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〜時間軸的にはショッピングの後〜

桃side

ほとけ

ひーまーだぁ・・・・・・

初兎

夏休みって意外と長い・・・・・・

ソファに引っ付きながら、 ぼんやりとした瞳でゲームのコントローラーを動かしている二人が突如ポツリと呟いた。

ほとけ

宿題はいふくんとアニキにに圧かけられて夏休み前半に終わらせたし

初兎

ゲームも同じのばっかりやっとるから、段々飽きてきたんよなぁ

そう言いながらもカチャカチャとあらゆるボタンを連打しながら、 テレビに釘付けになっている二人を見ると、俺的にはその言葉は嘘だろ、とは思うのだが。

なんだかんだ時間が過ぎていくと、ほとけっちが「また落ちたんだけど!」とコントローラーを床のクッションに叩きつけるように投げた。

その苛々し始めたほとけっちを見て、初兎ちゃんは口元をにやつかせながら「ドンマイ、イムくんw」と煽るように言う。

ほとけ

初兎ちゃん、表情と言葉が一致してないよ?!

初兎

大丈夫、大丈夫、気のせいやって

初兎ちゃんに揶揄われていることを察したのか、 「つまんない!」とソファの背もたれに寄りかかったほとけっち。

その頭を、二階のベランダから洗濯物を取り込んできたいふまろが背後からベシッと空いている左手ですかさず叩いた。

ほとけ

いたっ、ちょっといふくん!何するの!

頬を膨らませて後ろを振り返ったほとけっちを、いふまろは呆れた様子でため息混じりに言う。

いふ

そんなに暇なら少しでも俺たちの家事を手伝うとかあるやろ

ほとけ

だって僕、洗濯とか掃除とか出来ないんだもん!

初兎

うんイムくん、それは堂々と言うことやないな

「当たり前でしょ」と言わんばかりに胸を張ってそう言ったほとけっちに、隣に座る初兎ちゃんがのんびりとツッコむ。

するとキッチンでりうらと一緒に昼ごはんの洗い物をしていたアニキが、 困ったように眉を下げて会話に乱入した。

悠佑

りうらだって俺たちの手伝いしてくれてんねんで?

悠佑

ほとけにとってはりうらは兄かもしれんけど、年齢では同い年なんやから出来ないことではないんよ?

ほとけ

でっ、出来ないと言うより苦手なんだよ・・・・・・

アニキからの正論に目を泳がせながら、ほとけっちがそう言い直す。

それを聞いて何か案を思いついたのか、悪戯っ子のように笑ったまろがほとけっちを見下ろして、とある提案をした。

いふ

じゃあ苦手を克服するためにまずは手伝いを経験するところからやっていこうか

ほとけ

そ、そういうこと?!

「嫌だ!」とほとけっちが駄々をこねだしたところで__突如インターフォンのピンポーンという電子音がリビング内に響いた。

悠佑

あれ、誰か来たな

悠佑

すまんないこ、ちょっと開けてきてくれへんか?

ないこ

わかった〜

アニキに頼まれて、俺は玄関の扉の鍵をガチャリと開ける。

「はーい」という声と同時に、その扉を押し開けると__

??

ひっさしぶり〜!!

ないこ

ぐへっ?!

その瞬間、入ってきた知らない女の人にギュッと抱きつかれた。

俺の口から変な声が漏れる。

ないこ

く、くる、ひぃ・・・・・・

俺が女の人の肩をポンポンと叩き耳元でそういうと、あちら側も流石に不思議に思ったのかゆっくりと体が離れていく。

??

・・・・・・えっ、誰?!

