母
もう夏もおわりね
父
そろそろシーズンオフだな
息子
お客さん、少なかったね
お手伝い、いっぱいしたのに
お手伝い、いっぱいしたのに
母
そうね
がんばったのにね
がんばったのにね
息子
もうこの場所はハヤリじゃないんだって
母
そんなこと、誰が言ったの?
息子
この前来たおにいさんたち
父
あの騒がしい大学生か
息子
ちかくにあたらしいスポットができたんだって
息子
つぎはそこに行くって
母
残念ね
父
いっそ、引っ越すか
母
そんなできもしないこと言わないで
息子
おひっこしするの?
母
お引越しはね、できないのよ
息子
でもお客さん来ないとつまんない
母
そうね
父
そうだなー
息子
あ
息子
車の音
息子
だれか来たよ!
お客さんだ!
お客さんだ!
男
ここだよ
女
なんか、今にも崩れそうな建物ね
男
だからいいんだろ
男
風情があって
女
そうだけど
女
やっぱりこわい
男
まぁ、とりあえず写真でも撮るか
女
何か写りそう
男
写ったら自慢しようぜ
女
じゃあ、私が撮るからそこに立って
男
自分が写りたくないんだろ
男
いいよ
男
この辺でいい?
女
いいよ
女
じゃあ撮るよ
女
はい、チー…
男
ん?
男
どうした?
女
キャーーーーーー!
男
おい
男
なんだよ、どこ行くんだ!?
男
おい
母
良かったらお写真撮りましょうか
男
え!?
うわっ
うわっ
男
ワーーーーー!!
息子
ぼくも写りたい
父
こらこら、ダメだぞー
男
ギャーーーー!!!
息子
あーあ、行っちゃった
父
ハハハ、案外根性ないなー
母
話を広めてくれるかしらねー
父
もう一度流行るといいなー
心霊スポットとして
心霊スポットとして
息子
しんれいスポットってなにー?
母
私たちみたいな家族が住む場所よー
父
お客さんが来ないとすることないもんなー
俺たちみたいな地縛霊は
俺たちみたいな地縛霊は
息子
じばくれいってなーに?
母
私たちみたいなお引越しできない家族のことよ
息子
おひっこしできなくて、お客さんをおどろかすオシゴトのかぞくのこと?
母
そうそう
父
えらいなー
父
またお客さんいっぱい来たら頑張ろうな
息子
うん、ぼくお手伝いいっぱいする!