~はじめに~ 更新が遅れてしまい申し訳ありません。 また、最後にお知らせがあります。
「現代版走れメロス」なんて物語があれば たぶん主演のオファーは俺に来る。
___俺は太陽が猛威を奮う時間帯の街中を走っていた。
「走れメロス」と違う所は俺が結婚式ではなく部活に参加していたところだ。
澪さんが暴君に人質にとられてる所は間違ってない。 ___俺は走っていた。
___事の発端は数日前。
「特別講習」を終えた俺は、部活で忙しいからと なんとなく逃げていた期末テスト対策に挑んだ。
特にホームセンターじゃないイオンの勉強は頭から湯気を出す勢いで頑張った。 その甲斐あってか理科のテストは79点だった。
俺の中では充分高得点だったのと、「その日」は貴重な部活休みだったので下校中柚月にそれを報告した__
____のを先輩に目撃された。労いの「ね」の字も無く先輩は話があるからと駅前のコーヒー店に俺と柚月を連れ込んだ。 (柚月は同じテストで98点取ったけど褒めてくれた)
先輩の奢りと言うので遠慮なく一番高いやつを注文して 先輩の話を聞いて曰く__
今度の休みに駅前の広場でテニスの交流イベントがある。 現役を退いてからテニススクールを運営している先輩の父親が主催しているらしく
先輩はそのイベントに俺を誘って来いと言われたらしい。(凄い嫌そうな顔で)
俺も同じような顔をしながらその申し出を断った。夏の大会が近い為その日は普通に部活がある。
すると先輩はあっさり引き下がり__柚月に話を振った。やたら爽やかな顔で
「前塾で会った大学生くらいの女の人と___関西弁の女の人も誘っていいよ」 「なんか孝太は部活で来れないらしいし」
「当日は俺も参加するからテニス未経験でも大丈夫。俺が(強調)教えてあげるから」 「なんか孝太は部活で来れないらしいし」
「やっぱり行きます」 「部活は午前中だけなので急げば1時には着きます」 「先輩だけだと何するか分からないので俺も行きます」
____そんな感じで澪さんは暴君に人質に取られ、俺はメロスの如く走り宣言通り1時に広場に着いた。
山崎 孝太
相原 澪
溝口 圭佑
俺は木陰に移動して息を整えながら皆の様子を順番に眺めた。
先輩が「特別講習」の時とは全っっっっ然違う易しい球を打ち、運営が貸してくれた服に身を包んだ3人が順番に打ち返すスタイルだ。
柚月と彼女さんは木陰にいる俺にも届くような心地良い音を立ててボールを返した。
溝口 圭佑
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
___「特別講習」の時とは全っっっっ然違う平和な空間だった。 先輩が易しーーーーーい球を打つ。
相原 澪
澪さんは ……………盛大に空振った。
相原 澪
相原 澪
今度は空振らずに ぱこんと音を立ててボールがネットを越えた。澪さんが小さくガッツポーズする。
山川 のぞみ
山川 のぞみ
相原 澪
山崎 孝太
俺は頭を抱えた。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
山崎 孝太
そのイベントは二部構成で午後からは「交流戦」が始まることになっている。
名前の通りダブルスで試合をするのだが、未経験者と経験者でブロックが分かれる為 誰でも楽しめる。(一試合5分)
「経験者コースに俺と孝太が出ることになった。なんか昨日の夜親父が申請してた」
___と、昼食の時さらりと先輩がそう言ったのでもちろん俺は不満を口にした。パワハラされる未来しか見えない。
山崎 孝太
溝口 圭佑
先輩と俺の間に火花が散った____が、その火花はすぐに立ち消えることになる。
相原 澪
・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・
山崎 孝太
山崎 孝太
溝口 圭佑
全国大会4連覇の先輩がコートに立った瞬間予想通りギャラリーはざわついた。ムカつくけど先輩はテニスの世界では有名人だ。
「おい、あの人溝口圭佑じゃ…」 「マジ?全国4連覇の人じゃん」 「溝口圭佑のプレー生で見れるの?俺らめっちゃ運良くね?」
「隣にいる人は誰?」 「さぁ……全国では見たことないけど」 「溝口圭佑の手下じゃね?」 「手下だ」
溝口 圭佑