それはこっちの台詞だ、と言ってしまいそうになるのをなんとか抑えて、不思議そうな顔で俺を見る女の人を見つめ返す。

少し巻き髪で焦げ茶色のセミロングぐらいの髪を揺らす、30代前半の雰囲気を纏うその女性は同じく焦げ茶色の瞳で俺をジッと見上げている。

ただただ二人の男女が困惑しながら互いを見つめる、という側から見たらだいぶ可笑しな状況の中、ずっと戻ってこない俺を不思議に思ったのかリビングの扉から兄弟たちが顔を覗かせた。

悠佑

ないこ、誰やった・・・・・・

すると__その女性の顔を見た瞬間、 みんなの顔がパァッと 花が浮かび上がって見えるほどの満面の笑みに変わる。

リビングの扉を勢いよく開けて部屋から出てきたほとけっちと初兎ちゃんは、そのスピードのまま女性にギュッと抱きつきに行った。

その後ろから少し駆け足でまろとアニキも続く。

状況について来れない俺は、女性の首元に抱きついて離れないほとけっちの言葉を聞いて、全てを理解することが出来た。

ほとけ

__おかえりなさいっ、お母さん!

「ただいま、みんな!」と笑顔で返したその女性は、ギュッとほとけっちと初兎ちゃんを抱きしめ返した。

ほとけ

なんで?なんで今日帰ってきたの?

黒木家 母

はいはい、一回落ち着いてね

リビングの机の前で初兎ちゃんとほとけっちに挟まれながら、二人の頭を撫でる女性。

興奮している二人と、珍しく落ち着かない様子のまろから、彼女が本当にこの兄弟の母であることをなんとなく感じ取ることが出来た。

ただそれでも突然の出来事に処理が追いつかない俺とりうらは、首を傾げながらも幸せそうに抱き合う兄弟たちを静かに見ていた。

アニキが女性の目の前にコトリと紅茶が入ったティーカップを置き、苦笑しながら言う。

悠佑

帰って来るなら連絡してくれれば良かったのに

黒木家 母

それじゃあ喜びも少ないでしょう?

黒木家 母

サプライズよ、サプライズ!

「大成功!」とアニキに向かってピースをした女性は、先程置かれたティーカップを持ってコクリと一口煽った。

初兎

なぁなぁお母さん、お父さんは?

黒木家 母

お父さんはまだ海外でお仕事中

黒木家 母

仕事が早めに終わった私だけが、今回日本に帰ってきたの

__そういえば年上組でショッピングモールの雑貨屋に行ったあの時、アニキが両親は普段、仕事で海外行っていると言っていた気がする。

長期休暇の時だけ帰ってくることがある、と茶碗を選びながら彼は話していた。

ほとけ

じゃあ今回はお父さん帰って来れないの?

黒木家 母

冬休みは帰ってくるわよ、夏休みは行けないかもって言ってたけど

ほとけ

そっか、残念だなぁ・・・・・・

しゅんと下を向いてしまったほとけっちの頭を、「大丈夫よ」と優しく女性が撫でる。

するとほとけっちは「えへへ」と可愛らしく笑いながら、気づけばアニキが机の上に置いていたクッキーを皿から一枚取って頬張った。

黒木家 母

そういえば・・・・・・そこの男の子二人はどちら様?

急に彼女が俺とりうらの方を指差してそう言ったもんだから、俺たちの肩がビクッと跳ねる。

俺たちの顔を見てもわからないということは、アニキたちが言葉で説明しただけなのか、そもそも両親に説明していないのか。

女性の近くで胡座をかいて座るまろが、咄嗟に助け舟を出すようにして言った。

いふ

電話で話したやん、俺たちが夏休み期間中に拾った兄弟

まろの言葉にしばらく首を傾げていた女性だったが、ふと何かを思い出したように手をポンと合わせ、大きく何回も頷いた。

黒木家 母

あぁ、あの兄弟!

