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耳かき

第9話 - 草むらの中

156

2022年05月13日

#ホラー

#短編集

テラーノベル

昌弘

皆で集まって何してんの？

ゆい

怖い話してんのー

昌弘

怖い話？

みき

昌弘たちはなんかある？

弘樹

怖い話ぃー？

弘樹

そんなのねーよ

昌弘

いやいや、あるって！

昌弘

ほら、あの女に追いかけられたやつ！

弘樹

ああ、あれな！

サトル

え、それって……

昌弘

そうそう、あの時のやつ！

みき

なにそれ、ちょーこわそう

みき

話して話して！

昌弘

あれは俺たちが小学生のとき……

学校

先生

今日の連絡は……そうそう

先生

××町の河川付近はまだ道が整備されていなくて危ないです

先生

通らないようにしてくださいね

先生

それでは皆さん、気を付けて帰ってくださいね

先生

日直、挨拶

一同

さよーなら！

サトル

えっ、二人ともあの道通って帰ってんの？

サトル

やばくね？

サトル

例の女、いるんだよな

昌弘

へーきだよ

弘樹

そうそう、あんな女怖くないって

サトル

でもあの女、子供にしか見えないらしいじゃん

弘樹

そんなん偶然だよ

弘樹

居る時間が合わないだけだって

サトル

そうかもしれないけど、先生もあの道は通っちゃだめだって……

昌弘

大丈夫だって

昌弘

みんな怖がりだなぁ

弘樹

やばっ、ゲームする時間無くなる！

弘樹

マサヒロ！帰るぞ！

昌弘

おう！

帰り道

弘樹

いえーい、ひのきの棒ゲット！

昌弘

ずりー！俺も欲しい！

弘樹

やだよ、自分で見つけろって！

昌弘

ちぇっ……！

昌弘

この道こんなに面白いのになんでなくしちゃうんだろうなぁ

弘樹

草とか木が多すぎて見晴らしが悪いからだって

弘樹

危ないし

弘樹

悪い奴がいてもわかんないからって、父ちゃんが言ってた

昌弘

悪い奴って？

昌弘

この辺りにそんなのいなくないか？

弘樹

えー、じゃあ幽霊とか？

昌弘

幽霊って……

昌弘

弘樹もあいつが幽霊だと思ってんの？

弘樹

まさか

弘樹

だってあいつ、みんなに見えてるじゃん

弘樹

幽霊なわけないよ

昌弘

だよなぁ

弘樹

皆があいつを幽霊だっていうのは

弘樹

あいつがいつもあそこにいるからだろ

弘樹

毎日毎日なにしてんのかな

昌弘

負け組ってやつじゃない？

昌弘

ニートで、仕事なくて暇なんだよ

弘樹

うわぁ、可哀想！

弘樹

おっ、もう少しでニートのところだ

昌弘

……いたいた

弘樹

なんであんな草むらにいるんだろうな

昌弘

すげー宝でも隠してあったりして

弘樹

宝かぁ

昌弘

どうする？

昌弘

近づいて見てみるか？

弘樹

そうだな

弘樹

少しくらいならきっとばれないし……

ガサッ

黒い服の女

……

昌弘

うわっ、目が合った！

弘樹

逃げろー！

黒い服の女

……

翌日

昌弘

昨日はやばかったな

弘樹

なー

サトル

昨日？なにかあったの？

昌弘

あいつに睨まれたんだよ

サトル

えっ

弘樹

びびるなよ、サトル

弘樹

へーきだって！

昌弘

そうそう

昌弘

あいつあの場所から動かなかったから

サトル

今日は二人とも別の道から帰った方がいいんじゃない？

弘樹

大丈夫だって！

サトル

でも、追いかけられでもしたら……

昌弘

そしたら逃げるし！

弘樹

そーそー

弘樹

じゃーな、二人とも！

サトル

大丈夫かな……

帰り道

弘樹

サトルすげービビってたな

昌弘

男なのにあんなにびびって、なっさけねぇの！

弘樹

まぁ、あの女ちょーきもいからな

昌弘

あははっ！そーだな

昌弘

お、見ろよ、弘樹！

昌弘

でっけぇ石ころある！

弘樹

ほんとだ！

昌弘

今日はこれでサッカーしながら帰ろうぜ！

弘樹

あっ、ずりぃ！

昌弘

とれるもんならとってみろよ！

コン！コン！コン！

弘樹

よっしゃ、とった！

昌弘

まだまだ、スライディーング！

弘樹

うわ、ばかっ！

昌弘

やべっ！

黒い服の女

……

弘樹

どうすんだよ、あっち飛んで行っちまった

昌弘

だ、大丈夫だろ

昌弘

あの女にはぶつかってないし……

黒い服の女

……さない

弘樹

え？

黒い服の女

許さない……！

昌弘

おい、あいつこっち来るぞ！

弘樹

逃げろ！

弘樹

ばか、そっちじゃない！

昌弘

え、でも！家は……！

弘樹

学校！

昌弘

あ、そっか！

黒い服の女

許さない……

黒い服の女

許さない……

黒い服の女

許さない……

ゆい

うわ、やば！

ゆい

それで？そのあとはどうなったの？

弘樹

なんも？

昌弘

学校に逃げ込んでおしまい

昌弘

担任があとで見に行ったんだけど誰もいなかったらしいし

昌弘

次の日からその女も消えた

みき

えー、じゃあほんとうに幽霊だったんじゃん？

弘樹

まさか、んなわけねぇだろ

ゆい

じゃあなんで追いかけてきたわけ？

ゆい

理由がないじゃん

弘樹

やべーやつなんてそんなもんじゃん

サトル

……

みき

サトルどった？

みき

なんか顔色悪くない？

弘樹

ビビったんだろ？

弘樹

おまえ昔から怖がりだったもんなぁ

昌弘

そーそー

昌弘

おまえ俺たちとは絶対一緒に帰らなかったし

ゆい

やーめーなーよー

ゆい

きもいババアいる場所なんてみんな近寄りたくないって！

ゆい

ねぇ！

サトル

あ、ああ

サトル

そうだな……

ゆい

サトル、大丈夫？

ゆい

このまえ怖い話してからなんか変じゃない？

サトル

……二人が今日話してた場所なんだけど、今はもうないんだ

ゆい

うん

ゆい

もう整備されてるんでしょ？

サトル

そう

サトル

その整備なんだけど、実は俺の父さんがやったんだよね

ゆい

え？そうなの？

サトル

俺の父さん建設の監督やってるんだ

サトル

だから当時は色んな話が入ってきた

サトル

二人の言ってた女も有名でさ

サトル

子供が見たって話はするんだけど

サトル

大人は全然見かけない

サトル

だから、そういうものなんじゃないかって

サトル

本格的に整備を始める前に、霊媒師を呼んだ方がいいんじゃないか

サトル

そんなとき、二人が追いかけられたって話が入ってきた

サトル

子供を追いかけるなんて不審者のやることだからさ、当然警察も呼ばれて

サトル

父さんたちと、警察、一緒に現場を見て回ったらしいんだ

サトル

そうして、見つけた

ゆい

……何を？

サトル

白骨化した、女の頭蓋骨

ゆい

えっ！

ゆい

やだ、本当に？

サトル

ゆいを脅かしても意味ないだろ

ゆい

それ、二人は……

サトル

知らないよ

サトル

女が幽霊だったのか、それとも死体を隠していたのかはわからない

サトル

だけど俺は、二人の近くに黒い服の女がいるたびに、恐ろしくなる

サトル

あの女がまだ二人を探しているんじゃないかって、そんな気がして……

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