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#ファンタジー
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私の昔の将来の夢は“男の子”になることだった。
思春期になる頃にはとっくに男女の友情など成立しないことを自覚していて、初恋の男の子とずっと一緒にいるために男の子になりたかった。
以前、何かの記事で“人は子供の頃に手に入れられなかった物に執着する”と読んだ事がある。 つまり、今私が執着している物というのは“初恋の相手”とでも言うのだろうか。
無論、そんな話など有りはしないと思いたいが。
今年25歳になる私はようやくちゃんとした会社に就職する事が決まり、今日が4年間働いていた居酒屋のバイトの最後の出勤だった。
元々料理の専門学校を通っていた私にとってここのバイトは学ぶ事も多く、少し寂しい気持ちもあった。 しかし、下心丸出しのお客さんの相手をしなくてよくなった事に関しては胸を撫で下ろすことができたかもしれない。
今日ですら最後の出勤というだけで数個の花束が入った紙袋を3つも抱えて帰らなきゃいけない状況だったのだから。
本日、夜の11時
歩道橋の上のど真ん中で花束の入ったデカい紙袋3袋を足元に置いて、暇を潰しているように見える派手な女性は間違いなく私の姿である。
矢崎柚子
矢崎柚子
お酒を飲んでしまったことよりも私がさっきから凄く気になるのがバイトあがりからずっと私の後ろをコッソリつけてきてるお店の常連さんがいることであった。
矢崎柚子
矢崎柚子
矢崎柚子
通りすがりの男性
通りすがりの男性
矢崎柚子
矢崎柚子
矢崎柚子
矢崎柚子
矢崎柚子
通りすがりの男性
矢崎柚子
目の前にいるこの男はさっき私が居酒屋でバイトしてたときに花束を渡して来たスーツの男性と一緒に飲みに来ていた男性の1人だった。なんでそんな事覚えているかっていうと実は地元の同級生に似ているから印象的だった。
通りすがりの男性
通りすがりの男性
通りすがりの男性
矢崎柚子
矢崎柚子
まわりくどく質問するのが苦手な私はストレートに聞いてみた。
通りすがりの男性
通りすがりの男性
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
私の事だと知るとあからさまに冷たい視線を送ってきやがったこの失礼な男は、やはり小・中学校が一緒だった地元の同級生であった。 名前だけは一丁前にかっこ良さげな“遠山 泉(とおやま いずみ)”と読むらしいので覚えておいてほしい。
矢崎柚子
矢崎柚子
さすが私は犬猿の仲だろうと大人な対応ができる偉い女性だ。
遠山泉
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
この久しぶりに遭遇した同級生を“コイツ”と呼ぶには社会人としてどうかとは思うが、私に対するあからさまな態度もどうかと思うため、現時点にて昔と同様に“コイツ”と呼ばせていただく事にする。
私の知る限りだと元々コイツは口数が多い方ではなかったが、さすがに自分からボール(会話)を投げておいてこっちにボールを投げてもらおうとするのは違うと思う。
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
彼は私のツッコミに緊張が解けたからなのか、先ほどの腕を組みながら俯いていた無惨な姿から分かりやすいように表情が緩んでいた。
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
彼は私の派手なメイクと派手な髪色をまじまじと見つめた後、何か言いたげな顔で鼻で笑うという失礼な行為に至る。
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
まだAIの方が会話の広がり方が多彩である。 恐らくコイツは頭と顔と身長が高いことと運動神経が良いだけで会話しなくても周りに重宝されてきた人種なので会話の難易度が高いのだ。
遠山泉
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
本当は誰かに付けられてますって言いたい所だったが、じゃあそれを言われた相手はどうしろと?っていう話だった。
ポタッ… ポタッ…
矢崎柚子
遠山泉
雲行きの怪しさに気づいた時すでに遅し。日中の晴れ間からは予想も出来ないほど夜はゲリラ豪雨という天気の移り変わりに私までメンヘラ化しそうなほどに変化が著しかった。
ザ――――――ッ!💥⛈️
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
遠山は持っていたビジネス鞄の中から折りたたみ傘を取り出すと自分の頭上にだけ差した。つまり、傘の持っていない私が今できることは早急に帰ることのみである。
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
