結木凛
歯磨きをしながら ぼんやりと自分の髪を見つめる。
胸下まで伸びた黒髪。
ショートとは程遠い 生粋のロングだ。
「やっくんはやっぱ ショートが好きなの?」
「好き〜」
結木凛
朝から思わず溜息を吐く。
長年ロングの私には、
今更ショートにまで 切る勇気はない。
切ったとしても ミディアムが限界というものだ。
妹
妹
結木凛
妹からクレームが入ったので、
さっさと口をゆすいで 洗面所を出る。
ゆらゆらと揺れる長い髪を 初めて鬱陶しく感じた。
結木凛
友達
その日の朝練。
私はレシーブ練習で 足を捻ってしまった。
友達
コーチ
座り込む私に 部員達が慌ただしく動く。
結木凛
コーチ
立ち上がろうとする私を コーチが制止する。
靴と靴下を脱ぐと 足首が少し腫れていた。
コーチ
コーチ
コーチや顧問、 部員達が何か話しているけど、
頭に入ってこなかった。
今まで部活で 怪我はしてこなかった。
合宿まで1週間と少し。
インハイ予選まで 約1ヶ月しかない。
こんな大事な時になんで…。
コーチ
友達
同じ3年の友達に 肩を貸してもらって、
何とか立ち上がる。
恋愛といい部活といい、
高校最後の1年だと言うのに 不運ばかりだ。
言葉に出来ない焦燥感に、
私は何も言うことが 出来なかった。
その後母が迎えに来てくれて、
私は早退して すぐに病院に行った。