黒木家 母

はじめまして、私はこの子たちの母で黒木恵理子って言います

黒木家 母

普段は海外でデザイナーの仕事をしていて、時々こうして日本に帰ってくるの

「よろしくね」と優しく微笑みかけてくれた恵理子さんと名乗った女性は、両脇に座る初兎ちゃんとほとけっちを退け、俺たちの手をギュッと握った。

突如握られたその温かい手に困惑を覚えつつ、俺とりうらは自分の名前を名乗る。

ないこ

も、桃崎ないこです、兄です

りうら

弟のりうらです・・・・・・

言葉の順序がおかしくなってしまったが、女性はうんうんと頷くと、歯を見せて太陽のように笑ってみせた。

黒木家 母

ないこくんとりうらくんね!

黒木家 母

話はいふと悠佑から聞いているわ、二人ともイケメンね!

りうら

あわわっ

先ほどの玄関での状況のように、俺たちはギュッと女性に抱きつかれる。

なかなか女性特有の柔らかい感じと香水に慣れていない俺たちは、どうすればいいのかわからずアワアワと焦る。

__この人、 まろみたいに距離感が近い!

すると俺たちの慌てた気持ちを感じ取ったのか、アニキが「はいはい、母さん一回離れて」と俺たちから女性を引き剥がした。

女性は「あら、ごめんなさい」と耳元に髪の毛をかけながら、眉を下げて言う。

黒木家 母

海外だと距離感が近いから、どうしても癖で抱きついたりしちゃうのよね

ないこ

そ、そうなんですね・・・・・・

ドキドキと跳ねる心をなんとか宥めつつそう返した俺に、女性はふふっと優しく笑うと今度は俺たちの頭をゆっくりと撫でた。

ないこ

だ、だからなんでっ?!

りうら

どういうことなの?!

驚く俺たちをあははと笑いながら、女性は大人っぽい・・・・・・いや、お母さんぽい笑顔で俺たちの瞳をとらえた。

そして耳元でそっと囁く。

黒木家 母

これからも兄弟たちをよろしくね?

ないこ

__!

女性は後ろを振り向いて兄弟たちに言う。

黒木家 母

さて、今日の夜ご飯は久しぶりにみんなの好きな、ハンバーグにしましょうか!

ほとけ

本当?アニキのハンバーグも好きなんだけど、お母さんのハンバーグもだーいすき!

黒木家 母

悠佑、材料はある?

悠佑

おん、多分冷蔵庫の中に揃ってると思うで

黒木家 母

じゃあ今日は母の味をたくさん作っちゃうわよ!

張り切って立ち上がった女性に続いて、ほとけっちが「僕も手伝う!」と立ち上がる。

いふ

あれ、お前家事出来ないんやないの?

ほとけ

あれは洗濯と掃除ができないって言っただけだから!

ほとけ

料理は入ってないの!

初兎

イムくんが手伝うなら僕も手伝う〜

悠佑

おいおい、そんなに人入ったらキッチンぎゅうぎゅうになるで?

わいわいとキッチンに移動しはじめたみんなを見て、りうらと顔を見合わせる。

りうら

・・・・・・なんかこの兄弟のお母さんって感じ、するね

りうらがぼんやりとそう呟いた。

俺も同感だと示すために、 小さく頷く。

__アニキみたいに料理上手で。

__まろのように海外で働けるほどの知識があって。

__ほとけっちや初兎ちゃんのように自由で明るい性格で。

まさにこの兄弟を合わせた人があの女性なんだなと、そう感じた。

ないこ

俺たちも歓迎してくれたしね

りうら

本当、この家族すごいよ

黒木家 母

__ちょっとほとけ!それ塩じゃなくて砂糖だから!

悠佑

どちらにせよ、そんな量入れたら一瞬で味おかしくなるで?!

ほとけ

えっ、えっ、どういうこと?

初兎

いふくん、これって真ん中凹ませればいいんよな?

いふ

そうそう、ハンバーグは真ん中だけ凹ませるんよ

まさに学校の調理実習みたいな状態で調理を始めるみんな。

そんな騒がしい家族の会話を聞きながら、俺とりうらはあははと顔を見合わせて笑う。

__いつか、みんなのお父さんにも会えるといいな。

俺は心の中でそう思ったのだった。

兄弟、拾いました

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