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ある日

猫が

小さいおじさん

を捕まえてきた。

にゃぁあ!!

山城 裕太

えっ!ちょ!!

山城 裕太

何咥えてんの!!?

山城 裕太

こら!!こら!!!

山城 裕太

こら!!!離しなさい!!

俺は猫から人形のように小さなおじさんを引き剥がした

にゃぁぁぁあー!!!

山城 裕太

ったく、なんだこれ…

山城 裕太

…人形…?

山城 裕太

って…柔らかい…

田中 正男

…。

田中 正男

ぁ。ぁ…

田中 正男

やめてください…

山城 裕太

って!!!

山城 裕太

えええええええ!!!!

山城 裕太

生きてる!!?

山城 裕太

まさか!!そんな!!

俺は驚きながらもおじさんをテーブルの上に置いた。

まさかこんな小さな人間が生きて、動いて、しゃべってるなんて…

山城 裕太

あ、あの!!

山城 裕太

大丈夫ですか!?

俺は焦りながらもいかにも歳上に見えるその人に安否の確認をした。

田中 正男

ああ…すみません…

田中 正男

ほんと助かりました…。

汗だくのおじさんはポンポンと背広をはたいて直すと

行儀よく米粒くらいの名刺を取り出した。

田中 正男

あ、どうも…

田中 正男

わたくし田中正男と申します。

山城 裕太

あ、はい…。

山城 裕太

よろしくお願いします…。

俺はその当たり前のように名刺を出すおじさんの態度に唖然とした。

山城 裕太

山城 裕太

(見、見えねぇ…

身長おおよそ15㎝、灰色のスーツをダボっと着た、おおらかな雰囲気のある人だった。

田中 正男

あ、はは

田中 正男

驚きましたよね?

山城 裕太

は、はい…

田中 正男

このサイズですもんねw

山城 裕太

…。

へらへらと笑いながらしゃべる小さなおじさんは、

どこかしら優しい感じのする人だった。

田中 正男

いやぁ、驚きましたよ。

田中 正男

私ね、都内である会社の窓際係長やってたんですけどね、

田中 正男

何故か日に日に小さくなってしまったんですよ。

山城 裕太

…。

田中 正男

日に日にどんどん、どんどんと小さくなってしまい

田中 正男

最初は歳かなぁとも思ってたんですけどね

田中 正男

田中 正男

最後には誰にも気付いてもらえなくなってしまって

田中 正男

どうしようかと悩んでる時になんと猫に捕まってしまいましてw

山城 裕太

は、はぁ…

田中 正男

いやぁ、びっくりしました。

田中 正男

本当に食べられてしまうんじゃないかってw

山城 裕太

す、すみません…

田中 正男

いやいや、あなたのせいじゃないですよ。

田中 正男

ほら、猫も習性ですし。

小さなおじさんは

シャレにならない話を淡々と話していた。

田中 正男

でもよかったぁ。

田中 正男

ようやくあなたという人に気付いて貰えました。

山城 裕太

は、はぁ…

田中 正男

どんどん小さくなってってるのに何故か誰も気付かないんですよ?

田中 正男

妻に言っても空返事、娘に言っても変わらないと言われ、部下にも笑われましたw

山城 裕太

…。

田中 正男

背が半分くらいになって病院にも行きましたが、誰も、何も気付いてはくれないんですよ…。

田中 正男

まるで誰も私に興味がないように。

田中 正男

田中 正男

まぁ…

田中 正男

いつもそうなんですけどねw

田中 正男

居てもいなくても同じというか、まるで空気みたいだって…

山城 裕太

…。

おじさんは少し悲しそうな顔をして

置いてあったリモコンに腰を掛けた。

田中 正男

もう、大変でしたよw

田中 正男

赤ちゃんくらいの大きさになった時には段差も上がれないし、ドアにも手が届かない

田中 正男

さらに小さくなった時には、妻の大きなケツに踏み潰されそうになりましたよw

田中 正男

あははは…

山城 裕太

あ、ははw

わ、笑えねぇ…

田中 正男

大きな声で叫んでも、目の前で飛んで回ってみても誰も気付いて貰えませんでした…

田中 正男

踏まれそうになるし、ゴキブリに追い回されるし

田中 正男

もう、3日もロクに飯にも有り付けずですよ…。

田中 正男

田中 正男

子供の頃一度は小さくなってみたいって思ったもんですがねw

田中 正男

小さくていい事なんか一度もありませんでした…。

俺はその現実味のない話しをただただ呆然と聞く事しかできなかった。

山城 裕太

…。

田中 正男

あなたお名前は?

山城 裕太

あ、山城裕太です。

田中 正男

ああ、山城さん。

田中 正男

この度は助けて頂いたあげくこんな話に付き合ってもらってすみません。

山城 裕太

いえいえ!大変でしたし!

田中 正男

ではまた…

そう言うとおじさんはスッと立ち上がりテーブルの端の方へと歩き出した。

山城 裕太

え!

山城 裕太

いや、待ってください!

山城 裕太

あ、あの。

山城 裕太

行くところはあるんですか?

田中 正男

田中 正男

…いやぁ無いですけどねぇ

田中 正男

田中 正男

まぁ、人生生きていればどうにかなりますよ

おじさんのそのニヘラと笑う姿に俺はとことん切なさを感じた。

本当に現実にそんな事があったなら…きっと1人ではとても大変だったはず。

きっと誰にも気付かれずに孤独で大変な思いをしてきただろうに、僕に合わせて冗談のように話してくれた…

そんな強がりにも近いおじさんの前向きな生き方に何か心打たれるものがあったのだろう。

ぼくは…

山城 裕太

あの!!

