「トレインムリオふぇす」とは
JR線が5年に1度開催する、全国規模のスタンプラリーである。 台紙に指定された場所のスタンプを押せば、ムリオショップにて限定グッズと交換できる。
1枚1ポイントのムリオシールを30ポイント集めれば、1枚のスタンプ台紙と交換できる。
全国規模のスタンプラリーで、よりスタンプ獲得を現実的にするならば、台紙をなるべくたくさん手にする事だ。
即ち、スーパーやコンビニなどで手軽に購入できるムリオシール食品(ムリオシールは食品に貼られている)の、
大量購入。
吉田 響
今日買った分のポイントは合計して24ポイント。シール配布期限終了までにあと5~6枚は台紙を稼げるはずだ。
完璧だ。
(こういう時専用の)交通系ICの残額も問題無い。 (こういう時専用の)大きめのリュックに食品を詰め込む。
今日のノルマは達成した。 移動用の交通系ICを取りだしながら、駅へと続く歩道橋に向かう。
吉田 響
高山 昴
___階段を上り切ると、高校生くらいの男が真下を眺めながら ため息を繰り出していた。
……… …こういう、あからさまな「かまってちゃん」は嫌いだ。
クソババア 母 親 の常套手段。軽蔑の念を込めて鼻で笑いながら通りすぎたい所だが
……この男、見覚えがある。
前髪があった時代に培った検索能力で、労せず庭球HSS杯の本日の試合結果に辿り着いた。
対戦相手は、全国大会四連覇を達成した溝口 圭佑となっている。 あの憔悴ぶりは今日の試合に負けた事から来ているのだろう。
____そうだとしても自分には関係無い事だ。
鼻で笑う事はしなかったが、さっさとその場を後にした。
あんな風にウジウジしたって、救いの手なんて差し出されない。
世の中なんてそんな物だ……
溝口 圭佑
階段を下り終えると、高校生くらいの男が手すりにもたれてため息を繰り出していた。
吉田 響
吉田 響
溝口 圭佑
吉田 響
吉田 響
溝口 圭佑
吉田 響
吉田 響
溝口 圭佑
吉田 響
溝口圭佑は小さく鼻を鳴らすと、爪先で軽く地面を蹴った。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
響の眉が僅かに反応した。
__それから溝口圭佑は頼んでも無いのに これまでの経緯を喋り出した。
「孝太の彼女の幼なじみ」とか「申し分無いプロフィール」とか どうでもいい情報が鼓膜から脳に滑り込んで来る。
響はため息を吐くと、SNSを表示させた。
溝口 圭佑
吉田 響
画面に指を這わせたまま顔を上げずに答える。
吉田 響
「私、そのじゃがいも農家さん知ってるかも」
鳴沢 柚月
__のぞみさんたちと通話を終えた後、なごみさんの言葉が引っ掛かかってる僕は検索ページの前で腕を組んでいた。
お母さんの旧姓である「大澤」と「じゃがいも」で検索をかけると、確かにじゃがいも業界の間では高い知名度であると言う情報がヒットする。
そして食品製造会社から結構引っ張りだこらしい。
これまでコラボした商品や会社をスクロールして見ているうちに、何か別の違和感も浮上して来た。
挙がっている会社名の中に、見覚えのあるような無いような物が混じってる気がする。
鳴沢 柚月
気のせいじゃない。僕は絶対に「この会社」を知ってる。どこかで知ったはず。
どこかで……
鳴沢 叶夢
鳴沢 叶夢
お父さんが仕事から帰って来た。
IT系の会社を起業しているお父さんは在宅ワークが主なんだけど(人に会うのが嫌らしい)、最近は会社に行く頻度が増えた。
まだ僕に勉強面で期待をかけてるけど、以前よりは
鳴沢 柚月
鳴沢 叶夢
鳴沢 柚月
鳴沢 叶夢
鳴沢 柚月
鳴沢 叶夢
鳴沢 柚月
思い出した。「あの会社」は____
………でもこんな事って…。
鳴沢 叶夢
3種のベリーパイ
ハニーバターワッフル
バナナマウンテンパンケーキ
__ほとんど横文字のメニューと充満する甘い香り。時折上がるシャッター音。さながら異空間だ。
客の過半数は女性の店内において、圧倒的に少数派な、とある「男性の1人客」はキャップを深く被り直しながらも
その口元は綻んでいた。
正面。斜め。引き。 様々な角度からスマホで写真を撮ると、ハッシュタグを大量に付けてSNSに上げる。
