カヤ
えっと、つまり…

カヤ
今日マッチングアプリで出会った人…
で、こっちは前にマッチングアプリで会ったカケル…

カケル
どーも

動揺するカヤが僕とカケルを紹介する
僕も軽く会釈してカヤの言葉を待っていた
カヤ
あ、あはは…
別に悪いことしてるわけじゃないんだけど…
なんか、気まずいね…。

カケル
気まずいもなにも…
前回の帰り、俺ちゃんと伝えたはずだろ
その答えが……これかよ…

カヤ
だから、
それは…ほら…。

僕
???

何がなんだかよく分からないが
今この瞬間が俗に言う修羅場だということくらいは僕にもわかった。
カケル
悪ぃな、あんたも。
ちゃんとカヤから説明があって然るべきだと俺も思う

僕
い、いえお構いなく…。

カケル
要するに、俺とカヤはアプリで知り合って
あんたがカヤと会う前から何度かデートしてる

カケル
んで、前回会った時
俺からカヤにこれからを真剣に考えて欲しいって伝えたんだよ
俺はカヤが好きだからな

カヤ
……。

僕
(そんな、あっさり…)

カケル
結局曖昧な返事しかなかったんだけどな。けど、俺はこれからも時間かけてアタックしてくつもりだった。

カケル
で…曖昧なまんま次の予定、なんて考えてたら外から見知った顔が男と飯食ってんだ。驚いたよ、正直。

淡々と、怒るわけでも落ち込むわけでもなく
あくまで淡々と話すカケルを
僕はぼぅっと見ていた。
真剣なのだと、これが恋なのだと思い知らされ語る彼をただ見ていることしか出来なかったのだ
カヤ
う、嬉しかったよ
ただ、私はまだ恋とか…そんなんじゃ…

カケル
それは前にも聞いたよ
じゃあこいつは?

その通りだ。
恋をするでも無い、想いを断るでもない。
それなのに、僕に前へ進めと諭した彼女が
僕と出会う意味はたしかに分からない。
カヤ
……。

カケル
別に彼氏じゃねぇんだ。
浮気でもなんでもないし、怒る理由もねぇよ。
だからって…悔しいじゃねぇか。

カヤ
……ごめん。

カケル
……。

カケル
なんだかんだカヤとはそんな曖昧な関係で3ヶ月くらい会ってんだ。あんたに妬いてるわけじゃねぇんだが、どうにも手前が情けなくてな…。
悪ぃな邪魔して。カヤもあんたも…
また別の機会に話聞くよ、それじゃ

僕
(さ、3ヶ月…)

僕
あ、いえ…。

カヤ
まっ、待って…!
ちょっとお店変えよう…!
三人で話せないかな…?

僕
???

たしかに、フォーマルなレストランには
似つかわしくない話かもしれない
それに、席に着くわけでもなく僕たちのテーブルの前に立ち尽くすカケルに動揺するウェイターが目の端に見えた
カケル
……、あんたがいいなら。
俺は構わねぇよ。

僕
そうですね、僕もこのまま帰るというのは少し…。

カヤ
ふたりともありがとう…。
じゃ、お会計だけ済ませるね…。

そういうと、カヤはカバンから財布を取りだした
装飾はシンプルなのにどこか高級感のある嫌味のない財布
こういうところもカヤの魅力のひとつなのだろう、などと考えつつ
僕
いやいや。
とりあえずここは出すよ。
カヤちゃんとカケルくんは外で待ってて。

カヤ
でも……。

僕
いいから

カケル
悪ぃな。
んじゃ。行くぞ、カヤ

カヤ
あ、ありがとう
ごちそうさま…。

2人を席から見送り、会計を持ってきたウェイターの伝票を見て目玉がひん剥けた。
コース料理にしておけば良かった、と彼女がいない席で後悔をして店を出た。