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恋を、感情を、教えてください〜第4幕幼少期〜

第28話 - Ep.28 はじめてのお遊戯会

2025年07月09日

#ドラマ

#コメディ

#澪彩文庫本💜🖌

#きな文学団

#澪彩@参加型💜🖌

音舞澪彩

ぴゅうっと涼しい風が吹く秋の日

将風達は幼稚園でお遊戯会の準備をしていた

11月4日、土曜日

Ep.28 はじめてのお遊戯会

松澤絋

せんせぇー！！

松澤絋

ボタンつけれなーい！

吹雨希すうあ

えぇ？！さっき付けたのに！

松澤絋

おれもやろうとおもったら、とれちゃった

吹雨希すうあ

そ、そうでしたか…

知花凜叶

せんせー！

知花凜叶

ぼうしどこー？

吹雨希すうあ

ちょ、ちょっと待ってくださいね！！

先生であるすうあは子供達の準備にあちこち奔走していた

古寺将風

（せんせーたいへん…）

知花凜叶

せんせー！

吹雨希すうあ

はーい今行きます〜！

準備を終えた将風達は、舞台としてセッティングされ、園児達の登場を楽しみに待つ親たちがいる多目的室に移動する

ガヤガヤガヤ…

自分や友達の家族が集まり、会話をしてザワつく会場を見て、将風は緊張感が高まる

古寺将風

（ひと、いっぱい…）

古寺将風

（みんなのまえで、おゆうぎかいするんだ…）

ぎゅっと、服の裾を掴む将風

四宮祐希

あれ？しょうくんきんちょーしてるっすかー？

古寺将風

えっと…うん…

裾を掴んだまま下を向く将風に、絋が近付く

松澤絋

しょうくん！きんちょーしちゃだめだよ！

松澤絋

きんちょーしたらバクバクせーじんにたべられちゃうよ！

古寺将風

ば、バクバクせーじん？

松澤絋

うん！えほんでよんだの！

松澤絋

きんちょーしたときの、むねのバクバクをきいてたべにくるんだって！

古寺将風

そ、そうなんだ…

四宮祐希

えー！こわいっすねー！

松澤絋

でもだいじょーぶ！

松澤絋

おれがしょうくんのバクバクをなくしてあげるー！

絋はそう言って将風に抱きつく

古寺将風

わっ…！

四宮祐希

おれもだきつくっすー！

祐希も将風に抱きつく

古寺将風

う…うごけないよぉ…

そうしているうちに、すうあから声がかかる

吹雨希すうあ

みなさーん！そろそろ始まりますよ〜

四宮祐希

はーいっす！

松澤絋

はーい！

祐希はすうあの方へ向かい、絋は将風の方を向いて言う

松澤絋

バクバク、なくなった？

古寺将風

……

将風は、胸に手を当てて言う

古寺将風

なくなった

松澤絋

じゃあ、いこう！

古寺将風

うん

2人は手を繋いで舞台へ向かう──

ナレーション

これは、どこかの国のお話

ナレーション

とある町に男の子が一人で暮らしていました

ナレーション

男の子の名前はユーキ

ナレーション

ユーキは働き者ですが、いつも失敗ばかりして怒られていました

リンカ

ちょっとユーキ！

リンカ

またまちがえてるよ！

リンネ

10こつくってってたのんだのに、いっこしかできてないよ

ユーキ

あー！

ユーキ

まちがえちゃったっすー！

ユーキ

ごめんなさいっす！

リンカ

もう、そんなにまちがえてばっかだと、クビにしちゃうよ！

ユーキ

それだけはやめてっすー！

ナレーション

ユーキの仕事仲間であるリンカとリンネは、怒って帰っていきました

ユーキ

はぁ、きょうもしっぱいしちゃったっす…

ユーキ

このままじゃ、ほんとにクビになっちゃうっすー…

ナレーション

落ち込むユーキの事を、影から見ている人達がいるようですが…

ナレーション

ユーキは気付いていません

舞台袖から妖精の格好をした花と将風、來が出てきて、ユーキに近寄る

ハナ

ねぇねぇ、このこ、すごくかなしそう！

ライ

どうやら、おしごとでしっぱいしてるみたい！

ショー

なんとか、たすけてあげたいな…

ナレーション

影からユーキの様子を見に出てきたのは、妖精のハナ、ライ、ショー

ナレーション

3人は、ユーキを助けるためにどうすればいいのか、考えました

ハナ

うーん

ライ

うーん

ショー

うーん…

ハナ

そうだ！げんきになるおまじないをかけてあげようよ！

ショー

げんきになるおまじない？

ハナ

そう！

ハナ

げんきがないんだったら、げんきにしてあければいいの！

ライ

たしかに！いいかんがえだね！

ナレーション

おまじないをかけることにした妖精達は、ユーキの周りをクルクルと回りだしました

ハナ

げんきになーれ！

ライ

げんきになーれ！

ショー

げんきになーれ

3人はユーキの周りを3回ほど回ると、両手を上に挙げる

ハナ

ぱぁ〜ん

ライ

よーし！これでおまじないをかけおわったね！

