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3年近く付き合っていた彼女と、別れた。
理由なんてない。 お互いだれていた、惰性だったんだろう。 ただ彼女は泣くことも無く 別に笑いもせず ごめんなさいとありがとうを僕に告げた。
日常だったものが消え、僕は 自分の不甲斐なさと何とないやるせなさ に襲われ、孤独に耐えられなくなったのは それから二週間が過ぎた頃だった。
夏の入り。 この季節の夜は嫌に人との繋がりが 恋しくなるもので、僕は取り憑かれた過去と それを振り払うための新しい出会いを 求めていたのかもしれない。
僕
そんな僕を見かねてか、友人に勧められた。 しかし、どうにもアプリの出会いと言うのを 飲み込めない僕はあまり気が進まなかった。
僕
今はこの感覚を忘れる、ないし紛らわせるのであればもはや手段はどうでもよかった。
アプリの女
僕
僕
アプリの女
僕
マッチングアプリで出会った女の子と 食事に来るのなんて初めてだ。 自分でももう少し余裕があるものだと 思っていたが、初めては何事も緊張する。 余裕なんてある訳ない。
とはいえ、隣町で会う事に決まった時点で 下見をしておいたのは正解だった。 迷うことなく案内できそうだ。
僕
なぜ緊張?なぜ下見? 別に特別なものを期待せずとも その時々の一喜一憂で気を紛らわせられたら それで良いはずなのだ。
僕
アプリの女
あろうことか、待ち合わせから ほとんど会話も無く 僕と彼女は五分ほどの距離の レストランに辿り着いた。
アプリの女
僕
僕
カヤ
開幕、最悪だったエスコートから一転 僕は彼女、カヤとすっかり打ち解けていた
最初はお互いの趣味などを深堀りして 牽制し合っていたものの ある程度酒もまわり、お互いなぜアプリを 使い始めたのかについて探り合っていた
僕
カヤは不思議な子だった 身の上などほとんど話さないし聞かないが 僕の話を延々と聞いてくれた 僕の恋愛観に関心を持って時に驚き 時に笑いながらただ僕と向かって話を聞いてくれた
僕
さっきからカヤ自身が自分のことを 話すことはあまりなく、こちらの話を 興味津々といった具合に引き出してくる。
僕
あまり詳しくはないが、この手の子は 遊びが目的の子がほとんどだろう、と 僕の偏見が警告していた。 やはり、アプリに純粋な出会いなど……
カヤ
僕
カヤ
カヤ
カヤ
たしかに。言う通りなのかもしれない。 過去を忘れるためなんてありきたりな理由。 それでもこうして向き合ってくれているカヤに邪(よこしま)な疑いを持ってここに座る僕の方がどうかしている。
カヤの言っていることは綺麗事で他人事かもしれないが、それでもどちらが純粋な恋愛で真っ直ぐの人間であるかは自明だった。
僕
信じることを怖がり、偏見を向け そのくせ失恋を忘れるために人と出会うなど そんな僕のままで好機など巡るはずもなかったのだ
僕
カヤ
美人、か。 言われてみればかなりの美人だと思う 天真爛漫、純朴という雰囲気ではあるが 整った容姿、抜群のスタイル アッシュ色の手入れされた髪 僕にはもったいないくらいの美人だ
そんな子が今こうして向き合ってくれているのだ 今は目の前のこの子との時間を大切にしよう これからをきちんと考えて信じて誠実な関わりをしようと気を改めた
僕
男
カランとドアベルを鳴らし入ってきた男は 彼女を見るなり声をかける
カヤ
男
呆気に取られている僕は、さっきまでの思考が吹っ飛び目の前の出来事を理解しようと必死にほろ酔いの頭を回していた
これが僕ら三人のはじまりだった