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その日も、空腹に突き動かされるようにして、朔弥は上層部へと向かった。
いつものように裏通りを通り抜け、捨てられた残飯を拾い集める。
ふと、視界の端に“何か”が映った。
汚れたブランケットの下に、ぐったりと横たわる小さな影。
柊 朔弥
そこにいたのは、2歳くらいの小さな子供だった。 髪はぼさぼさで、顔色は青白く、痩せた頬が痛々しい。
柊 朔弥
柊 朔弥
救いたい
でも、自分は何も持っていない。
与えられる食べ物も
暖かい寝床もない
それでも――見捨てられなかった。
柊 朔弥
柊 朔弥
そっと人目に付きやすい所へ運ぶ
柊 朔弥
人目のつくベンチのそばまで、誰にも見つからないように、そっと。
けれど、願いは虚しく砕かれていく。
上層部の人間
上層部の人間
上層部の人間
上層部の人間
上層部の人間
ヒールの音。スマホを覗く笑い声。
ブランド品に包まれた手が、その子を避けるように持ち上げたスカートの裾。
無関心が、まるでこの街の空気のように充満していた。
柊 朔弥
少し離れた路地の影で、唇を噛んだ。
柊 朔弥
柊 朔弥
助ける手があるはずなのに。
こんなにも近くに“ぬくもり”があるはずなのに。
それでも、諦めきれなかった。
きっと誰も助けない――そう、思った
柊 朔弥
柊 朔弥
小さな身体を抱え、朔弥は下層の自分の居場所――壁の影、風が少しだけ弱い場所へ戻ってきた。
子供はまだ目を覚まさない。
朔弥は、そっと地面に子供を寝かせる。
安全かどうかも分からないけれど、 自分が汲んできた水。
汚れているかもしれない。
それでも、それしか無かった
柊 朔弥
その事実だけで、胸がじんと熱くなる。