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女の子

ねえ、この絵本読んで! お姉ちゃん。

せりな

お姉ちゃんってウチの事か?

女の子

うん。

せりな

ここはどこだと思う? 病院の敷地内のベンチ。私は病人。

せりな

用事があるなら看護師に頼みな。

女の子

だって〜看護師さんは忙しそうだもん。お姉ちゃんはヒマでしょ?

せりな

失礼なやつ! こっちだってヒマじゃなーい!

女の子

にらんだ。こわーい。

せりな

懲りたか?

女の子

ほら、この本❤

せりな

全然懲りてないじゃん。

せりな

どれどれ

せりな

「昔々森の中のお城に一人の魔法使いのお姫様が住んでいました。お姫様はおてんばでいたずら好きで、いつも森の動物たちを魔法でびっくりさせていました。それで、お姫様は魔女っ子と呼ばれるようになりました」

せりな

「魔女っ子はいつも森の中をクルクルピョンピョン一人で跳ね回っていました」

せりな

「魔女っ子はお城に一人ぼっちで住んでいましたが、ある雪の夜のこと、お城の呼び鈴を鳴らす音が聞こえてきて…」

せりな

何この後のページ、破れてしまって無いじゃん。

女の子

そうなの。その後を知りたいのに破れてしまって無いの。

せりな

じゃ読めないね。あきらめな。

女の子

やだー! 続き読んで。お願い、お姉ちゃん。

せりな

うるっさいな。あ、お医者さんが来たからもう行くわ。小児科病棟に戻りな。

女の子

え、行っちゃうの〜?

医師

香月さん、痛みはどう?

せりな

だいぶいいです。

医師

この前話した手術の同意書の件、どうなった? 誰か家族の方に書いてもらえそう?

せりな

それは無理です。だって亡くなった母は私を一人で生んで育てたんで。それに母自身、自分は天涯孤独ってよく言ってたんです。

医師

そんな…。誰か他にいないの?いないなら、今入っている児童ホームの先生とかは?

せりな

あの児童ホームに入ってまだ一年もならないんだけど、それで良ければ頼んでみます。

せりな

でも私ももうすぐ18才になるんですよ。同意書とか私のサインだけでいいんじゃないですかね?

医師

いや、これは病院の決まりだからね。じゃホームの先生に頼んでおいて。後で回診に回るから。

女の子

もうお話終わった?

せりな

あんた、まだいたの?

女の子

絵本の続きを読んで。

せりな

しょうがねーな。

せりな

「ある雪の夜のこと、お城の呼び鈴を鳴らす音が聞こえてきて…扉を開けるとそこには、えーと女の人がいました。」

女の子

どんな人? 若い人? 女の人一人だけ?

せりな

えっと若くない人。そして、んー、その他大勢の人もいました。

女の子

女の人はどうして来たの?

せりな

「『どうして私の所に来たのですか?』と魔女っ子はききました。女の人は言いました。『姫、私はあなたの母親です。ずっと隠れて姫を見守ってました。それにここにはあなたの親戚もいるし、ずっと昔に王様の決めた婚約者の王子もいます』」

女の子

わぁ!❤それで?

せりな

女の人は言いました。『これからはみんなで暮らしましょう。そして…一緒にハイキングに行きましょう』と」

女の子

はは。ハイキングなんだね。お姉ちゃん、かわいい。

せりな

うるさい!今日はもうこれでおしまい!

その晩…

せりな

あ〜あ、同意書の事、どうしょうかな。

せりな

それにしても夕食を食べたらやる事ない。病院って暇だ〜。

せりな

もう寝ちゃおうかな。今夜は雪が降って寒いし。

せりな

わっ! 誰!? いきなり人のベッドのカーテン開けるとか…

高齢の女性

ああ、やっぱり。やっと娘に会えた。うれしいわ。部屋の前の名札にあなたの名前があったから入ってきたの。

せりな

はぁ?私は知りま…

高齢の女性

芹菜、あなたの家族もここに来ているのよ、安心して。それに婚約者の俊介さんもほら、ここに。

若い男

あ、驚かせてごめんなさい。まさか本当に芹菜さんがいるなんて…

せりな

………

高齢の女性

もっと早く来てあげられなくてごめんなさい。ねえ、一人で寂しくなかった? 辛くなかった?

せりな

…だいじょうぶ。私は他の人なら逃げ出すような時でもケラケラ笑ってられる神経の子…。

せりな

忘れたん?お母さ…ん?

高齢の女性

もう、この子ったら。こんなにか細くなっても元気な振りして。

せりな

あの…泣かないで。

看護師

あら、こんな所に。部屋に戻りましょう。

看護師

せりちゃん、びっくりさせてごめんね。

若い男

あの、突然すみませんでした。ありがとう。また改めて来ます。

せりな

わぁ、ビックリした。ボケちゃってるのかな。

せりな

あんまり本当っぽく話すから、つい母さんが形を変えてやって来たのかと錯覚してしまった。

せりな

それにしても今のってさっき適当に作ったお話の続きと何かカブってない?

せりな

婚約者?誰なんだろ? 若そうだけど、スーツなんか着て社会人かな?ちょっと優しそうな人だった。

せりな

って何バカな事考えてるんだろ?

