夜、潔の部屋。 机には黒名からの通知がきていた。
潔はスマホを握りしめる。
潔 世一
(何だよ、隣って)
そのとき、ドアがゆっくり開いた。
潔 世一
……雪宮か
雪宮 剣優
潔くん
雪宮 剣優
少しでいいから、顔見たくて
無防備に近づいてくる雪宮に、潔は立ち上がる。
潔 世一
雪宮……お前……
雪宮 剣優
ごめんね
雪宮 剣優
本当は、全部バレたくなかったんだ
……
潔 世一
まさか、お前が
雪宮の顔が近づく。 震えが止まらない。こいつが。本当に。
雪宮 剣優
君だけが欲しかったんだよ。だから全部、全部、全部壊したんだ!!!
潔は抵抗しようとするが、雪宮の指が唇に触れて塞ぐ。
雪宮の指先が潔の首筋をなぞる
雪宮 剣優
声、出さないで。
……全部ちょうだい?
……全部ちょうだい?
息が乱れる。
雪宮の唇が潔の耳元をかすめる。
雪宮 剣優
俺が守るよ、だからさ
雪宮 剣優
俺だけを見て
襲われかける、その瞬間
《着信:凛》
潔は反射的に手を伸ばし、スマホを雪宮の肩にぶつけて距離を取る。
雪宮が切ない声で笑う。
雪宮 剣優
凛くん……やっぱり最後まで君を守るんだね。
潔は息を切らしながらスマホを取る。
《……潔。聞こえるか》
潔 世一
……凛……助けて……
《助けない。お前が選べ。 逃げるか、背負うか全部お前が決めろ。》
潔の手が震える。 雪宮の視線が哀しく歪んだ。
雪宮 剣優
俺を選んでよ。
選んでくれたら、何もかも終わるから!!
選んでくれたら、何もかも終わるから!!
潔は静かに雪宮の肩を押す。
潔 世一
ごめん。俺はお前を救えない。
潔がスマホを握りしめた瞬間、別の通知。
【留守電:バカイザー】
『まだ終わってねぇぞ。 俺が全部お前の首輪だ。忘れんな、潔世一』
スマホの画面に、冴からの文字が浮かぶ。
『全部背負え。全部お前の物語だ。』
潔は荒い息のまま、部屋のドアを開ける。
夜風が入り込む。
潔 世一
(守れなかった。選べなかった。でも、逃げなかった。)
壊れかけの声で潔が笑った。
潔 世一
全部、俺のもんだろ……?
夜の街が、静かに泣くように光っていた。
𝑻𝑯𝑬 𝑬𝑵𝑫____