TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

太陽と月

一覧ページ

「太陽と月」のメインビジュアル

太陽と月

4 - 第3話 「微熱の午後」

♥

5

2025年10月20日

シェアするシェアする
報告する

翌朝。いつもより少し早く教室に入ると、窓際の席で颯人がイヤホンをして外を眺めていた。

朝の光を受けて、横顔がやけに静かに見える。

悠斗

おはよ、颯人!

元気に声をかけると、颯人はイヤホンを外し、軽くうなずいた。

颯人

おはよ

それだけの言葉なのに、なぜか心臓が跳ねた。

悠斗

(……なんか、昨日より距離近い気がする)

悠斗は自分でもよくわからない違和感を抱えたまま席に着いた。

昼休み。颯人は弁当を開きながら、ぽつりと言う。

颯人

ぽんず、昨日お前が帰ったあと、玄関の方じっと見てた

悠斗

えっ、まじで? かわいすぎる! もう、今日も行くしかないじゃん

颯人

……ほんとに来る気か

悠斗

もちろん

笑う悠斗の顔を見て、颯人は少し目を伏せた。

颯人

(また来てほしいなんて、思ってる自分が面倒だ)

心の中でそう呟きながら、弁当の箸を止めた。

放課後の校舎は、部活の声と夕風の音が混じっていた。颯人は靴箱の前で紐を結びながら、窓の外の空をちらりと見上げる。

雲の端が金色に染まり始めている。

悠斗

颯人ー!

廊下の奥から、いつもの声。 悠斗が手を振りながら駆けてきた。

悠斗

今日もぽんちゃん、会いたがってると思うんだよね

颯人

……犬の口がきけるのか?

悠斗

心で分かる!

にかっと笑う悠斗に、颯人は小さくため息をついた。

颯人

……はいはい、分かったよ

悠斗

やった! じゃあ決定〜!

ふたり並んで校門を出る。 空は茜から群青に変わる途中。 通学路を歩くと、悠斗がポケットからチョコを取り出して、颯人に差し出した。

悠斗

食う?

颯人

……甘いの苦手

悠斗

知ってる。でも食べるまで渡す

悠斗がふざけて、チョコを颯人の口元へ持っていく。颯人はわずかに眉を動かして、それでも口を開けた。

悠斗

……どう?

颯人

……普通

悠斗

それ褒めてる?

颯人

お前が選んだなら、悪くない

悠斗が少し黙る。その返しが思っていたより柔らかくて、胸の奥がじんわりした。

玄関を開けると、すぐにぽんずの鳴き声が響く。

悠斗

ただいま、ぽんちゃん!

悠斗がしゃがみ込み、抱き上げると、ぽんずが嬉しそうに尻尾を振った。

颯人

……ほんと、お前のほうが家族みたいだな

悠斗

え? 俺、もうぽんちゃんの兄貴ポジだし

悠斗が笑うと、颯人も口の端をわずかに上げる。しばらくして、三人(?)でソファに座る。ぽんずが悠斗の膝の上に落ち着いて、穏やかな沈黙が降りた。

テレビの音が遠くで流れ、夕陽がカーテンの隙間から差し込んでいる。

悠斗

……颯人ってさ、静かだけど優しいよな

颯人

そうか?

悠斗

うん。ぽんちゃんも安心してる。俺も

颯人

……犬と同じ扱いか

悠斗

だって似てるもん

悠斗が笑いながらぽんずの頭を撫でる。

悠斗

どっちも言葉少ないけど、気持ち伝わってくる感じ

その言葉に、颯人は目を伏せた。 心の奥に小さな熱が灯る。 悠斗の声は軽いのに、不思議とまっすぐ響いてくる。

颯人

……悠斗

悠斗

ん?

颯人

……いや、なんでもない

ぽんずがくしゃみをして、空気がふわりと和らぐ。

夜、玄関先。

悠斗

また明日も会おうな

颯人

……毎日会ってるだろ

悠斗

それでも言いたくなるんだって

そう言って笑う悠斗の瞳が、街灯の光で少し揺れた。颯人は返事をせず、ただ「またな」と小さく呟いた。

残された静けさの中で、ぽんずが玄関を見つめる。その横顔は、飼い主より先に、颯人の変化を感じ取っているようだった。

この作品はいかがでしたか?

5

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