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【読切】飲みかけのミルク

♥

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2022年12月23日

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かれこれ12年目のクリスマスだ

一昨年親が亡くなってから 「サンタさん」の裏事情を 知ってしまった私

だから去年は、 手紙を書いたって意味がないだろうと イヴの恒例イベントには 何も目を向けていなかった

だけど

お母さんとお父さんのいない 日々は寂しい

毎日、遺骨におはようと言って ひとりでおばあちゃん家に行って 夜になったら家に帰って寝る

寂しくて、惨めで、仕方がない

……今日はクリスマスイヴ

手紙、書こうかな

サンタさんなんていないのは分かってる

だけど

少しだけでも希望が欲しかった

……っと

私は勉強机に座ると

紙とペンで、メッセージを書いた

「家族が欲しい」と

(勿論、今の家族、)

(返して欲しいって意味だよ)

……(1人は怖いの)

おばあちゃんの家に行っていたのは 昔からそうだ

お母さんもお父さんもテレワーク

だから不登校の私は邪魔だろうと思って いつもおばあちゃんの家に行ってた

お母さんとお父さんに、 優しいねって言われたかったからなだけ だけど

ここから先は現代的になるのかな

流行りの病気、 世界中で大量の死者が 現れたあの病気

お父さんもお母さんも、 それに感染していたみたい

それに重症で

私はおばあちゃんの家ばかりに 行っていたから 感染していなかったみたいだけど

今思えば感染していて欲しかったな って思うの

あ、……牛乳、買ってこないと

そうそう 私はサンタさんに牛乳をあげる 事にしたんだ

何も減らないのは分かってるけど 折角手紙を書いたのなら イベントは楽しんでおきたい

私はテーブルにある財布を 片手に、家を出た

……お母さん、お父さん、行ってきます

お母さんとお父さんが サンタさんだと知ったのは 2人の遺物を整理してる時

タンスの奥に、 昔私がかいたサンタさんへの手紙が 入っていたんだ

知った時は少し絶望した

だってもう プレゼントは来ないと知ったから

……あった、牛乳

ホットミルクを作ろうと思う

私はミルクを温めている電子レンジが 鳴るのを今に待っている

3分間

カップラーメンしか温めた事がないから ミルクの時間とか全然分からないけど

ぴーぴー!

あっ

私は電子レンジの音に気づいて キッチンへ向かう

電子レンジの蓋を開いて、 ミルクの入ったコップを 手にかけようとする

…あっ、、つ!?

思わず声に出した

熱すぎるんだ 3分はあまりにも温めすぎたようだ

はぁ…、焦げちゃってるよ

でもいいよね

どうせ明日飲めばいいんだ その時には冷めてるから

そんな事を考えながら 布団をリビングに敷いた

灯りを消すと 私は布団に潜り込む

…おやすみ

そしてお母さんとお父さんの遺骨に そう呟いて

目を閉じる

……

……

……

……

眠れない

気になって眠れない

布団のすぐ近くに置いた 手紙と焦げたホットミルク

誰も見ないし飲まないのも分かってる

でも

少し期待してしまう、 またプレゼントが欲しいって

……お願い、来て、

サンタさん、

やっぱり来なかった

手紙も寝る前から位置は変わってない

…やっぱり、そうだよね

サンタは親

夢なんて無いんだ

そうだよ、 こんなイベントに参加した自分が悪い

……(私が、悪いんだ)

欲張りにサンタさんは来ない

だってもう

私が欲しいものは……

目の前にあるから…っ

私はお父さんとお母さんの遺骨を 手に抱えた

そして頬を濡らす

……?

でも一つ不思議なことがあった

焦げたホットミルクが

減っていたんだ

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