山城 裕太

よかったらうちに来ませんか!!?

と、おじさんを引き止めた。

田中 正男

わぁ!広いですね!!

田中 正男

しかも二階建てじゃないですか!

山城 裕太

よろこんでいただけました?

僕は正男さんのために少し大きめのサイズのドールハウスを買った。

田中 正男

いやー。一戸建て夢だったんですよね!

田中 正男

ご飯も頂いて、こんな物まで買っていただき…ほんっとうに感謝です…!!

山城 裕太

いやいや、こうでもしなきゃ正男さんうちの猫に襲われちゃいますしw

田中 正男

それもそうですねw

ニヘッと笑う正男さんはすごく嬉しそうで

僕もなんだかよく分からないこの小さなおじさんをちょっと可愛く思った。

田中 正男

おおー!ベロアのソファにオープンキッチンまで!

山城 裕太

どれも安かったので家具一式は雰囲気だけでも揃えましたよ!

田中 正男

ほんとにありがとうございます!!

山城 裕太

それにあっちの部屋入ってみてください!

田中 正男

おおお!

山城 裕太

正男さんのサイズに合うか分かりませんが、合いそうな洋服何着か用意しました。

田中 正男

ありがとうございますー!

田中 正男

もうずっとこのスーツでしたからね、汗臭いし、汚いしで…w

山城 裕太

あ、よかったら僕洗濯しときますよ?

田中 正男

何から何まですみません…

山城 裕太

いえ、こんな小さなサイズ洗濯物のついでに入れるだけで済みますからw

山城 裕太

ご飯もすごい少量ですし、何にも負担にはなってないですよ?

田中 正男

なんとお優しい…

田中 正男

本当にありがとうございます。

田中 正男

あなたに出会えてなかったらきっと私生きていませんでしたよ…

山城 裕太

あ、はははw

山城 裕太

(やっぱりノープランだったんだな…w

山城 裕太

山城 裕太

それと正男さん!!!

田中 正男

はい!

山城 裕太

極め付けの部屋がこちら!!!

田中 正男

おおお!!

田中 正男

ベッドルーム!!

田中 正男

し、しかも…

田中 正男

田中 正男

綺麗な女性付きとは!!!!

山城 裕太

ふふふふ…

山城 裕太

この家の奥さん、リリカちゃんママ事、香山 美々子さんです!!

田中 正男

裕太さん!!

田中 正男

分かってますねぇ!!

山城 裕太

ええ、

山城 裕太

正男さん世代ならきっとリリカちゃんよりママ派かと思いまして…

田中 正男

そうですそうです!

田中 正男

大人の女の色気ですよねぇー!

田中 正男

こんな綺麗な女性と一緒に暮らせるなんて

田中 正男

小さくなってひどい事ばかりでしたがいい事もあるんですねぇw

山城 裕太

ふふふ、

山城 裕太

なんなら子供もペットも車も買ってこれますよ?

田中 正男

いやいやw

田中 正男

住まわしてもらってるんですし贅沢は言わないですよw

山城 裕太

ちなみにこの家豆電球で明かりが付くようになってるので、消したい場合は言ってくださいね?

田中 正男

はい。

田中 正男

しかしすごい最新式ですねぇ

田中 正男

まさか、水も出たり?

山城 裕太

いやいやwさすがにそこまではw

田中 正男

ですよねぇw

山城 裕太

ですからお風呂は目玉のおやじ形式になりますw

田中 正男

おおお。お茶碗風呂一回やってみたかったです。

山城 裕太

ふふふ

山城 裕太

せっかくですしお湯沸かしてきますね!

田中 正男

ありがとうございます。

まるで一緒に人形遊びをしているような感覚だった。

正男さんは何にでも感謝し、何でも聞いてくれるとても親切なおじさんで

僕と話も合い、いつしか友達のような関係になっていった。

山城 裕太

正男さんただいまー!!

田中 正男

おお、裕太くんおかえりなさい!

山城 裕太

もー正男さん聞いてくださいよぉ…

山城 裕太

まったうちの上司俺に仕事押し付けてきたんスよぉ?

田中 正男

まぁまぁ、とりあえずスーツ脱ぎましょう?

山城 裕太

いいいんです!

山城 裕太

それより正男さん!飲みましょう!!

山城 裕太

また晩酌付き合ってくださいよー!

田中 正男

あはははw

正男さんはよく晩酌に付き合ってくれた。

一緒に飲んで一緒に愚痴り

いろんな事を話した。

会社の事、恋愛の事、親の事、

正男さんの家族の事、会社の事、娘の事…

お互い抱える不平不満を僕らは笑って話、時には怒り、時には悲しんだ。

でも最後にはスッキリとし、話せてよかったと思うのだった。

山城 裕太

きっと僕なんかに興味ないですよぉ?

田中 正男

いや、加奈子ちゃんはきっと裕太さんに興味ありますよ!

ある日僕は正男さんに恋愛相談をした。

山城 裕太

だって今日だって俺の事避けてましたよ?

田中 正男

それはきっと恥ずかしがってるからです!

山城 裕太

そうですかねぇ?

田中 正男

勇気を出して食事誘ってみましょうよ!

山城 裕太

…。

山城 裕太

自信ないですぅ…

田中 正男

何言ってるんですか!

田中 正男

男は自分からアプローチしていかないと!!

田中 正男

踏み出す一歩です!

田中 正男

自分から行動しなければ何も変わっていきません!

山城 裕太

ですよねぇ!

田中 正男

裕太くん!きっと君ならできる!

山城 裕太

よし!俺やります!

山城 裕太

やってみせます!!

…つづく。

小さいおじさん(完結)

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