十亀だって、昔はもっとほんわかしてて穏やかな子だった。
きっと、十亀が盲信してるのは兎耳山だ。
十亀は優しい子。本当に、優しい子。
だから、こうなってしまった。
みんなの太陽を、兎耳山を守るために。
兎耳山が悪いって言ってるんじゃない。
兎耳山だって、誰よりも明るくていい子だ。
だからこそ悲しくなる。
喧嘩や傷の手当てができたって、
私はこの“友人”達に何もしてあげられない。
…私は、無力だ。
桜遥
お前、本気でやってねぇだろ
さっきまでの十亀と別人のように、動きに迷いがある。
きっと、中学生をいじめてた事が発端に起きたこのタイマン勝負が、許せないのだろう。
十亀条
そんなことな…
桜遥
拳当てる気ねぇし、蹴り避ける気もねぇだろ
如月涼葉
(…それでも、私には憶測でモノを語るしかない)
如月涼葉
(だって、私は十亀と対話したワケじゃないから)
桜遥
お前、何がしてぇんだよ
十亀条
そうねぇ…
十亀条
……山に行きたいなぁ
桜遥
…はぁ?何浸ってんだよ
桜遥
クズがいて良い場所じゃないって…なら何でお前はここにいるんだ
桜遥
ふざけた事言ってんじゃねぇぞ
桜遥
テメェがやってることは同じクズだ
如月涼葉
(…そうだね)
ひーちゃんだけじゃなくて、私も遥君に“任せ”なきゃ。
桜遥
でもクソダセェ
桜遥
それを分からせるためにオレはお前に勝つ
桜遥
…そしたらお前はダセェことやめて
桜遥
オレが喧嘩したい、カッケェヤツになれ!
十亀条
…ふふふっ、随分 自分勝手だねぇ
だって遥君は、ちゃんと自分の芯を持っているから。
桜遥
自分勝手 上等!
桜遥
喧嘩でテメェを押し通すってのは!こういうことだろ!
桜遥
オレは!相手がどんなに強くても、命の恩人でも!
桜遥
目をそらしたり、自分を曲げたりしねぇ!
桜遥
やっぱり…さっきのは本気じゃなかったんじゃねぇか
桜遥
なあ、モジャモジャ
十亀条
モジャモジャじゃない
十亀条
十亀だよ。十亀条
如月涼葉
……あ
しっかりと遥君を見据える十亀の瞳には、前の輝きが戻っていた。
十亀条
とことんやろう
十亀条
桜
そっから後は純粋な殴り合い。
…ものすっごい笑顔でね。
如月涼葉
(こりゃ、手当てのしがいがありそうだねぇ…)
蘇枋隼飛
桜君……君は…本当に凄いな
楡井秋彦
なんかよく分かんないっすけど…
楡井秋彦
オレめちゃくちゃ感動してます…!
如月涼葉
分かるよ秋彦君
如月涼葉
本当にかっこいい
柊登馬
桜のヤツ、ここまでとは
梅宮一
そうだな