………後で靴紐くらいは引っ張ってやることにした。
先輩は2回くらいしかボールに触っていないと言うのに、交流戦一回戦が終わると たちまちギャラリーに取り囲まれていた。
先輩はいつもの仮の姿で対応していた。 俺はさっさと応援してくれた澪さんたちの元に向かう。
「手下だ」「引き立て役だ」と言い交わすギャラリーと違って澪さんたちは俺にも労いの言葉をかけてくれた。
二回戦までまだ少し時間があるのでどうしようかと思っていると
山川 のぞみ
一気に言い募ると彼女さんは柚月の手を引いて去って行った。柚月も「良かったね」と言いながら手を振って彼女さんについて行く。
俺は服装と前髪を直しながら急に活発化した心臓を宥めようと試みた。
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
俺と澪さんは会場の端に移動した。 ___微妙に気まずいのは、澪さんと会うのはテストが明けて今日が初めてなことといつもと服装の系統が違うからだ。
会場はフェンスで仕切られていた。フェンスでも壁打ちは出来る。
壁打ちはボールの軌道が予測しやすい。 澪さんもここでは空振りせずにフェンスにボールをぶつけていた。
相原 澪
……先輩も下の名前で呼んでるんだ…と一瞬思ったけど顔にも声にも出さないでおく。
山崎 孝太
山崎 孝太
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
なんか澪さんの様子がおかしいなぁと思っていた俺は、ここで初めて澪さんの手首を掴んでいることに気づいた。
もう片方の手を見ると、なんともう片方の手も澪さんの手首を掴んでいる。
__教えるのに夢中になっていた俺はいつの間にか澪さんの背後に回り両手首を掴んで あれやこれやと指示を出していた__
__と理解すると全身から汗が噴きたので慌てて離れた。
山崎 孝太
相原 澪
お互い顔を赤くして次の言葉を探していると ものっすごい冷ややかな声が降ってきた。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
二回戦の出番待ちをしている最中、先輩は冷たい視線を俺に突き立てていた。
対して俺はさっきからずっと体が熱い。
俺と先輩との間に著しい温度差が生じている中 試合を観戦していると__ 無遠慮な大声が鼓膜を叩いた。
見れば髪も服も派手な大学生くらいの集団が大声で騒いでいた。
そもそもこれは交流イベントなんだから、不満があるならそれなりのレベルの大会に出ればいい話だ。 芝生に堂々と吸殻を捨てる人が参加出来る大会を俺は知らないけど。
一気に熱が冷めていくのを感じた。周りの人も眉をひそめているが大学生は構わず騒ぎ続ける。
この会場にもしかしたら澪さん以外の関西弁の人がいるのかもしれないけど __俺は大学生の方に向かって足を踏み出した。
2、3歩歩いた所で先輩に手を掴まれた。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
先輩は俺の手を放すと未だ騒いでる大学生を一瞥した。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩の言う通り 大学生はモラルは無いくせにテクニックはあった。
長身を活かしたプレーで決勝まで(騒ぎながら)駒を進めていた。
本当は今すぐ物申してやりたいけど決勝まで我慢する。 先輩に「決勝まで体力残しとけよ」と呆れられたけど
俺のチームも決勝まで上がることが出来た。
__もともと注目されている先輩とお騒がせな大学生が決勝に残ったことで会場は盛り上がっていた。 澪さんたちも最前列で声援を送ってくれた。
先輩が後衛に立った瞬間、会場内のざわめきが また1オクターブ高くなった。
大学生がニヤニヤ笑いながら俺を見下ろした。 試合開始のホイッスルが鳴った__
__と同時に視界の端を何かが高速で横切った。 一拍遅れてそれがテニスボールだと理解する。
ボールは大学生側のコートで1度跳ねると誰のラケットに触れること無くラインを超えた。 大学生の顔がひきつった。
高速サーブであっという間にポイントを取った先輩は、爽やかな仮の姿で肩をすくめた。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
