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曖昧独白パルラーレ

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曖昧独白パルラーレ

3 - #2 運命の出会い

♥

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2025年01月14日

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#2 運命の出会い

本を読む手を止めて、 窓の外を眺めた。

ちょうどサッカー部が 試合をしている所だった。

…知り合いでもいるの?

正面に座って雑誌を 読んでいたはずの彼の視線も

いつの間にか校庭に向いている。

いないです

でも

サッカー、見るのは好きで

ふぅん…

…あれ

そういえば、篠宮くん

サッカー部じゃなかったですか?

いいんですか、こんなところで本なんか読んでて

よく知ってるね

そうだよ、
一応在籍はしてる

今はお休み中ってところかな

“お休み中”と濁したのが 変に引っかかる。

なにか詮索されたくない事情でもあるのだろうか。

怪我、とかですか?

まあ大体そんな感じかな

そうですか…

早く治るといいですね

えー、いいの?

治っちゃったら
来れなくなるよ、ここ

山野サン、寂しくなっちゃうかもよ

そうですか

早く治るといいですね

ねえちょっと、それは
意味変わってくるよ

山野サンひどーい

僕泣いちゃうよー

面倒臭いので
無視でいいですか?

なんか僕の扱い雑じゃない?

私の聞きたいことに 関してはだんまりなのに

どうして素でこんなに 騒げるんだろう。

ところで

運命の出会いって

どういうことだと思いますか?

えー、どうだろうね

後に自分の人生を大きく変えた人と出会った日を思い出して

それを運命って呼ぶんじゃない?

なるほど…

意外にもまともな答えが 返ってきたことに驚いた。

いつも自由で適当なのに、そういうところはしっかりしている。

で、山野サンはどう思うの?

僕に意見聞く前から

もう自分の中で答えを
見つけてる顔、してたよ

や、そういうわけじゃ

ない…ですけど

…私、思うんです

愛のカタチは人それぞれだって言うけれど

人それぞれだからこそ、

ある人が、これが愛だと説いたものは

別の人から見たら愛に見えないかもしれない

そうしたら、このふたりの間には恋も愛も生まれないと思うんです

ふたりの愛や恋の定義に共通項が存在しないから

ふたりの言う“愛”は
同じものを指せない

なるほどね

普段はうるさい彼なのに 静かに耳を傾けてくれるから

だから、愛のカタチがよく似た人と出会うことを

運命って呼ぶんじゃないかって

なんだか不安になってしまう

私は思うん、ですけど…

えーと、

こういう時にこそ なにか言って欲しいものだ。

どう、思いますか?

…なんかそんな気がしてきた

ねえ、僕たち気が合うね

これって運命かな?

ああ、もう

この人は本当に、

すぐそういうことを言う。

本当に調子のいい人だ。

やっぱり黙っていて ほしいかもしれない。

ごめんなさい

恋をするなら寡黙で聡明な人と決めているので

それってつまり僕はやかましくて馬鹿な人間ってこと?

そこまでは言ってないです

それじゃ、私は帰りますね

えー、もう帰るの?

いつもはもうちょっといるのに

寄るところがあるので

じゃあ一緒に帰ろうよ

帰りませんよ

部活見学でもしてきたらどうですか?

…わかったよ

たまには顔出すかー、と面倒くさそうな顔をしている彼を横目に

片付けを済ませて、鞄を持つ。

またね、山野サン

はい、また

また、なんて あるんだろうか。

校庭へ向かう彼の背中を見送りながらふと考え込んでしまう。

そんなネガティブを断つように制服のスカートをはらってからその場を後にした。

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