ショー

それじゃあ、このこにきづかれるまえにかえろう

ハナ

うん！

ナレーション

ユーキにおまじないをかけ終わった妖精達は帰っていきます

3人は舞台裏へ戻る

すると、ユーキは俯いていた顔を上げる

ユーキ

あれ？なんだかきゅうにげんきになったっす！

ユーキ

これなら、おしごとをがんばれるきがするっすー！

ユーキ

よーし！おしごとするっすー！

ナレーション

おまじないの力で元気になったユーキは、お仕事へ取り掛かります

ユーキは走って舞台裏へ戻る

ナレーション

そして、次の日

リンカ

ちょっとユーキ！

リンネ

またおしごとまちがえてるよ！

ナレーション

ユーキは、またリンカとリンネに怒られてしまいました

ユーキ

えー！

ユーキ

おかしいっす…

ユーキ

できそうなきがしたんすけど…

リンカ

もうユーキはクビ！

リンカ

もうおしごとはたのまない！

ユーキ

えーそんなー！

ユーキ

あんまりっすー！

リンネ

だって、ユーキはいつもおしごとまちがえてばかりだもん

ユーキ

うぅ…もういちどだけチャンスをほしいっす…

リンカ

しかたないなぁ

リンカ

それじゃあ、でんせつのおはなをとってきたらいいよ

ユーキ

えー！でんせつのおはなって、あるかどうかもわからないおはなじゃないっすかー！

ナレーション

伝説のお花とは、どこかの森を抜けた崖の上に、夕方にだけ咲く、美しいお花の事です

ナレーション

童話や神話などに出てくるこのお花ですが、実際に見たことのある人というのは身近には居ないものでした

リンネ

でんせつのおはなをみせてくれたら、ユーキはすごいひとなんだっていうしょうこになるよ

リンカ

そしたらクビはやめるよ！

ユーキ

うー、わかったっす…とってくるっす…

ナレーション

こうしてユーキは伝説のお花を探すための旅に出ることにしました

舞台ではユーキがリンカとリンネに手を振り、3人はそれぞれ舞台へ戻る

そして少し経って、ユーキが舞台に出てくる

ユーキ

うーん、でんせつのおはなをさがすのは、どこにいけばいいっすかね〜

ユーキは舞台の真ん中で首を傾げる

ナレーション

旅に出たユーキでしたが、行先も分からず、困り果てていました

ナレーション

そんなユーキに妖精達が近付きます

ハナ

あ〜！

ハナ

みてみて！このまえのおとこのこだよ！

ライ

ほんとだー！

ショー

でも、まだなんかこまってるみたい

ハナ

うーん、どうしたんだろう？

ハナはユーキに近付き、ユーキの顔を覗き込む

ナレーション

ユーキはどこにお花があるのか、そしてハナはどうしてユーキが困っているのかを悩んでいます

ユーキ

うーん

ハナ

うーん

そして、ユーキは瞑っていた目を開け、ハナと目が合う

ユーキ

え？

ハナ

あれ？

ユーキ

えええええええ〜？！

ユーキ

だれっすか〜？！

ユーキは走って舞台の端まで離れる

そんなユーキに妖精達3人は近付く

ハナ

わたしたちはようせいだよ！

ライ

キミがこまってそうだから、しんぱいになったんだ！

ショー

おなまえは？なにがあったの？

ナレーション

手を差し伸べてくれる妖精達に、ユーキはこれまでの事情を話し、伝説のお花のことを聞いてみることにしました

ユーキ

…と！いうわけだったんす！

ユーキ

でも、でんせつのおはながどこにあるのかがわからないんす…

ユーキ

もしかして、でんせつのおはなはうそだったんすかね…？

ナレーション

ユーキは、弱気になってしまいました

ナレーション

そんなユーキに、妖精達はいい情報を伝えます

ハナ

でんせつのおはなはあるんだよ！

ショー

でも、たくさんのひとにあわないといけないんだ

ライ

でも、ユーキくんならいけるよね？

ライ

だって、わたしたちがついてるもん！

ショー

みちあんないしてあげるから、いっしょにいこう

ショーは手を差し伸べる

ユーキ

ありがとうっす！

ユーキはその手を取った

ナレーション

妖精達の知恵を借りて、ユーキは伝説のお花を見つけるために人に会いに行きます

ユーキと妖精達は舞台に入ったり出たりして、旅の様子を表現する

すると、ユーキ達が出てきた舞台袖の反対側から、乱兎が出てくる

ユーキは乱兎を指差して言う

ユーキ

もしかして、さいしょにあうひとはあのひとっすか？

ハナ

そうだよ！

ナレーション

目的の人を見つけたユーキ達は、畑仕事をしているラントに話しかけます

ライ

ラントさん！こんにちは！

ラント

ああ、ようせいさんたちか、こんにちは

ラント

きょうはどうしたのかい？

ライ

じつはね、ユーキくんが、でんせつのおはなをさがしてるの！

ライ

だから、ラントさんのじょうろをかしてほしいな！

ラント

