今日は有桜中学校の入学式
私、山下紬(やました つむぎ)は鏡の前で身だしなみを確認していた
紬
どう?制服似合ってる?
菫
よく似合ってるよ
紬
ちょっと大人になった気分!
菫
あんなに小さかった紬が中学生だもんね
なんか嬉しくなっちゃう
紬
樹
もう家出る時間じゃないの
お母さん
お母さんは後から行くからね
紬
じゃあお母さんまたあとでね!
お母さん
行ってらっしゃい
菫
たくさん友達作っておいでね!
紬
紬
中学生になった実感が湧かず 不思議な気持ちになる紬
胸を躍らせて家のドアを開けた
勢いよくドアを開けると そこには見慣れた人物がいた
楓
呆れた顔をしながらこう呟いたのは 吉原楓(よしはら かえで)
彼は私の幼なじみで家が隣同士 昔から一緒にいることが多くて 今もこうして中学校へ登校しようとしている
紬
楓
紬
楓
お前を1人にしたら何が起こるか分からないからな
紬
小学生の時から こんな風に喧嘩してばっかり
だけど朝から緊張していた心が 少し緩んだ気がする
楓
紬
紬は足早に歩いていく楓を追いかけた
揉め合いしかしないけど 楓と一緒にいるのは 何故か心地よくて嫌いじゃない紬
今日も2人はいつも通りだ
駅までの道を歩く2人
紬はいたずらな表情を浮かべて 楓に話しかけた
紬
楓
紬
ほんとに思ってる??
楓
紬
楓
俺が嘘つくと思うか?
紬
楓
いつものように会話しながら 通学路を歩いていると 紬はどこからか視線を感じた
女子生徒達
あの人めちゃくちゃかっこいい!
女子生徒達
ヒソヒソと会話する 女子生徒達の声が紬の耳に入る
楓は相変わらず人気だな〜、、
小学生の時から何かと 女子から人気だった楓
まあそれもそのはず 彼の顔は綺麗に整っており スタイルもいい 人気が出ないはずがないのだ
紬
楓
紬
そんなこと言っちゃって
楓
ほら、行くぞ
紬
楓は紬の手首を掴み 引っ張って駅へ向かう
ほんとに興味無さそう 普通なら喜ぶはずなのに、変なの
小学生の時から変わらない 相変わらずの態度に 紬は不思議に思うのだった
駅に着くと同じ制服を着た生徒が沢山居た
一緒の学校の子達だ、、 みんな1年生だよね?
わくわくした気持ちを抑えきれず つい笑みがこぼれる紬
紬
楓
紬
なんでもないけど
楓
大抵なんかあるだろ
紬
楓
紬
楓
わかったわかった
楓がこう呟いたあと 紬はまた視線を感じた
なんかめちゃくちゃ見られてない、、?
近くにいる女子生徒達が こっちを見ながら話している
女子生徒達
女子生徒達
どこにいても目立つ楓には もう慣れてしまった紬
やっぱり当の本人は全く気にしていない
紬がいつものことだ、と思っていると ある会話が耳に入った
女子生徒達
女子生徒達
あの子が彼女?
こう言われるのも何回目だろうか 楓の隣にいると 自分に対しての評価が嫌でも耳に入る
別に普通でいいもん、普通がいいし、
聞き慣れたワードに戸惑うことはもうない だけどやっぱり良い気はしない
確かに楓と一緒にいる相手には 見合わないのかもしれない
だけど楓と一緒にいる自分は なんだかんだ楽しそうで 紬自身とても好きだった
思わず顔を伏せてしまう紬 そんな時
楓
勝手に言わせとけ
楓の耳にも入っていたのだろう 紬に向かって楓は呟いた
紬
大丈夫だよ
楓
顔がしかめっ面になってるぞ
紬
楓
紬
楓には誤魔化せないね、笑
楓
誤魔化そうと思っても無駄だからな
紬
楓は私に意地悪することが多いけど 気を使ってくれることも多い
結局楓に気使ってもらってばかりだ、私
その時ちょうど電車がやってきた
紬
電車に乗りこみながら背伸びをして話す紬
楓
紬
転けると思ってるの?
楓
紬
楓
少し頬を膨らませ拗ねる紬
その姿を見るなり優しく微笑む楓
2人の中学校生活が始まろうとしていた
つづく