ひまり
少年!
ひまり
目を開けなさい!
少年
……え
少年
あ、ひ、ひまりさん?
ひまり
どうしたの、こんなところで
少年
…あ、いえ
少年
大丈夫です…
ひまり
大丈夫じゃないよ
ひまり
どうしたの?傷だらけだし
ひまり
なんかあったの?
少年
……
ひまり
とりあえずうち入りなよ
少年
…すみません
少年
ありがとうございます
少年
…あの
ひまり
ん?
少年
ひまりさんのお母さんとお父さんは?
ひまり
あー
ひまり
うちは両親が共働きで
ひまり
昼間は基本、家に私1人なの
ひまり
そんなことより、その怪我はどうしたの?
少年
あ、あの
少年
お姉ちゃんに殴られちゃって
少年
家から追い出されて
少年
たぶん、その後少し気を失ってたんです
ひまり
またお姉ちゃん?
ひまり
なんか、ひどくない?
少年
いいんです
少年
もう、慣れてるから
ひまり
いや、慣れてるのといいのとは違うでしょ
ひまり
さすがにそれは警察に通報したほうがいいと思う
ひまり
私が通報しようか?
少年
い、いえ、いいです
少年
しないでください
ひまり
分かった
ひまり
お母さんは?
少年
今、どっかにでかけてて
少年
たぶん、夜まで帰ってこないと思います
ひまり
そっか…
ひまり
じゃあその怪我どうにかしようか
ひまり
簡単にでよければ
少年
そんな…
少年
申し訳ないです
ひまり
いいのいいの
ひまり
包帯巻くぐらいしかできないけど
少年
…充分です
少年
お願いします
ひまり
はいよ
私は救急箱を持ってきて少年の腕をとった。
少年の傷の具合を見ていて私は驚いた。
殴られてできたあざの他に
明らかに切り傷らしい傷が混ざっていたのだ。
ひまり
…これさ、殴られた怪我じゃないよね
少年
え?
ひまり
包丁とかカッターで、刺されたりしなかった?
少年
…あ、はい
少年
お姉ちゃんの友達に…
ひまり
友達にやられたの?
少年
いつもやられるんです
ひまり
うわーひどい
ひまり
類は友を呼ぶっていうのはこのことだね
ひまり
これ、相当痛くない?
少年
はい
少年
でも今は、もうそんなでもないです
ひまり
血出たでしょ
少年
すごく出ました
私は痛々しい怪我に面食らいながら
なんとか見える全部の傷に包帯を巻き終わった。
ひまり
これでよし、と
少年
本当にありがとうございます
少年
少しましになった気がします
ひまり
よかったよかった
ひまり
包帯、上着で隠しときなよ
少年
はい
少年
じゃあ僕、もう戻ります
ひまり
いいよいいよ
ひまり
せめてお友達が帰るまでここで休んでなよ
少年
…いいんですか?
ひまり
いいよそのぐらい
少年
…ありがとうございます
少年
なんだかお世話になってばっかりで
少年
申し訳ないです
ひまり
いいって!
しばらくすると、私の家の呼び鈴がなった。
ひまり
あれ、誰だろう
少年
もしかしたら
少年
お姉ちゃんが迎えに来たのかも
ひまり
あーそっか
ひまり
じゃあ私出てみるね
少年
はい
私がドアを開くと、
そこには────
夏海
すみませーん
夏海
うちの弟がそちらに……
夏海
って、大前さん?!
ひまり
え……
ひまり
(嘘…)
ひまり
(まさかもしかして)
ひまり
(夏海が、この少年のお姉ちゃんなの?)