私たちは急足で別々の方向へ足を運び出した。
矢崎柚子
こんな時に3つほどの重たい紙袋を抱え、こんな時に白いTシャツを着て、こんな時に誰かに付けられている私は“早急に帰る”という選択肢が、この3つの問題を同時に解決する唯一の方法だと一目散に歩道橋の階段を下りていた。だから、私にはこの後この階段から転げ落ちるなんて予想だにしなかったのだ。
グキッ💥🦵
矢崎柚子
矢崎柚子
ダダダッ❗️👤💨
待っていましたと言わんばかりのヒーロー並みのスピード🚀で駆けつけてくれた何者かの気配を、私は苦手な人の前のみ出る蕁麻疹のおかげで察知する事ができた。
常連のオジサン
目の前に立っていたのは、ずっと私の後を付けてきていたバイト先のお店の常連さんだった。
矢崎柚子
矢崎柚子
常連のオジサン
常連のオジサン
矢崎柚子
常連のオジサン
常連の男は私が落とした紙袋を広い上げると自分の差していた傘を私の頭上へ向けてきた。しかし、私は“気づいている”。これは優しさという名の戦略であると。
常連のオジサン
矢崎柚子
矢崎柚子
常連のオジサン
私はこの男に自分の住所を教えたことなど一度もないのでこの発言はどこから聞き入れたのか…完全にホラーである。
矢崎柚子
すると男は私の半身をまじまじと見つめると、気のせいだと思いたいが少し興奮しているように見えた。早くこの場を離れた方がいいと私の蕁麻疹が言っている。
常連のオジサン
矢崎柚子
当然の如く、一度でも隙など見せたら断りにくくなりそうな予感がする。 私は足の痛さなど臆することなく自力で立ち上がる覚悟を決めた。
矢崎柚子
矢崎柚子
常連のオジサン
常連のオジサン
矢崎柚子
この男のどんな言葉も都合よく捉えるポジティブさだけは見習いたいと、逃げ場とやり場のない私は笑って誤魔化すしかなかった。
ザーーーーーッ‼️💥⛈️
最悪な事に勢いが増した雨はさらに状況を悪くさせた。
常連のオジサン
誰のせいで早く帰れないのか、私よりも一回りも人生経験豊富そうなこの男に誰か説明してあげてくれと切実に願いながら、私はとにかく断り続けて向こうから諦めてくれる事を待つしか打開策を見つけられずにいた。
矢崎柚子
常連のオジサン
矢崎柚子
ザーーーーーッ🌧️
矢崎柚子
気のせいかもしれないが、雨の音に混じって何となく頭上から“大丈夫か?”という声が聞こえたため、振り返ってみるとその感はどうやら当たっていたらしい。
遠山泉
私の階段上にまさか遠山がいるなんて予想もしておらず、私は少し彼を二度見した。
遠山泉
遠山泉
ハッキリ言って今笑う場面など何処にもないのだが、何故か口角が上に曲がっているのはきっと彼の前世が悪魔か何かだったからに違いない。
矢崎柚子
前世が天使に生まれたこの私でも今にも怒り狂いそうな状況の中で、その原因の一つとなる隣の男はあたかも“親切な通りすがりのオジサン”のような立ち振る舞いで遠山へ律儀に状況説明をしてくれていた。本当にカオスである。
常連のオジサン
常連のオジサン
矢崎柚子
通りすがりの男性
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
遠山という男は確実に分かって言っている。“助けてもらう”他、私に選択肢などない事を。
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
常連のオジサン
常連のオジサン
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
常連のオジサン
遠山泉
常連のオジサン
常連のオジサン
常連のオジサン
矢崎柚子
常連の男性は私の彼氏(仮)が現れた途端、諦めた様子でその場からいなくなった。そして、私はようやく胸を撫で下ろした。
遠山泉
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
矢崎柚子
遠山泉
遠山泉
矢崎柚子
私は一瞬自分の耳を疑った。 昔の記憶だと遠山は自分から人と関わりにいくようなタイプじゃなかったからだ。
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
矢崎柚子
遠山泉
図々しくも、どこまで男前を見せてくれるか試したくなって花束を全て持たせようと思ったところ、それはさすがに恥ずかしいとキッパリと断られた。 てか、誰がゴリラやねん
遠山泉
矢崎柚子
人助けなんて柄じゃないとは思うのだが、もし私が“ただの他人”であったとしたら彼は本当に助けに来てくれたのだろうか。
雨の中の帰り道、1本の傘を半分ずつ入るために体を寄せてくれた事、結局重い紙袋も全部持ってくれた事、私が女でなければ遠山はすぐに家に帰れた事が結果として起こってしまい、もうこの時点で私は女である事を盾にして“フェアな関係”を保てていない。
多分こんな事、この世の終わりでもこない限り絶対に口に出す事はないが、私がこの男ともう少し一緒にいたいと思ってしまうのはきっと彼が自分の初恋の相手だったからだということを自覚するまでもないだろう。