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黙って笑って抱き寄せて

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黙って笑って抱き寄せて

2 - 愛染を断ち切れない

♥

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2020年03月05日

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慎一郎

こずえ!

絞り出すような情けない声が自分の口から出た

これから俺は、遅すぎた初恋に終止符を打つ

ヘタレチキンこと神崎慎一郎は

浜本こずえに告白をするのだ

こずえ

なにか御用ですか先輩?

目の前でアルカイックスマイルを浮かべる 浜本こずえという少女は俺の一つ年下の幼馴染である

 才色兼備、文武両道、ついでに見目秀麗と謳われる彼女は  プライベートではかなりの毒舌を発揮する

それら含めて浜本こずえに己は運悪くも恋をしてしまったのだ

自分で言うのはあれだが、本当に哀れな男だと思う

顔面と肩書だけで人を好きになれるほど自分は ロマンチストではないはずなので

きっと彼女のしたたかな性格にも 俺は惚れ込んでしまっている

慎一郎

こずえ

こずえ

聞こえてますよ

こずえ

御用件はなんですか?

自分は放課後残って教室を掃除する 優等生の鑑といえる彼女に歩み寄りそっと囁いた

慎一郎

『好きだ』

俺の突然の告白にこずえの口元に浮かんでいた笑みが消え 教室が静寂で包まれた

俺は教室を立ち去ろうと踵を返す

こずえ

どういう意味ですか?

こずえが俺の腕を掴み、ぐっと後ろに引いた

突然のことに対応できずよろめいた俺の体を 抱きしめるように、こずえが支えている

こずえ

先輩、私は嘘告白とか嫌いなんです

慎一郎

嘘じゃねーよ

俺は大きく身を捩り、こずえの腕を振払おうとした

こずえ

嘘じゃないなら、このまま言い逃げして、
明日からどの面下げて私と話すつもりです?

慎一郎

.............

ぐぅの音も出なかった

こずえ

今日の先輩あんまり面白くないですよ

こずえ

ネット上ではやたら饒舌なのに
三次元ではコミュ障なオタクみたいです

慎一郎

俺は結構コミュ力ないからな

慎一郎

人と面と向かって話すのは正直に言うと好きじゃない

こずえ

そんな先輩が告白なんて試みたくらいだから
なにか理由がるんでしょう?

こずえ

教えて下さいよ

慎一郎

はぁぁ〜

慎一郎

なんでこんな奴に.....

こんなにも心をかき乱されるんだろう

こずえ

あ、やっぱり嘘なんじゃないですか

こずえ

本当は好きじゃないんですね?

慎一郎

好きだよ

慎一郎

愛してるじゃ足りないくらいだ

慎一郎

ただなんでお前だったのかなって

こずえ

恋愛は燃え上がりやすく冷めやすいものです

こずえ

よくあることですよ

慎一郎

じゃぁこれは勘違いなのか?

こずえ

友情と恋愛の履き違えは若人には多いです

こずえ

たとえば私のどこが好きですか?

こずえ

何故好きになったんですか?

慎一郎

わかんねぇ

慎一郎

ずっと前から好きだったような

慎一郎

結構最近好きになったような

慎一郎

けど周りからの評価を気にしながら頑張ってる姿は
恋愛観抜きにして昔から好きだった

こずえ

歯切れ悪い回答ですね

こずえ

先輩は本当に私とお付き合いしたいと考えているんですか?

慎一郎

あんまり考えてない

慎一郎

たぶん付き合ったとしても
今と関係性はそんなに変わんないだろうし

慎一郎

ただ妹にいつまでもウジウジ初恋引きずってる男は
見苦しいって言われて

こずえ

告白の理由が妹に叱られたからって

こずえ

この告白には、青春の爽やかさとか甘酸っぱさが詰まった
ドラマがあるのだとばっかり......

慎一郎

お前リアリスト自称してる割に結構ロマンチストだよな

こずえ

現実の苦しさや非情さを知っているからこその
夢に逃げたいこの気持ちが先輩には理解できないと仰るんですね

慎一郎

話がどんどん逸れて行ってるぞ

こずえ

先輩の告白動機があやふやだからです

こずえ

そんなんじゃ何処の面接でも落とされますよ

慎一郎

告白と面接を同列に語って良いものか...

こずえ

で、先輩は私にどうしてほしいんですか?

慎一郎

え〜

慎一郎

もう告白できたからそれなりに満足なんだが

こずえ

このヘタレ豚野郎!!

慎一郎

急にどうした!?

こずえ

こちとら、私の方をチラチラ見ながらなにか思い悩むような素振りを見せる先輩が一体どの様な素敵な告白をしてくれるのか

こずえ

想像しながら掃除をしていたというのに

こずえ

さんざん焦らして好きだけ伝えて退散しようとするって
どういう了見ですか!?

慎一郎

じゃあお前は俺のこと好きなのかよ!?

こずえ

いや嫌いではないですが微妙ですね

こずえ

魅力薄いですよ

慎一郎

えぇ〜

こずえ

うちの兄は先輩のこと結構気に入ってるみたいでしたが

慎一郎

え、そうなの?

こずえ

頭蓋骨の形が好みだとかなんとか

慎一郎

やっぱり浜本一家は掴みどころがないわ

慎一郎

つまり俺は失恋したってことでいいんだよな?

こずえ

いえ、お付き合いしていただけるなら嬉しいんですが

慎一郎

え、微妙じゃなかったの?

こずえ

嫌いではないと言いました

こずえ

恋愛ではないにしろ先輩をからかうのは中々楽しいです

慎一郎

なんか嫌な理由だな

こずえ

これからはデートと称して先輩のおごりで飯を食えますしね

慎一郎

悪意しかないだろ

こずえ

嬉しくないんですか?

慎一郎

嬉しいよ

慎一郎

とっても

こずえ

どこまでも単純ですね

こずえ

結構好きですよそういうところも

慎一郎

そういうこと言うなよ

慎一郎

親友だろ?

こずえ

これからは恋人ですので

こずえ

毒舌もパワーアップです

こずえ

嬉しいですよね?

慎一郎

あんまり喜べない

こずえ

ではもう帰りましょうか慎さん

慎一郎

慎さんってw

こずえ

嫌ですか?

慎一郎

いや、そっちの方恋人っぽくて(≧∇≦)b

しかしながらこんな茶番劇を経たところで 曖昧な二人の関係は変わろうはずもなく

相変わらず鋭い言葉の刃に自尊心を傷つけられながら 俺達は帰路につくのであった

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