かれこれ12年目のクリスマスだ
一昨年親が亡くなってから 「サンタさん」の裏事情を 知ってしまった私
だから去年は、 手紙を書いたって意味がないだろうと イヴの恒例イベントには 何も目を向けていなかった
だけど
お母さんとお父さんのいない 日々は寂しい
毎日、遺骨におはようと言って ひとりでおばあちゃん家に行って 夜になったら家に帰って寝る
寂しくて、惨めで、仕方がない
私
私
サンタさんなんていないのは分かってる
だけど
少しだけでも希望が欲しかった
私
私は勉強机に座ると
紙とペンで、メッセージを書いた
「家族が欲しい」と
私
私
私
おばあちゃんの家に行っていたのは 昔からそうだ
お母さんもお父さんもテレワーク
だから不登校の私は邪魔だろうと思って いつもおばあちゃんの家に行ってた
お母さんとお父さんに、 優しいねって言われたかったからなだけ だけど
ここから先は現代的になるのかな
流行りの病気、 世界中で大量の死者が 現れたあの病気
お父さんもお母さんも、 それに感染していたみたい
それに重症で
私はおばあちゃんの家ばかりに 行っていたから 感染していなかったみたいだけど
今思えば感染していて欲しかったな って思うの
私
そうそう 私はサンタさんに牛乳をあげる 事にしたんだ
何も減らないのは分かってるけど 折角手紙を書いたのなら イベントは楽しんでおきたい
私はテーブルにある財布を 片手に、家を出た
私
お母さんとお父さんが サンタさんだと知ったのは 2人の遺物を整理してる時
タンスの奥に、 昔私がかいたサンタさんへの手紙が 入っていたんだ
知った時は少し絶望した
だってもう プレゼントは来ないと知ったから
私
ホットミルクを作ろうと思う
私はミルクを温めている電子レンジが 鳴るのを今に待っている
3分間
カップラーメンしか温めた事がないから ミルクの時間とか全然分からないけど
ぴーぴー!
私
私は電子レンジの音に気づいて キッチンへ向かう
電子レンジの蓋を開いて、 ミルクの入ったコップを 手にかけようとする
私
思わず声に出した
熱すぎるんだ 3分はあまりにも温めすぎたようだ
私
でもいいよね
どうせ明日飲めばいいんだ その時には冷めてるから
そんな事を考えながら 布団をリビングに敷いた
灯りを消すと 私は布団に潜り込む
私
そしてお母さんとお父さんの遺骨に そう呟いて
目を閉じる
私
私
私
私
眠れない
気になって眠れない
布団のすぐ近くに置いた 手紙と焦げたホットミルク
誰も見ないし飲まないのも分かってる
でも
少し期待してしまう、 またプレゼントが欲しいって
私
私
朝
やっぱり来なかった
手紙も寝る前から位置は変わってない
私
サンタは親
夢なんて無いんだ
そうだよ、 こんなイベントに参加した自分が悪い
私
欲張りにサンタさんは来ない
だってもう
私
私
私はお父さんとお母さんの遺骨を 手に抱えた
そして頬を濡らす
私
でも一つ不思議なことがあった
焦げたホットミルクが
減っていたんだ