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白無垢が喪服。幸せの絶頂が葬式みたいな心情だったとは。 母になって狂気が増して。夫がなくなり、狂ったまま、好きな男の元へ。 浄瑠璃みたいな世界観ですね。 面白かったです。
テキストを有効に使われていて、最初から物語に引き込まれました… 狂気に溢れていて、とても面白かったです…!✨
見事に裏切られました、芽生えたのは母性じゃないんですね…… 白(結婚の書類関係でしょうか、あと後の白無垢)が愛を切り裂いて、純粋な美しい思い出としての白がどんどん黒く侵食されていくながれが素晴らしいです。
白と
黒の
薄っぺらい紙切れに
わたしの
愛する人は
閉じ込められた
貴方と
わたしは
引き裂かれた
今は亡き
夫に
見初められ
わたしと
貴方の
蜜月は
終わりを遂げた
その時…
わたしは
死んだのです
わたしの
心は…
白無垢を着るわたしに
母は言いました
「これが貴女の」
「幸せなのよ」
と
どうして
ミチ
どうして
母には…
わからないのでしょう
この日
わたしが、本当に着たかったのは…
母と同じ
喪服のように黒い
着物だという事が
貴方に恋い焦がれる
純白の想い
それは…
夫の
どぶのように濁った
どす黒い欲望に
汚され
踏みにじられ
わたしは
わたしの世界は
ミチ
色を…
失いました
愛の無い生活は
暗闇の中に居るようで
貴方との日々だけが
白いまま
少しずつ
薄れて行きました
やがて…
夫との間に
一人の子を
身ごもりました
そして
産まれたのは
男の子でした
なんと
可愛らしい
なのに…
なんと
憎らしい
ミチ
不思議でした
わたしは子が
可愛くて
可愛くて
仕方がない…
なのに
どうしても
憎らしいのです…
夫の
子が
貴方の血をひかぬ
わたしの
子が…
ある冬の日
子が
怪我をしました
雪が一面
朱に染まり…
わたしの世界に
赤が灯りました
わたしは気が狂わんばかりに泣き叫び
子を連れて病院に駆け込みました
なぜでしょう?
憎らしいはずの子が
愛しくて
愛しくて
たまらなかったのです
その日
わたしは
変わったのです
知ってしまったから
『真実』を
…うふふ
あれから数十年…
いったいどれほど
この日を
待ちわびた事でしょう
貴方に…
お会いできる
この時を
憎き夫が
この世を去り
ようやく
帰って参りました
ミチ
貴方の元へ
……
どうしました?
なにを
そんなに
脅えているのです?
タロウ
タロウ
ミチ
まあ…
お可哀想に…
貴方は
まだ
存じ上げないのですね?
ミチ
ミチ
わたしは笑顔で差し出す
ミチ
タロウ
タロウ
ミチ
まあ…
なんと
ひどいお言葉…
ミチ
ミチ
ミチ
タロウ
ミチ
タロウ
ミチ
タロウ
タロウ
ミチ
ミチ
ミチ
タロウ
真っ白な骨と
黒ずんだ血の
塊になるまで…
この子を
大切に
大切に
お守りして
連れて参りました
貴方の元へ
ミチ
ミチ
ミチ
ミチ
ミチ
白と
黒が
わたし達
親子を引き裂く
その日まで…
#TELLER文芸部
完