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なるほど、叔父さんが突っ込んどいた顔のいい奴というのはこれか。とすぐさま分かる程度の優男が1人いた。
段取りを進めたのは例の叔父さんだが、当日の幹事役を引き継いだのはこの優男らしい。
自己紹介で冬原春臣(ふゆはらはるおみ)と名乗った彼は中々に如才なかった。
女性陣の興味が集中するのをさらりと受け流し、仲間を巻き込んで話を盛り上げる。最初は緊張していた男性陣も次第にリラックスしてきたのか軽快に話しはじめ、
ほぐれてくると剽軽な人が多くて冬原抜きでも話が続くようになった。 全員潜水艦の勤務らしく、話題の珍しさで女の子の食いつきもいい。
女性陣に漫画好きが多かったらしく、有名潜水艦漫画の話題でミーハーに盛り上がっている。
場を整えてから冬原は引き加減になり、飲み食いに徹しはじめた。多分見せゴマとして駆り出されていることに慣れているのだろう。
見てくれが良くてソツがない、自分がモテると確実に知っていそうなこういうタイプはあまり得意じゃない。
垢抜けたキャラに対する自然な気後れは、ごく平均的小市民としてあたしも普通に持ち合わせていた。
どうせなら盛り上がっている輪の方に入りたいが、1人だけ部外者のあたしの入り込む余地はなかなかない。
フォローを頼んでおいた幹事の恵美も漫画の話で盛り上がり、2人出てくる艦長のうちどっちが好きとか、そうか奴は兄貴がディープな漫画読みで、本人も充分オタクの資質がありありだった。
漏れ聞こえる話に余裕でついていけるあたしも人のことは言えないが。
恵美
じゃなくて。ちょっとはあたしのことも思い出せ。楽しげにはしゃいでいる友人を恨みがましくちらりと睨むが、飛ばした怨念は空振りだ。
見ると、テーブルの端のほうには微妙にノリに付いていけず戸惑っている風情の男性もいたが、わざわざ席を替わって隣に行くほど『狩り』のモードでもない。
何となくノリからはぐれて暇を持て余しているうちに、
冬原
向かいで自分の小皿に刺身を取り分けていた冬原が突然訊いた。自分が話しかけられていると気づいたのは「中峯さん」と名前を呼ばれてからだった。
中峯聡子
冬原
中峯聡子
冬原
あたしの視線の不躾さをざっくりどうする指摘しながら、冬原はきれいな箸使いで醤油の豆皿にわさびを溶いた。
ああバレてた、とあたしも小さく首をすくめる。
気後れは感じるものの、冬原の顔はくやしいことに非常にあたしの好みで、暇を持て余しがてらついつい視線がそちらを窺ってしまっていた。
中峯聡子
冬原
場を盛り上げていた愛想のよさと打って変わった率直さで気を悪くしたと言い放つ辺り、ただ当たりが柔らかいだけでもなさそうな性格を感じさせる。
まぁ、これだけ顔が良ければ取り立てて女の子に迎合する必要もないだろうしね。と、これはやや僻んだ感想。
ともあれ、どうせ機嫌を損ねたのなら取り繕っても仕方がない。
あたしも率直に返した。
中峯聡子
冬原が刺身を口に運びかけたまま固まった。
俯いて細かく震えているのは、ー顔を上げてから分かったが吹くのをこらえていたらしい。
冬原
冬原
中峯聡子
あたしは盛り上がっているほうにちらりと視線を投げた。
これであたしが美人なら男性陣が話題に入れようと頑張ってくれるのだろうが、そこまでするでもない程度なので悪気なく放置されている。
冬原
中峯聡子
冬原
盛り上がった恵美は場をリードするだけリードして帰ってくる気配もない。かなり興が乗っているらしい。
中峯聡子
言いつつあたしは冬原に向かって軽く首を下げた。
中峯聡子
冬原
中峯聡子
地味な人間の微妙な気後れなどは説明しても不毛だ。
話せばと言われてもとっさに共通の話題など思いつかず、取り敢えず相手のフィールドに乗ってみる。
この場合、相手のフィールドといえばー
中峯聡子
訊くと、冬原は少し意外そうな顔をした。
中峯聡子
冬原