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目が覚めたとき、そこには音がなかった。

静かすぎる空間。

ただ、鼻をつくのはコンクリートのような湿った匂い。

頭の奥が鈍く痛む。視界はまだぼんやりしていて、自分の手足すら現実味がなかった。

多川 菜々花

…っ、ここ、どこ…?

多川菜々花は、マットレスの上で身体を起こした。

周囲を見回す。

壁は灰色、窓はない。ドアは鉄製で、内側からは開かないようだ。

スマホもカバンも、何もない。あるのは毛布と、薄暗い天井の電球だけ。

多川 菜々花

どうして…何があったの…

昨夜の記憶をたどる。

会社を出て、駅まで歩いて、途中のコンビニに寄って、傘を買って───

…そこで、ぽつりと記憶が途切れている。

ガチャリ。

鉄の音が響いた。

心臓が跳ねる。ドアの向こうから、誰かの足音。

そして、ゆっくりと回る鍵の音。

ギィィ…

ドアが開いた。

現れたのは、30歳前後の男だった。

黒いパーカーに無精髭。無表情で、無言のまま中に入ってくる。

多川 菜々花

…誰?

男は答えない。

静かで扉を閉めると、部屋の隅にある古い木製の椅子に腰を下ろした。

そして、ポケットから1冊の小さなノートを取り出す。

 ︎︎

…多川菜々花さん、ですね

低く、落ち着いた声。だが、どこか不自然な口調だった。

菜々花は思わず身体を引く。

多川 菜々花

あなた…なんで私の名前を…

 ︎︎

あなたは、僕のことを知らないかもしれません

 ︎︎

でも、僕はずっと…あなたを見てきました

ノートの1ページ目を開きながら、男は言った。

 ︎︎

菜々花さん。これはあなたと僕の、過去と未来の話です

 ︎︎

今日から、少しずつ話をします。なぜ、ここにいるのか

 ︎︎

そして、なぜあなたじゃなきゃいけなかったのか

多川 菜々花

…誘拐、なの?警察に──

 ︎︎

無駄です。ここは山奥にある廃工場の地下です

 ︎︎

携帯もGPSも使えません。外には誰もいません

 ︎︎

あなたは、今日から少しだけ、世界から消えます

その言葉に、ぞわりと背筋が凍った。

だが、男の目は──どこか、狂っていない。

冷静で、計算されていて、だが確実に「執着」を孕んでいる。

多川 菜々花

…あなたの名前は?

一拍の間のあと、男は言った。

八倉 建一

──八倉建一。あなたに、“返しにきた”んです。あの日のこと

菜々花の中に、古い記憶が一瞬だけ閃いた。

名前に、どこか覚えがある。

八倉。建一。

どこかで、聞いたことがある。ずっと前に。

八倉 建一

さあ、始めましょう。最初のページから

ノートを開いた彼の指先は、ほんの少し震えていた。

誘拐されました。

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