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蝶屋敷は、夏の終わりの夕暮れに包まれていた
玄関の扉を開けると、薬の匂いと遠くから響く笑い声
芙梛は深く息を吸い込むと、何も無かったかのような顔で歩を進める
屋敷の奥、機能回復訓練の休憩中の炭治郎たちが、あちこちに絆創膏や包帯を付けてゴロゴロしていた
芙 梛
芙梛の目に映ったのは、傷だらけの炭治郎と伊之助
特に炭治郎の左肩には大きな包帯が巻かれている
芙 梛
そう尋ねると、炭治郎は笑いながら言った
竈 門
芙 梛
芙梛の表情が僅かに揺れる
だが、すぐに笑みを作った
芙 梛
言葉は優しい
けれど、その指先には僅かに力がこもっていた
芙 梛
その報告は、蓮華の中に不穏な波紋を生んだ
無惨の苛立ちが想像出来る
だからこそ、ここに戻った今が最後の平穏であるような気がした
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夕方
庭に干された洗濯物の間を歩いていた芙梛の前に、静かに現れたのは無一郎だった
時 透
時 透
芙 梛
芙 梛
明るい声
屈託の無い笑顔
けれど、無一郎は一歩も引かず、まっすぐ芙梛を見つめた
時 透
芙 梛
時 透
時 透
その言葉に、芙梛はほんの一瞬だけ動きを止めた
だが、すぐに軽く笑った
芙 梛
芙 梛
無一郎は、それ以上何も言わなかった
けれど、その瞳には確かな違和感が残っている
時 透
芙 梛
芙梛はいたずらっぽく首を傾げて、庭の花に目を向ける
芙 梛
芙 梛
時 透
芙 梛
ぽつりと呟いたその言葉は、風に乗ってすぐに流れて行った
無一郎は返事をしなかった
ただ、何処か遠くを見るように芙梛の姿を見つめていた