それら一連の行動を終えると、画面を下向きにしてスマホを机上に置く。合掌しナイフとフォークを手に取る。
男性客がまさに「至福の瞬間」を迎えようと______…
「あーーマジでいた。ヤバ」
スマホ慣れした如何にも現代っ子な中学生くらいの少年が、男性客の席で足を止めた。
パイを口に運ぶ姿勢のまま唖然としている男性客をよそに、少年はさっさと向かいに座る。
そして再び無遠慮な声を上げた。
「超有名人じゃん。ヤッバ、マジだったんだ」
吉田 響
打って変わって潜めた声に、男性客の手からフォークが滑り落ちた。
フォークは皿に当たり甲高い音を立てる。 男性客は体を縮めながら更にキャップを引き下げた。
高山 昴
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
高山 昴
吉田 響はテーブルに所狭しと並ぶスイーツ群を指さすと、その目を蜘蛛の巣にかかった獲物を見るかのように細めた。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
高山 昴
高山 昴
吉田 響
10分後
吉田 響
高山 昴
吉田 響
高山 昴
25分後
高山 昴
吉田 響
吉田 響
高山 昴
40分後
吉田 響
吉田 響
高山 昴
吉田 響
高山 昴
吉田 響
___そんな感じで、吉田 響のコミュニケーション能力により場は女子会よろしく盛り上がっていた。
バナナマウンテンパンケーキの最後のバナナを飲み込むと(響も頼んだ)、響は足を組み換えた。
吉田 響
高山 昴
響の話術により、しっかりばっちり自身の内情を吐露してしまった事に気づいた昴が赤面する。
響はそんな昴を一瞥し、仮面を剥がすが如く浮かべていた笑みを引っ込めた。
吉田 響
高山 昴
昴の声がぐっと低くなった。
机上に置かれた拳は震え、下から響を睨み付けた。
高山 昴
高山 昴
吉田 響
響は眉1つ動かさず昴の__何かを堪えるような様を眺めていたが、肩を動かして息を吐き出した。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
高山 昴
響の声音もまた、震えている事に昴は気づいた。 自分に注がれる視線の種類が変わっても、響は止めなかった。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響
「糞ほど楽しくねぇぞ」
高山 昴
吉田 響
吉田 響
吉田 響
高山 昴
昴の両の目が一際大きく揺れた。 意識しなくても、響の口元に笑みが浮かんだのが分かった。
仮面舞踏会じゃない。そんな場所じゃなくても輝ける。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
高山 昴
吉田 響
吉田 響
吉田 響
呉董都(おとうと)学園
テニスに力を入れているこの学園は、春休みにクラス分けの為の特別プログラムがある。
__そして、今日。その春期休暇選抜の全プログラムが終わった。
緊張はしたけど自分の全ては出し切った。 今日の夜は澪さんとラインしよう。
山崎孝太はラケットが収まっているバッグを背負い直すと、呉董都学園の校門をくぐ___
吉田 響
高山 昴
山崎 孝太
__校門をくぐると、吉田 響と高校生くらいの男が待ち構えていた。
普通に寿命が縮んだので思わず絶叫した孝太をよそに、2人は話を続ける。
吉田 響
高山 昴
高山 昴
高山 昴
吉田 響
山崎 孝太
高山 昴
吉田 響
高山 昴
高山 昴
吉田 響
山崎 孝太
吉田 響は小さく拳を付き出した。
吉田 響
高山 昴
その拳に、高山 昴も拳を合わせた。
夕暮れのオレンジが反射して、それは目に染みるような___
山崎 孝太
コメント
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1日遅れです🙇ごめんなさい🙇🙇 昴くんが大分意外な裏垢を持ってましたが、もちろん響くんもヨッシーダくん愛溢れる裏垢を持ってます。そして作中と同じような過程で、孝太くん含む取り巻き達はその存在を把握しております。 そしてキノコについては響と昴個人の意見です。 サブタイトル読み:カノン 読んでくださりありがとうございました❗