1週間後…

せりな

あれからあのおばーさん来ないな。あの婚約者とかいうのも。手術の後、部屋を変わったから?

せりな

ウチったら何期待してるんだろ。来るわけないじゃん。勘違いなんだもん。

女の子

ねえ、お姉ちゃん、こないだの続き話して。

せりな

「母親と言っていた人は勘違いと分かり、帰って行きました。お姫様は、いや、魔女っ子はせいせいしました」

女の子

そんな続きじゃおもしろくない! ハイキングはどうなったの?

せりな

だからハイキングも中止です。

女の子

(*>_<*)ノ

せりな

もう行くよ! 手術の後がまだ痛いんだ。

それから2週間後…

看護師

あら、せりちゃん、退院おめでとう。寒いのにまたベンチ?

せりな

はい。あ、だいじょうぶです!児童ホームの先生が駐車場から車で来てる途中です。

看護師

そう。手術の後が痛い時は診療予約日の前でも来るのよ。

看護師

こんな元気な女の子ならすぐ回復するよね。

せりな

は〜い!

せりな

…って結構カラ元気なんだけどな。

若い男

こんにちは。退院おめでとう。これ、どうぞ。

せりな

かわいいキャンディのブーケ。でもあの、どうして退院って知ってたん…ですか?

若い男

僕、永野いつきって言います。この間の事謝ろうと病室に行ったら、今朝退院してここにいるって聞いたんで。

若い男

これ、本当は看護師さん用に持って来たキャンディのブーケなんだけど、急きょ持って来たんです。

せりな

使いまわしかー。

若い男

ハハ…

せりな

ごめんなさい。こんな言い方しかできないやつで。あ、この間の人は?

若い男

いいよ、タメ口で。^_^

若い男

あ、あれは僕のお祖母ちゃん。あの3日後に専門の施設のあるところに移ったんだ。

若い男

芹菜というのは20年以上前に二十歳で海の事故で亡くなったお祖母ちゃんの次女の名前てね。

若い男

だから僕にとっては母の妹で叔母さんにあたるんだ。と言っても僕が生まれる何年も前に亡くなってるから、会った事もないんだけど。

せりな

え、そんな事が…。じゃあおばあさんは20年以上ああやって?

若い男

いや。気がしっかりした人で、ちゃんと芹菜叔母さんの法事なんかもしてきたんだ。

若い男

でも何年か前認知症が始まってから、時々芹菜叔母さんが生きてるって言い出してきかなくなって。

若い男

芹菜叔母さんは自由奔放で、お祖母ちゃんは手を焼いて結構厳しく接してたみたいなんだ。その事の後悔もあるんじゃないかって母は言ってる。

せりな

それでこないだ私のいる病室の名札を見て、入って来たんだ…。

若い男

ええ。話を合わせてくれたのでビックリしたよ。

せりな

私の言葉でおばあさん、混乱したんじゃないかってずっと気になってたんだ。

せりな

私も混乱して一瞬本当な気がしてて。

若い男

ううん。あの晩、久しぶりに安心したようにぐっすり眠りについたよ。だから母もせりなさんにお礼が言いたいって。

せりな

婚約者っていうのは?

若い男

芹菜叔母さんには亡くなる時、結婚を約束した恋人がいて、それで僕をよくその人と混同するんだ。

せりな

ふーん…。そんな人がいたんだ、もう一人の私さんには。

せりな

芹菜さんのお母さん、元気だといいな。

若い男

リハビリ頑張ってる。お祖母ちゃんのいる施設はとても広くて明るくてきれいな所なんだ。

若い男

毎週日曜日に僕たち会いに行ってるんだけど、今度一緒に行かない?

せりな

いいよ。でもヘタに私行って混乱しないといいけど。

若い男

僕の友達として…じゃだめですか?

せりな

友達?え、逆に友達いいんですか?

若い男

芹菜叔母さんの事ずっと気になっていたから、何か同じ名前の人に会えてうれしい。変だけど、本当にうれしい。

若い男

そうそう、施設の中庭って広くてハイキングできる位なんだ。スニーカーで来た方がいいかも。

せりな

ハイキング!? いいなぁ。

せりな

(やっぱりあの絵本の続き、本当になったんだ)

女の子

あ、お姉ちゃんだ!退院するの?

せりな

ん。あんたも早く元気になりなよ。そしたら一緒に遊ぼ。

女の子

じゃあ、あのお話の続きは?

せりな

はいはい。

せりな

「魔女っ子は訪ねてきた人たちが勘違いしてたと分かりました。でもその夜は雪だし、外は寒いのでお城に招待しました」

せりな

待てよ。招待されたのは魔女っ子の方?

せりな

とにかくそれで何というか…仲良くやっていく事にしました」

せりな

「ハイキングにも行く事にしました」

女の子

「王子様に一目で恋に落ちました」は? ママの読む話でよく出るよ。

せりな

それ、行こ。

女の子

そして?

せりな

「そして魔女っ子のお姫様は…」

せりな

やーめた!後は自分で考えなよ。で、お姉ちゃんにもおしえてね!

せりな

どんな結末か楽しみにしてるから💞

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