ギャラリーが感嘆の息を漏らした。 俺はため息を吐いた。
……実力の十分の一も出してないくせに。
騒がなくなった大学生はどうしたかと言うと 集中的に俺にボールを打って来た。
球は速くて重いけど___先輩ほどじゃない、気がする。 何よりあの人は侮辱した。
俺は全力で打ち返していった。 ギャラリーの俺を見る目も多少変わったようだ。
「あいつ ただの引き立て役じゃなかったのか」「意外と上手いかも」「あの手下強いな」 …手下は変わらないのか
__取り損ねた球は後ろの先輩が拾ってくれた。ついでに「これぐらい取れよノロマ」と小声で励ましてくれた。
俺のチームが1点リードしたまま、試合時間は残り30秒を切った。
大学生は充血した目で俺を睨むと、高くボールを放った。 ボールが描く軌道を予測し俺は走った__
__その時、大学生の口角がつり上がった。 後ろで先輩の声がした。
溝口 圭佑
回転のかかったボールが
俺の顔面めがけて跳ね上がった。
相原 澪
山崎 孝太
___会場に設けられている救護テントで、俺は口元に絆創膏を貼った顔を下に向けた。
___間一髪でボールとの正面衝突は回避したものの完全には避けきれず、ボールは口元を掠めた。
ヤスリで擦られたような痛みが弾けたし口の中で血の味が広がったけど、棄権はしたくなかった。
__結局1点をリードしたまま逃げ切り勝利で試合の幕は閉じた。 試合終了のホイッスルが鳴ったと同時に澪さんに腕を掴まれてテントまで連行された。
澪さんは係の人に断って救急箱を貰うとガーゼに消毒液を染み込ませた。
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
澪さんは絆創膏を貼ると腕を組んだ。
相原 澪
山崎 孝太
澪さんは腕をほどくと小さく息を吐いた。
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
___さらに頭を下げながら、もう1つ言わないといけないことがあることに気づいた。
山崎 孝太
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
澪さんは今度は肩で息を吐くと 顔をほころばせた。
相原 澪
山川 のぞみ
山川 のぞみ
溝口 圭佑
山川 のぞみ
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
会場では 主催者である圭佑の父親の挨拶が終わったところだ。
湧き上がった拍手は 圭佑の次の言葉をかき消した。
溝口 圭佑
お知らせ・お詫び
今回もかなり長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございます。 今回は大事なお知らせがあります。ムードぶち壊しにしてしまい申し訳ありません。
次回から第3章「夏休み」編が始まり 7月4日に更新する予定でしたが
7月、作者はかなり忙しくなることが予想されまして、 TELLERを書く時間を確保することが難しく、 大変心苦しいのですが、
7月は更新をストップさせて頂きます。
第3章は8月頃に始めさせて頂きます。 この連載を楽しみにして頂いてる方々には、私事で1ヶ月も足止めさせてしまうことになり、本当に申し訳無く思っております。
サムネデザインが思いつかず開き直った↓
読んでくださりありがとうございました!そしてごめんなさい! 非リア弟
コメント
8件
えっ...もう、ラブラブシーン見られて最高です... 怪我した孝太君見て真っ先に助けに行くってことは先輩のことは眼中に無いってことじゃないですか!?(素直な先輩もちょっと可愛かったことは黙っておきます)次の更新も待ってます✨8月楽しみにしてます✨2章お疲れ様でした!
好きです え、めっちゃ好きです 大学生集団やっつけたところが特にスカッとしました! 怪我しても棄権しようとしない孝太くんに感動です…! お幸せに!!!
本っっっっ当にごめんなさい。申し訳ないです。土下座。 8月は毎週更新にします! 非リアは嫌いになっても柚月君たちは嫌いにならないで欲しいです😳。 本当にごめんなさい。読んでくださりありがとうございました❗ 8月は毎週更新にします!土下座。