 空へ消えた それで良かった
僕にとっていちばん大切なのは、
彼だから
李依
そういった彼の後ろにはいつものメンバー、 瑠羽くんと慈慧くんが立っている
頃
特に飲みたいものはないけど 僕だけ買わない訳にもいかないから 紙パックのフルーツミルクを選んだ
李依
李依がにこにこしながら顔を寄せてきたから 僕は「まあね」と笑った
頃
李依
李依は首を傾げる その動きに合わせて ツヤのある髪がさらりと揺れた 色素が薄くて柔らかそうな 綺麗な髪
頃
李依
頃
慈慧
瑠羽
慈慧と瑠羽がおかしそうに笑った
味が好きな訳ではなくて パッケージの組み合わせと 果物のイラストが醸し出す雰囲気が好きなのだ でもそんな理由で 飲み物を選ぶのは変だと彼たちに笑われそうだから 何も言わない
僕達はグラウンドの横を通って教室棟に向かう階段へと向かう
李依
李依が唐突に 恥ずかしそうに言った 瑠羽がぷっと噴き出し彼の方をぽんと叩く
瑠羽
慈慧
慈慧がからかうように言うと 李依は頬を赤らめた
李依
慈慧
李依
李依の顔はさらに赤くなった
李依
意地悪なんだから、と独りごちながら 李依はフェンスの前に立った その目がうっとりと校庭の片隅を見つめている その横顔を見て私は 恋する乙女の目だ と思った
李依
李依はいつものように小さくて叫んだ あの時もそうだったな、と思い出す 僕が初めて恋をして 同時に失恋した日
彼に誘われて一緒に来たはいいものの運動部の練習風景に さほど興味がなかった僕は 何も考えずぼんやりと空を見ていた グラウンドの上に果てしなく広がる 澄んだ青空を その時突然真っ青だった僕の視界に 彼が入ってきた 空に舞い上がる羽のようにふわりと跳び上がった彼の姿が 伸びやかな体をしなやかにひねらせて 軽やかに空を舞うように 目も心も全て奪われて僕のものではなくなった スローモーションで空へと昇っていく 彼の姿を無意識に目で追い ゆっくりと地上へ戻ってくるまで見つめ続けた なんて綺麗なんだろう なんて軽やかに 自由に 優雅に空を舞うんだろう こんなに美しく空を跳ぶ人間がいたなんて 何も言えずに ただひたすら感動していた
彼はポールを持ったまま綺麗なフォームで助走し それを地面に突き立てるようにして 大きくしなったポールの反動を最大限に使って 再び空を舞った 何度も 何度も 黙々と彼は飛び続けた 周りの陸上部員達はお喋りをしたり ふざけあったりしているのに 彼だけはひとり 飽きることなく跳び続けた それだけで その誠実で真面目な人柄がわかる気がした 恋に落ちたと僕は自覚した 一目惚れなんてありえないと思ってたのに 僕は彼を初めて見た瞬間に 彼のことを好きになってしまったんだ そして次の瞬間には失恋した
李依
隣で囁く李依の言葉が耳に入った瞬間に 僕はその恋を終わらせた 彼の姿から目を背けて もう二度と見ない そう心に決めた
李依
頃
そう言って首を横に振った 少しも興味がないと李依に思わせるために そっぽを向いて白々しいことを言った
頃
そう言いながら思い出していた 李依が少し前に 「実は入学してすぐの頃からずっと好きな人がいる」 そう瑠羽と慈慧に話していたことを たしか 校庭で気分が悪くなってうずくまっていた時に 最初に声をかけてくれて 保健室まで連れて行ってくれた人だとか あぁ、この人だったのか と彼を決して見ないようにしながら思った そして僕は絶対にこの人だけは好きにならない そう自分に誓ったのだ
李依
不意に李依が言うのが聞こえて ぼんやりとあの日のことを 思い返していた僕は我に返った
李依
李依
李依
ショックそうにしたり 頬を赤らめたり 忙しそうな李依を見て瑠羽が噴き出した
瑠羽
李依
李依
慈慧
李依
李依
慈慧
慈慧
瑠羽
瑠羽
瑠羽
李依
李依
瑠羽
慈慧
瑠羽
いきなり瑠羽が僕に問いかけてきたから どきりとして
頃
声をあげてしまった
瑠羽
瑠羽
慈慧
有無を言わせない無言の圧のようなものを 2人から感じる 僕は笑顔をつくって答えた
頃
頃
頃
多分2人とも本気で“絶対成功する” なんて思ってないだろう だって告白して成功するかどうかなんて 誰にも分からないんだから それでも“あなたなら大丈夫” と無責任な励ましをする 僕はそんな無責任なことは言いたくないけど この空気で反論する勇気はなかった でも李依はきっと大丈夫 と思うのは本当だ だって誰よりも僕が知っているから 李依が本当に素敵な人だということを 明るくて、いつもニコニコしてて 優しくて、誰にでも平等に接する 見た目だってサラサラの髪に 色白な小さい顔 男だとは思えないほど 華奢なスタイルで 笑うとえくぼができて最高に可愛い ...でも僕はそれを上手く言葉に出来なかった 李依が好きなのが彼ではなくて 他の人だったら きっと僕はたくさんの言葉をかけてあげられるのに 今はどうしても これ以上声が出せない
頃
瑠羽
案の定瑠羽が眉根を寄せて唇を尖らせて不満そうに言った 僕は思わず肩を縮めて謝った
頃
瑠羽が不機嫌な表情をすると びっくりするほど冷たく感じる 慈慧も眉を上げて僕を見てたけど 李依だけは
李依
と言ってくれた 本当にいい子だなとつくづく思う
李依
頃
頃
李依
頃
李依がニッコリと笑って手を振ってくれた それに手を振り返し 瑠羽と慈慧にも手を振る 慈慧は少し微笑んで軽く手を上げて答えてくれたけど 瑠羽は無表情だった 軽く顎をあげたまま黙って僕をじっと見つめてくる 綺麗にマスカラをつけて薄くアイシャドーも塗られた 大きな瞳 居心地が悪くて僕は逃げるように階段へ向かった 瑠羽に嫌われたかなと不安になった 彼たちはクラスの中心にいるグループ その中に地味で平凡な僕が 彼たちと行動しているのは 李依が仲間に入れてくれたからに他ならない 多分クラスのみんなは なんで僕が中心グループに入っているのか 不思議に思うだろう それはきっと瑠羽も慈慧も同じ 明らかに自分達とはタイプの違う僕と 一緒に行動することに違和感を覚えてると思う でも2人は李依が誘い入れた子だから仕方なく という感じではあるものの 特に何も言わずに普通に口を聞いてくれる 話が合わないと感じることは多々あったし 3人が話で盛り上がっている時は 僕はどうしても会話のテンションに ついていけず、いつも1人で ぽつんと黙り込んでしまう それでも同じグループにいられてありがたいのは 確かだった グループから抜けてクラスの中で 居心地が無くなるよりずっとましだった 李依がいなければ僕はきっと高校でも 『また』ひとりぼっちだっただろう
主
主
爽斗
奈々
主
主
主
主
主
主
すとメン