主
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第71話『影の前触れ』
六月の空は、どこか切れ味を増していた。
午前の光が強くなるぶんだけ、影も濃く落ちる。
居間のテーブルに散らばるメモや付箋が、いつもより黒く縁取られて見えた。
みこと
すち
すち
声はいつもどおり賑やかだ。
すちが細かく時間を書き込み、みことが照明の順を確認する。
なつはふと眉を寄せて、細かなリボンの位置を指示したりしている。
こさめは主役なのに、ふざけて自分の席を空ける素振りを見せて笑いを取る。
けれど、らん自身だけが、額の汗をぬぐいながら内側で小さな違和感を押し込めていた。
いるま
いるま
いるまが茶の入ったマグを差し出す。
短く交わされる視線で、「無理するな」と言い合う。
らんは小さく頷いて受け取り、手の甲で唇を拭った。
いるま
らん
いるま
いるま
いるまの声はけれど柔らかく、強さを含んでいる。
らんはそれに嘘の笑みを返せず、軽く笑ってごまかした。
昼過ぎ、みことが立ち上がって歌の最終パートを通そうと言う。
みこと
らん
らん
声が混ざり合うと、らんの胸に突然、短い映像が差し込まれた。
ステージ袖、濃い赤のカーテン、こさめがらんの手をぎゅっと握って笑っている断片。
音も匂いも、生々しいが、一瞬で薄れてしまう。
らん
らんは小さく咳払いをして席を立つ。
空気を入れ替えるように廊下へ出ると、窓から差し込む光の筋が足元に落ちる。
光と光の間に、影が細く裂けるように流れていった。
いるま
いるまの声が廊下の端から届く。
心配そうに立ついるまに、らんは首を振る。
らん
らん
いるま
いるま
らん
いるまは気を付けて戻れよと短く言ってキッチンへ引き返す。
らんは背中越しにいるまの背中を見送りながら、胸の奥を小さく押し返すような感触を覚えた。
影が、まるで何かを準備しているように静かにぞわつく。
午後、窓の外に急に雲が流れ、室内の光がふと落ちる。
だれかが窓を閉め、冷気が意図せず流れ込む。
小さな不協和音が重なって、らんの手が震えを増した。
こさめ
こさめ
らん
こさめ
こさめ
こさめのからかいが混ざるが、だれも心配を隠してはいない。
らんは微笑もうとするが、胸のなかの違和感は増すばかりだ。
メロディーが耳の奥で響くたび、小さな断片が視界に紛れ込む。
夜、自室に戻ると、電気を落とした壁に影が紙のように薄く広がる。
らんはベッドに座り、手を膝に置いた。
影は言葉を持たず、ただ彼のまわりを静かに巡る。
しかしその静けさが、不穏を孕んでいる。
らん
らんは心の中でつぶやいた。
欠けたピースが、どこかで待っている感触。
手を伸ばしても、届かない。
そのもどかしさが、喉に刺さる。
深夜、らんは短い夢を見る。
舞台の袖、暗転直前。
こさめが隣で笑っていて、らんの手を引く。
夢の中でらんは確信していた――忘れていた一瞬が、もうすぐ戻ると。
第71話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡300
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コメント
3件
改めて思うけどむっちゃいい物語‼️