赤side
ほとけ
こっちこっち、 とほとけっちが年上三人に向けて大きく手を振る。
何かを買いに行っていたのか、 アニキの手には袋が提げられていて、 特にないくんは満足した買い物をしたというような顔をしていた。
何か欲しいものでも手に入ったのだろうか。
悠佑
初兎
いふ
ほとけ
いふ
最後まで騒がしくこのテンションを保ち続ける彼らの体力は、 どこから溢れ出ているのだろうか。
ショッピングモールから家までの帰り道を四人の後ろに着いて行きながら、 隣のないくんと共に話しながら歩く。
ないこ
りうら
りうら
ないこ
「よかったね」とないくんは俺の頭を、大きな優しい手で撫でてくれる。
今まで両親に撫でられたことのない俺は、 こうやってないくんが微笑みながら優しく撫でてくれる、 この時間が大好きだった。
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
ないこ
りうら
そう返すとないくんは「まぁ、まろは本読むの好きそうだけどね」と笑って言う。
りうら
ないこ
__ないくんはいつも人の好みとか、 趣味とか、そう言うものを見抜くのが早いし上手い。
きっと相手をよく観察して、 なんとか仲良くなるためのネタになるものを探そうと必死になってるからだと思う。
それか単純に観察眼が鋭いのか。
どちらにせよ、 俺はないくんのそういう部分を非常に尊敬していた。
りうら
ふと気になってそんな質問を投げかける。
するとないくんは「あ、そうだ」と何かを思い出したかのように言って、 前を歩くアニキの肩をポンポンと叩き、そっと耳打ちをした。
それに頷いたアニキは彼に何かを渡し、それを受け取ったないくんは何事も無かったかのように俺の隣に戻ってくる。
ほとけっちと初兎ちゃんも不思議そうにこちらを振り返る中、 ないくんは「はいこれ」と俺に小さな袋を渡した。
りうら
ないこ
ないくんに言われるがまま、 俺は袋を閉じているマスキングテープを丁寧に剥がして、 袋口を開く。
なんだろうと思いつつ、 袋の中身を見てみると__そこには可愛らしいヒヨコの飾りが付いた髪ゴムがあった。
りうら
思わず彼の方を向くと、 ないくんは自分の口元に人差し指を置いてニコリと口角を上げて言う。
ないこ
りうら
小さい頃、親戚の人に連れていってもらった動物園で、 俺が見た瞬間一番喜んだと言っても過言ではないヒヨコ。
もしかしてそれを覚えていてくれたのだろうか。
りうら
ないこ
あとで付けてみてよ、 そのないくんの言葉に俺は喜んで頷いた。
りうら
りうら
ないこ
早速家に帰ったら、 ないくんに付けたところ見せよう。
__そう思った俺は胸の前で髪ゴムをギュッと抱きしめ、 もう一度ないくんに「ありがとう!」と笑ってみせた。
〜帰宅後〜
洗面台の鏡の前に立って、 ないくんが俺にくれた髪ゴムを使って前髪を結んでみる。
りうら
思っていた以上に前髪を結ぶことに苦戦したが、 付けてみると自分の赤い髪に黄色いヒヨコが映えていて、 とても可愛かった。
りうら
すぐに髪ゴムをくれた本人に見せに行く。
ないくんはリビングのソファで、 いふくんにくっ付かれながら、 ほとけっちと初兎ちゃんのテレビゲームを観戦していた。
アニキは昼ごはんで使った食器洗いをしている。
みんなが俺の言葉に反応して、 こちらを振り返った。
りうら
ほとけ
初兎
いふ
悠佑
みんなが一言ずつ言っていく中、 ないくんはその様子を見てお母さんのように優しく微笑んでいた。
りうら
ないこ
りうら
なんだか照れ臭くて「えへへ」と笑うと、ないくんはまろをどかして俺の方に近づき__そっと俺を抱きしめた。
突如の行動に一瞬驚いたが、俺もギュッとないくんを抱きしめ返す。
ポツリとないくんが呟いた。
ないこ
りうら
そういえば父さんから逃げてきた日からこの家に来るまで、 ないくんと一緒にいても笑えている気はしなかった。
あの状況から逃げたくて、 離れたくて。
でも父さんが追いかけてくるんじゃないか、って心配も不安もあって。
きっとないくんだって相当決断は迷ったはずだ。
それでもないくんは俺の手を掴んで、 父さんから俺を守る、 とこうして逃げ出すという決意をしてくれた。
きっと泣きたくなったりもしたと思う。
俺たち二人はあの日笑うことが出来なくなっていたけれど、 こうして優しい兄弟に出会って、 幸せに過ごして。
りうら
__目尻から流れる涙が俺の頬を伝って、言葉と共に溶け込んでいった。
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