そういうことならいいよ、どうぞ

ラントはユーキにジョウロを手渡す

ユーキ

ありがとうっす！

ライ

それじゃあつぎにいこう！

ナレーション

ラントからジョウロを借りたユーキ達は再び歩き出します

ユーキ達とラントは手を振ってお別れし、歩き出す

そして今度は絋が出てくる

ショー

こんにちは、コウくん

コウ

あ！ようせーさんだ！こんにちわ！

ナレーション

次に出会ったのは、水汲みの仕事をするコウでした

ショー

ユーキくんがね、でんせつのおはながひつようなんだ

ショー

だから、みずをわけてほしいの

コウ

それならぜんぜんいいよ！

コウ

はいどうぞ！

ナレーション

コウはユーキの持っているジョウロに水を注ぎます

ユーキ

ありがとう！

ショー

それじゃあ、つぎにいこう

ナレーション

ユーキ達はコウにお別れをし、次の目的地へ向かいます

再び舞台上を歩き回り、最後に姫恋と四葉が出てくる

ハナ

ヒレンちゃん！ヨツバちゃん！こんにちは！

ヒレン

あ、ようせいさんたちだ

ヨツバ

こんにちは

ナレーション

最後に出会ったのは、魔法使いのヒレンとヨツバです

ハナ

じつはね、ユーキくんがでんせつのおはながひつようなの

ハナ

だから、ユーキくんのもってるおみずに、まほうをかけてほしいの！

ヒレン

それならいいよ！

ヨツバ

それじゃあ、じゅもんをとなえよう！

ヒレンとヨツバは手を繋いで呪文を唱える

ヒレン

まほうさんまほうさん

ヨツバ

おみずにえいようをください

ナレーション

魔法使い達が魔法を使うと、ジョウロの水が輝いて見えました

ユーキ

ありがとう！

ハナ

それじゃあ、でんせつのおはなをさがしにいこう！

ナレーション

ユーキ達は、ヒレン達とお別れをし、伝説のお花が咲くという森へ向かいました

ユーキ達はしばらく舞台を歩き回る

ナレーション

そしてついに森の奥にある崖までやって来ました

ナレーション

その頃には、日が暮れそうになっています

ハナ

ついたよ！

ライ

おはながさくのはゆうがただから、いまだね！

ショー

さあユーキくん、ここにみずをあげて

ナレーション

ユーキはショーに言われた通りに、周りと比べて少し色が違う土に水をやりました

ナレーション

すると、なんということでしょう

ナレーション

何も無かったはずの土から、みるみる芽が出て成長していき、一輪の美しい花が咲きました

ユーキ

わぁ〜！

ユーキ

きれいなおはなっすねー！

ライ

これがでんせつのおはなだよ！

ハナ

はやくもってかえって、みんなをびっくりさせちゃおう！

ユーキ

うんっす！

ユーキ

ありがとうっす！

ショー

ユーキくん

ショー

でんせつのおはなは、ユーキくんのちからだけじゃ、さかなかったの

ショー

でも、なんでさいたとおもう？

ユーキ

えーと、ようせいさんたちのおかげっすか？

ショー

ううん、ちがうよ

ショー

ユーキくんには、きょうりょくしてくれるおともだちがいたからだよ

ショー

だから、ユーキくんがいつもしごとをしっぱいしちゃうのは、ユーキくんがひとりでがんばろうとするから

ショー

みんなできょうりょくすれば、きっとうまくいくよ

ユーキ

……！！

ユーキ

わかったっす！

ユーキ

ようせいさんたちとおはなをさがしたみたいに、おしごともみんなとがんばるっす！

ライ

うんうん！ユーキくんがんばれー！

ハナ

がんばれー！

ナレーション

そうしてユーキは伝説のお花を町に持ち帰り、リンカとリンネに報告しました

リンカ

ええ！ほんとにとってきたの？！

リンネ

ユーキすごね！

リンカ

やくそくだから、クビはなし！

ユーキ

わーいっすー！

ナレーション

こうしてユーキは、伝説のお花を取ってきたことで自信をもち、妖精達の教え通りに、町のみんなと協力しながらお仕事をしましたとさ

ナレーション

おしまい

パチパチパチパチパチ……

会場中に拍手が響き渡る

吹雨希すうあ

それでは園児の皆さんは舞台に上がってくださーい！

すうあの呼びかけに舞台に上がる園児達

そして声を揃えて言う

｢｢ありがとうございました！！｣｣

パチパチパチパチパチ……

拍手の音を聞きながら、将風は劇の余韻を噛み締めていた

古寺将風

（みんなとげき…たのしかった…）

古寺将風

（これが、げきで“ショー”がゆってた、『きょうりょくする』ってことかな……）

そして、拍手に包まれながら、お遊戯会は幕を閉じる

恋を、感情を、教えてください〜第4幕幼少期〜

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音舞澪彩

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